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エナジードリンクは甘い。

お久しぶりです。暗くなりそうな気持ちを抑えて、進んでいきます!コメディーなのを忘れそうです……タグ色々付け加えようか迷い中。

 どうやらバイトくんが参っているらしい。

 店長から連絡が来て、私達はコンビニへと赴くことになった。なんとなくこうなることは予想がついていたけどね。一か月もっただけでも素晴らしいと思うよ。佐藤くんよく耐えた。

 ちなみに佐藤くんをあっちの世界から呼び寄せた本人は「そんな奴いたっけ?」とポテチをぼりぼり食べながら首を傾げていた。あんたが呼んだんでしょーが。異世界とは伝えてはいないものの慣れない環境で苦労しているであろう佐藤くんの代わりに、私は蛇の脇腹ををグーパンしておいた。


「ぷろれすごっこか?其方がそのつもりなら我も手加減はせぬぞ」


 ぐぅっ、と身を捩らせたがぴんぴんしている蛇を見てため息が出る。彼に人の心を判らせるのは無理なのかもしれない。このままじゃ一人ぼっちのままだ。私がここに来るまでと同じように。

 とりあえず蛇の柔らかい頬をひねった。みょーん。


「いひゃい、いひゃいそ!わへにそんなほとほふるほのはそなたふらい……」 

「何言ってるかわかりませんよ」


 思わずフフッと笑ってしまった。ちょっと怒ってたのになぁ。


「もう。自分以外の人のこともちゃんと考えてくださいよ。貴方に関わりがある人でしょう?少しは責任ってものを持ってください。そんな自分勝手なことをしていたら人が離れていきますよ」


 蛇の柔らかい頬から手を放すと、蛇は失礼なっと言って踏ん反り返った。


「我には其方がいるではないか」


 だから他はどうでもいい。その言葉の甘さに酔いしれる。

 貴方には私だけ。それが甘美に私の心に響いた。


「そうですねえ。私は蛇さんの傍にいますよ」


 だから蛇さんも私から離れていかないでくださいね。どんなことがあっても。

 蛇は私の言葉に目を丸くしたが、クツクツと音を立てて笑った。


「あぁ。永久に」


 もう他の人なんてどうでもいいの。蛇の楽しそうな顔を見て、そう思った。そう思ってしまったのだ。



 コンビニに入るとレジに立っていた佐藤くんがこっちに勢いよく飛び出してきた。


「オーナー!どういうことですか!」

「やあ佐藤くん。元気だった?」


 刺激にならないようになるべく普通に振舞ったのがいけなかったらしい。佐藤くんは私を掴んでブンブン揺さぶった。


「元気だったじゃないですよ!どう考えても頭おかしくなってるじゃないですか!」


 頭おかしくなっているって、本人が自覚しちゃってるんだ。佐藤くんは一つ吐き出したらもう止まらなくなった。


「まずここに来る客がおかしすぎるんです。サラリーマンとか学生が全く来ないのはまだいいです。つっこみません。いやここの近所に駅あるじゃんとか言いませんよ。これ考え出したら震えが止まらなくなるんで。ですが日本人の平均より随分と彫りの深い顔立ちの人しか来ないってどういうことでしょうか。俺の地元はほぼ日本人しかいない町だったんですけど。いやこれもいいです。きっと小さな町でも国際交流に力を入れ始めたに違いありません。そういうことにしておいてます」


 語尾にびっくりマークしかつけれない病から回復したと思ったら、今度は早口でブツブツと話し始めた。必死に理由こじつけて自分に言い聞かせてるけど、それ全部めちゃくちゃだから。あと全然息継ぎとかしてないよ。大丈夫かなぁ。


「だけど……だけど俺にはわかりません。なんで懐中電灯が二列分並んでいるんでしょう。それ目的で買いに来るお客さんがいるって何なんでしょう。普通懐中電灯の売り切れなんて、停電の時に数少ないストックがなくなる以外にありませんよね?ここに来たらやっぱり懐中電灯は買わないとね!なんてきゃっきゃ言いながら買うものじゃないでしょう!」

