歯痒い思い
お待たせしました。久しぶりの更新です。
「アマドライト?」
「ええ。秀臣くんの転送先が狂って別の異世界に飛んでしまったようね」
情報解析室で主任のアンドラが煙草の煙を吐き出しながら答える。
「恐らくは、転送する瞬間に受けた雷撃の影響ね。彼には異世界に直接干渉できる力がある。それが雷撃のエネルギーを受けて暴走した、と考えるのが妥当でしょうね」
「参ったな〜、てことはまたお迎え行かないといけないのか。それで? アマドライトってどんな世界なの?」
「クオリク神話というのをご存知?」
「あいにく神話系には疎くてね」
「世界を創造したアズという神が人間に裏切られ、邪神に堕ちた。その邪神アズを諌めて世界を救ったのが女神ヘケよ」
「それで? その神話がなんだっていうのさ」
「この神話はね、奴が、陛下が作ったのよ」
「なんだって!?」
少し離れた所で待機していたアギリもピクリと反応する。
「おいおいおい、てことはもしかして……」
「そう。邪神アズは実在するし、死んではいない。封印されているだけなの」
「まずいな……こんなことなら力の扱いについて少しでも教えておくんだった」
「行きましょう」
「アギリ、君はまだ体調が――」
「私のミスでもあります。これ以上、あの人を危険な目に遭わせるわけにはいきません」
ふぅ……、とグラサンは肩を竦める。
「アンドラ、バックアップは頼めるか?」
「良いけど、今は無理よ」
「なんだ、緊急の用でもあるのか?」
「アマドライトへのゲートを起動するには、最低でもあと2日はかかるのよ」
「そんな……!」
すぐに行動出来ない歯痒さからか、アギリは俯き拳を握る。
「どんなに急いでも騒いでも、こればかりはどうしようもないわ。それにね、いい? アギリちゃん。あなたが自分のミスだと言うならそうなんだろうし、それを責めるのは私の役目じゃない。でも、相手を守れなかった時に、フルパフォーマンスでやれていれば……なんて死にたくなるような後悔はしたくないでしょう? いい機会だからゆっくり休むのね。体調管理も立派な仕事の一環よ」
「なら、アンドラはまず煙草やめないとねー」
「うっさいグラサン。叩き割るよ」
「やめてよ! これ一つしかないんだからね!?」
「買えよ」
「フッ、男にはこだわりってもんがあるのさ」
「やっぱ叩き割るわ」
「だからダメー!!」
グラサンがコントしていると、アギリは俯いた顔を決意したように上げる。
「……分かりました。その代わり、準備が出来たらすぐ教えてください!」
「うん、いい目してるわね。分かった、いの一番に教えてあげる」
それを聞くと、一言礼を言ってアギリは部屋を出た。
「ふぅー……。昔の誰かさんに似てるんじゃない?」
「似てないさ。僕にはアギリのような勇気は無かったからね」
「あの頃はあの頃で、好きだったけどね」
「今は嫌いかい?」
「好き嫌いで仕事しないの、あたし」
「ははは、僕もお仕事してこよーっと」
グラサンが部屋を出ると、アンドラは小さく「バカな人」と呟いた。
グラサンはコントが似合いますね。シリアスも予定してますが、大丈夫かな?




