「一冊の本」
私の名前は文月刹那。東京に住む普通の女子高校生だ。
学力も容姿も悪くはない。多少周りから天然と言われるだけだ。
「おーい、刹那ー」
すぐそばで元気な声がしてドキッとする
「えっ?何?鏡助」
鏡助は私の彼氏でもあり幼馴染でもある。ずっと一緒に仲良く友達でいるんだと思っていた。なのに約三年前突然告白された。私は鏡助の事は好きだし一番の理解者だと思ったので、付き合うことにした。だがいくら告白の経緯を聞いても鏡助は口を割ってくれなかった。
まあ、そんなことは今となってはもうどうでもよくなっていた。理由はどうであれ私は鏡助のことが好きなのだから!
「なに?じゃないだろ。明日の三年目の記念日どこ行くか相談してたっていうのに。刹那がぼーっとしてたんだろ?!」
そうだ、明日のデートにどこに行くか相談していて私がぼーっとしてしまったのか。とても申し訳なくなってしまう。
「鏡助ごめん」
鏡助はいつもの事だからいいよ、といった雰囲気で私を見た
「ところで、あんたはどこに行きたいの」
その言葉に私はひっかかった。
「鏡助、また私の事 あんた って言った~。」
そうなのだ、鏡助は三年前の付き合った日からときどき私の事を あんた と呼ぶときがある。鏡助とは幼馴染だから名前で呼び合うのは当たり前だった。だからこそひっかかるのだ。私が注意するたびに悲しそうにするのも私が心配する理由には十分だった。
「鏡助どうしたの?」
そういうとかならず話を流される。いつもの事なので別にそこまで問いただすつもりはない。そして今日はお互い家に帰った。
私は家に帰っても鏡助のあの悲しそうな顔が頭から離れなかった。私は悩みごとがあると家の隅にある蔵に閉じこもって考える。そこまで裕福でもない家だがなぜか立派な蔵があるのだ。蔵の電気をつけて戸棚に背中をつけてうずくまった。すると背中で戸棚を押してしまったのだろうか、頭の上に何かが落ちてきた。
「っつ!!!!!」
声にならないほどの痛みが頭にはしった。落ちてきた物を手に取り見てみると、金属の缶箱で中には1冊の本が入っていた。それはとても分厚く国語辞典のようで、古びていた。本のタイトルは「愛の形」
本はほとんど読まない私でしたが、この本だけは私が読まないといけないという衝動にかられページをめくった。
作者 泉 鏡花・泉 すず
これを見た瞬間私は驚き、目を離せなかった。文学が好きな私にとって泉 鏡花は神様のような存在だからである。泉 鏡花の小説に「愛の形」などはなかったはずだ。幻想文学でロマン主義な彼なら書きそうだが、そんなタイトルの泉 鏡花の作品は現代では残っていない。私が考えたのはこれは世に出ていない泉 鏡花の作品である、ということだ。しかし次の行を読んでそんな希望は打ち砕かれた。
1939年
隅にそう書かれていたのだ。おかしい。泉 鏡花は1873年に生まれ1939年に死没と歴史上には記されている。そこで私はひらめいた!
これは泉 鏡花が書いたのではなく妻であった泉 すずが書いたのだ。
そうすればつじつまが合う。これには日本史ではまだ分っていない泉 鏡花という人物が記されているのだと確信した。そう考えるといてもたってもいられなくなり
ページをめくった。
この小説は泉 鏡花と泉 すずの愛の形を私自身の想像70%と歴史に記されている実話30%で書いています。なので私がつくりあげた泉 鏡花・泉 すずですので歴史にそってはあまり書いてないのでご了承ください。