闇商
青い光はバチバチと音を立て、俺のすぐ横を掠めてなにかに直撃した。
「何者だ」
女は、威圧するように何者かに問う。
どうやら、俺に向かって撃ったわけじゃないらしい。
直撃した青い光を受け止めたのは、背の低い老人のような人物だった。目の前に三角形の白いガラスのようなものが回転しながら浮かんでいる。
「ヒッヒ、おっかねぇなぁ。ええ? こんな弱者にいきなり電撃とはよ? ヒッヒ」
甲高い声だが、男のようだ。ボロボロのローブに身を包み、登山でもするのかと思うほどのリュックを背負っている。
「お前、魔導屋か? グランの電撃を防ぐとはな。闇商の魔導具か」
女は少し警戒を解く。
「ケッ、手加減したんだ、ありがたく思え!」
後ろにいる青い電撃を放った男はグランというらしい。短い髪に稲妻の剃り込みを入れている。周りはみんな敵だと言わんばかりの目つきと屈強な体格は、いかにも軍人や用心棒を彷彿とさせる。
どうやら、電撃を防がれたのが気に入らないらしい。
「闇商。いい響きですねぇ~、ヒッヒ。どうです? 今なら安くしときますよぉ? ヒッヒ」
遠くでグランが「シカトかよ!」と瓦礫に八つ当たりをする。
「先ほどの微かな魔力……貴様だったか」
暴れるグランを気にすることなく女は話を進める。
「あたしの魔力なんざ微々たるもんですからねぇ、そこらのネズミのほうがよっぽど強い。ヒッヒ」
魔導屋という男が俺を見る。
「この坊っちゃんは、爆発に巻き込まれたんで?」
「そのようだ。コウコウセイという、この世界の人間らしい」
「へぇー、そうでしたか。これから殺るんで?」
やるって……まさか、殺す気か?
「いや、こいつは殺さん」
助かった……。
「なに言ってんだ、正気かアリエス!?」
「落ち着け。殺しはしない。だが、このまま帰すというわけにもいかん」
アリエスと呼ばれた女は、俺の上に被さった少女を退けると、瓦礫に埋まっている俺を、なんなく右手だけで引き上げた。
「違う軸にいながら我らが見える。興味深いではないか」
「こっちの嬢ちゃんはどうするんで?」
魔導屋は爆発の煤に汚れた少女を指す。
「そいつは同じ軸の参戦者だろう。……まだ生きてるな」
女の気配が変わる。空いてる手で腰にある細い剣を抜く。
「魔導屋、魔力を回収する魔導具はあるか?」
「ええ、もちろん。ヒッヒ」
なにをする気だ? ――まさか!?
アリエスは迷いなく剣を振り下ろす。
「やめろーッ!!」