「備えあれば憂いなしってやつじゃないかなぁ」


 うわぁ、それ絶対店長が仕入れた奴だよ。懐中電灯が名物化してるって、本当に異世界マジックだわぁ(二回目)。


「あとお客さんたち結構爆買いしていくからレジ待ちの列ができるし。レジ待ちでスーパー並みに待たせる所ここ以外ないと思うんですが。そんなに物珍しい商品ないと思うんですが」

「あー、あれだよ。アイドルのコンサート終わりのコンビニって超混むらしいよ」


 これ事実。私の友達ペットボトルのお茶欲しくてすっごい並んだって言っていたし。叫びすぎて喉が枯れるんだって。


「あとお金は日本円で出されたことない」

「あーあれね。私も最初びっくりした。ユーロみたいなあれでしょ?」

「いえ、物々交換です」


 店長がまとめたという物々交換リストが出された。三百九十八円のお弁当と小麦一キロが等価らしい。よくわからないけれど。


「お客さんにバーコード読み取る機械について詳しく聞かれた」

「どこにでもいるのだよ。なぜ空は青いのかと聞いてくる人」

「入ってくるチャイム音を襲撃の音と間違えて連射し始めた奴がいた」

「そういう時はカラーボール。通報って習ったよね」

「次の新商品、おでん」

「服と一緒。一周回って流行りになる」


 佐藤くんは突然黙った。私もそろそろ疲れてきたので同じようにして彼の様子を窺う。まだ言い足りなさそうだが少しは落ち着いたらしい。とりあえずよかった。

 随分としゃべっていたから喉も乾いたろう。たまたまレジ付近にあったエナジードリンクを佐藤くんに差し出した。飲めよ。勿論お金はちゃんとレジスターに入れておくのを忘れない。


「……ありがとうございます」


 何とも微妙な顔をしながら佐藤くんは缶を受け取ると、ぐいっとそれを飲んだ。

 渡したのは私だけどさ、疲れている人間にエナジードリンクを渡すって鬼畜だよね。もっと働けって暗に言ってる感じが溜まらない。ぞくぞくしちゃう。

 それにしても中々濃い一か月を過ごしていたんだなぁ。私はこっちに慣れるまで蛇としか会わなかったし、至って普通の生活を送ってきたから彼の苦悩は少ししかわかってあげられない。私って恵まれていたんだとしみじみと思ってしまった。蛇に振り回されていただけ。超イージーモード。


「俺、もう辞めます」

「ふぇ!?」


 一人考えに耽っていた私は思わず奇妙な声を出してしまった。辞めるの!?辞めちゃうの!?内心焦った私を見て佐藤くんはクスリと笑った。


「……って言ったらオーナー困るでしょ」

「困りますね。超困ります」


 うんうんと頷く。佐藤くん、君が必要なんだ!その気持ちを顔(ただし偏差値低め)に込める。


「だからもう少し頑張ってみます。……愚痴聞いてくれてありがとうございました」

「うん。困ったことがあったらまた相談してよ。店長よりは頼りになると思うしさ」

「はい、よろしくお願いします。ご馳走様でした」


 佐藤くんは残りのエナジードリンクを一気飲みすると、レジの台に置いた。そしてポケットの中をゴソゴソしたと思ったらスマホを取り出した。


「……」


 目が合ってしまい、彼は爽やかな笑顔でほほ笑んだ。


「オーナー、連絡先教えてください」

「勤務時間とプライベートを混合しないでください」


 いい笑顔したって駄目です。とか言ってかっこつけたかったけど、久しぶりの新鮮な高校生男子にクラクラしてしまって行動に移せなかったのは仕方ないと思う。キャラブレ過ぎですよ、佐藤くん。




……勿論交換交いましたよ。ええ。

お読みいただきありがとうございます!

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