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セイクリッド・アークス  作者: そらり@月宮悠人
Prologue
7/30

ちょっとした取引

「なんだ……?」


 アリエスの振り下ろした剣は、少女の喉元でピタリと止まった。アリエスが芸術的な寸止めをしたのではない。()()()()()のだ。


――どうしたんだ? 腕が動かない。


 まるで、肩から先が空間に固定されているかのように、微動だにしない。


――どういうことだ?


 魔導屋は不思議そうにアリエスの腕を見ている。グランはなにがあったのか分からない様子でこちらを見ている。そして――。


――こいつが?


 コウコウセイとかいう少年が、少女に向かって必死に手を伸ばしている。


 我々の姿が見えることがすでに異質だが、しかしだからといってこんな能力(チカラ)があるのか? どう見ても巻き込まれただけの一般人に?

 だがそれ以外、この状況を説明できるに足る要因がない。まさか、この少年は()()に関係しているのか?

 こうして思案したところで結果は出ない。ならば……。


「少年、安心しろ。女を切り捨てるつもりはない」


 アリエスは、出来るだけ少年に顔を近付ける。


「ちょっとした取引をしようじゃないか」


 少年は、アリエスの意図を汲み取れずにいるようで、次の言葉を待った。


「この女を助ける代わり、私に協力して欲しい。もちろんタダとは言わん。望みをいくつか叶えてやろう。おそらく、()()世界では不可能なことも、我々には可能だ」


 少年の目が、少女とアリエスを交互に見る。

 分かりやすいな、この坊やは。


「さあ、どうする? 条件を飲むのなら、この娘の安全は保証しよう」


 逡巡した結果、少年から力が抜ける。同時に、アリエスの腕も自由になった。


「おっと」


 いきなり戻った勢いで、少女を傷つけるところ、危なく刃を戻す。


「魔導屋、一緒に来てもらおうか」

「ヒッヒ、なんだか面白そうですねぇ、商売になるならいいですよ。ヒッヒ」

「商談成立だな。グラン!」


 後ろに控える大男を呼ぶ。


「こいつを運べ」


 アリエスはグランに少年を渡した。


「こんな奴、なにに使おうってんだ」

「そう言うな、思わぬ掘り出し物かも知れんぞ?」


 アリエスは少女を担ぎ上げる。改めて身体を見るが、致命傷は負っていないようだ。


「ふむ、運が良かったな。いや、()()()()か」


 アリエスとグラン、魔導屋はその場を後にした。


   *   *   *


――遠く離れたビルに、その人影はあった。


「対象は移動。はい、気づかれていません。……了解、引き続き監視します」


 誰かに報告をすると、その人影は空に溶けるように姿を消した。

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