バカじゃないの!?
「聞き捨てならないな」
忍者は、腰に携える二本の小太刀を二刀流で構える。
「俺を甘くみないでもらおうか」
戦闘態勢に入った忍者を見て、少女はほくそ笑む。
「ソレ使うなら、軸をずらさないとね」
少女が指をパチンと鳴らすと、目眩に襲われた。……気持ち悪い。なんだこれ?
「巻き込んでごめんね。君には辛いと思うけど、少しの間我慢してて」
もう、何がなんだか分からない。
さっきまで俺を見ていた周りの野次馬や駅員までもが消えている。地下鉄の風景はそのままに、動かない電車と俺たち三人だけが残された。
「後で全部説明してもらうからな……おぇ」
「うん。じゃあ、すぐ終わらせるから」
そう言って、少女は忍者に向き直る。
「小娘が……我が愛刀の露と消えよ!」
忍者が小太刀を振るうと、見えないなにかが、床をガリガリと削りながら少女に襲いかかる。
「はあああっ!!」
叫びながら、忍者は見えないなにかを連発する。何度も見て、それが見えない刃だということが、ようやく俺にも分かった。
めちゃくちゃ速いってわけでもないけど、その量がすごい。一発は細いのに、もう地形が変わるほどに床が削れている。
「――速いな」
「あなたが遅いだけ」
少女は、あの刃の嵐の中、忍者の後ろをとっていた。まさに目にも留まらぬというやつだ。しかし忍者も、そんなに驚いてる様子はない。
「あえて問おう。なぜ先の戦闘では手を抜いた」
「あなたたちの動きを見たかったのよ。見たことのない流派、武術、武装、観察したかったの。でも、もう必要ないわ。あなたたちは、わたしの敵じゃない」
冷静で冷酷な言葉に、忍者が怒りを抑えきれないのが見て取れる。
「この戦いに勝つのは、我々だ!!」
小太刀に炎が纏う。忍者の怒りを表したかのように燃え盛る炎刃が少女を襲う。だが、少女はそれを眉一つ動かさず片手剣で防ぐ。
「この炎は、そう簡単に防げぬぞ!」
炎はどんどん勢いを増し、忍者と少女を包み込もうとした。ところが、その炎は一瞬で霧散して消えた。
「なにっ!?」
「やっぱこの程度か。弱いよ、あなたは」
憐れむように冷たく言い放ち、容赦なく片手剣を振るう。
さっきは女性の体をすり抜けた剣が、忍者を斬る。
「ぐぅ……!」
忍者は小太刀を床に突き刺して支えにし、なんとか片膝で耐えた。
「その程度でこの戦いに挑もうなんて、身の程知らずもいいところだよ」
「貴様、もしや……ふ、ふふふ」
不気味に笑う忍者に、少女は剣を首筋に突きつける。
「おかしくなっちゃったかしら?」
「いや、これぞ僥倖というもの。……そこな少年、悪く思うな、運が悪かっただけだ」
なにを言ってるんだ?
俺の頭にクエッションマークが追加されると、少女はなにかに気付いたように驚く。
「あんた、バカじゃないの!?」
少女の視線の先、忍者が手に持つそれは、一見して手榴弾のようにも見えた。
「君! 伏せて!!」
今度はバックステップではなく、正面からタックルのような形で抱きしめられた。
おお、柔らかい、いい匂いがっ!
そして、二度目の爆発が地下鉄を吹き飛ばした。




