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セイクリッド・アークス  作者: そらり@月宮悠人
Prologue
4/30

境界線の狭間

 ――ここはどこだ?

 暗い、暗い世界。上も下も分からない、方角も分からない。


 ――あなたは……。


 声が聞こえる。儚げで優しい女性の声が。


 ――そう、ここに来てしまったのね。でも、ここはまだあなたが来るべき所ではない。


 なにを言っているんだ? 俺は、なんでこんな所に……?


 ――あなたは今、狭間にいる。境界線と言ってもいい。でも、ここはまだあなたが来るべき所ではない。


 来たくて来たんじゃない。


 ――そうね。あなたが自分で来られるわけはない。あの子に巻き込まれたんでしょう。


 あの子……?


 ――それも、まだあなたが知るべきではないわ。


 なら、俺はなにを知ることができる?


 ――なにも。あなたは、なにも知ることはできない。


 ふざけてるな……。なら、戻してくれよ。元の世界に。


 ――ええ、それならできるわ。言い換えれば、それしか今はできないのだけれど。


 そうかよ。……あんたは誰だ? 名前は?


 ――名は、あなたが知っている。いえ、あなたしか知らない。あなただけが、知っている。


 知り合いか?


 ――いいえ、今はまだ。そうそう、覚えていたら、あの子に伝えて。


 あの子?


 ――そう、あなたのとても大事な人。


 俺の、大事な人……?


 ――これからのあなたを支えてくれる、とても大事な人よ。あの子に、心配しないで、大丈夫だからと。そう伝えて。


 分かった。誰か知らないが、戻ったら伝えればいいんだな?


 ――お願いね。ただ、戻ると、あなたはここの記憶を忘れる。だから、思い出せたらお願いね。


 マジかよ……約束はできないぞ。


 ――それでもいいの。あの子をお願いね。


 暗い世界に、光が差す。眩しさに目を細める。

 手を伸ばすと、意識がハッキリと、現実に戻る。

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