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だ……出し入れ可能なんですね。素敵です。

蛇がとある雑誌について語っていますが、それについて不快を持たれる方がいるかもしれません。注意です。

「ねぇ蛇さん、今読んでいる雑誌なんてやつですかね?」

「む、これか。ちゃ〇だ」


 家のドアを開けたら異世界で、白い蛇の客人(?)となった。そんなふざけた事が私の身に降りかかってきたのは昨日の事だ。

 ドアを開けたら部屋に戻れるなんて甘い考えを持っていたのだが、それが間違いだと気づいたのも昨日。ドアを開け直してそこに普通にいた蛇に掴みかかって、風呂とベットを返すよう要求したのも昨日。

 そして湖の真ん中に私の部屋がまるごと出現したのも昨日だった。


「ち〇おは良いぞ。展開がわかりやすいからな。必ずと言っていい程『はっぴーえんど』だ」

「全国の純粋な少女たちに今すぐ謝れ」


 失礼極まりない事を言っているが、彼は熱心な〇ゃおの愛読者の一人なのだ。近年は雑誌の方を買わずに、お気に入りの漫画の単行本を買う読者が増えているようだが、蛇は数少ない雑誌派らしい。


「我は謝らなくてはいけない事はなにも言っておらぬぞ。むしろ褒めておるではないか」


 褒めているのだろうか、それで。私は何も突っ込まずに蛇の体をぺたぺた触った。手に吸い付くようなもち肌で気持ちがいい。羨ましいぜこのやろー。私なんか日頃の不摂生のせいで、うるおいが何処かに行ってしまったよ。ニキビも増殖しているし。もし蛇が人間だったらニキビなんかとは無縁なんだろうな。そう思いながら私はため息をついた。


「展開がわかりやすいなんて悪口言っているもんですよ。ていうかなんで展開わかるなら読み続けているんですか」


 私がそう尋ねると蛇は少し考える様にしてから口を開いた。


「読者が期待している通りに進むのだ。必ずヒロインは片思いであった男と結ばれる。それでよいではないか」

「……そうですか」


 その割にはページをめくる度に「はっ!」とか、「何故!?」とか小声で言っているのは気のせいだろうか。



「そういえば蛇さん、どうやってページ捲っているんですか。うっかりスルーしてましたけど」


 いちいち反応しているから進むページは遅めなのだが、さっきから何枚も捲っている。手もないのにどうやっているのだろうか。頭ではないだろうし。舌を使うにしても紙は濡れるし大変だろう。

 私が疑問を口にすると、蛇はち〇おから目を離して当たり前のように言った。


「無論、手を使っている」


 蛇はにょきにょきと二本の手を出して見せた。胴体から突然出現したそれに、私は自分の顔が引きつるのを感じた。


「だ……出し入れ可能なんですね。素敵です」


 大人顔負けのお世辞を口にした私は、逃げるようにして引っ越ししてきた自分のベットに潜った。


「す、素敵だと。我がっ」


 そう言って蛇もベットに頭を突っ込んできたのだが、思いっきり足蹴りしてやった。


「痛い。地味に痛いであるぞ」


 そう言って蛇はベットの下に寝そべった。私は蛇がいるのと逆の方に寝返りを打つ。



……蹴る前に触れた蛇の顔がいつもよりほんのり温かかったのは気のせいだ。うん、気のせい。

とある漫画雑誌に対する偏見などはございません。私自身、小学生の頃は特にお世話になっていました。今回の話で不快に持たれた方、申し訳ございませんでした。

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