釣りは好きかい?
「ん?」
今の大きな音はミレーか? 私に言っておいて自分が派手だな。
右腕を前へ突き出すと、なにもない空間から派手な赤いステッキが現れる。それを掴み、床へ突き立てる。
「さて、どこに居りまするやら、陛下」
帯状のモニター画面がディメルの周りに展開され、半径数十キロに渡る広範囲を探索する。
「ふむ、やはり反応が無い。だが本部のレーダーには引っかかった。これは興味深い」
モニターを消し、一旦戻ろうとすると、地震のような振動に見舞われる。
「おっと!?」
よろめきながらも耐える。
「これはこれは……もしかして、面白いことになってますかね?」
* * *
「おやおや、これは驚いた」
大して驚いた様子もないのに、グラサンはオーバーに言う。
「勝算あったようには見えなかったけどね」
グラマー美人が攻撃を放つ前に、俺が殴り飛ばしていた。さっきとは違い、吹っ飛ぶようなことはなかったが、それでもダメージは与えたようだ。
「邪魔です」
「へ?」
後ろに居たロリっ娘が、風のようにグラマー美人に斬りかかる。
「悪・即・斬」
斬ったのか……? なにも見えなかった。ただ、チンッという音だけが聞こえた。
「ぐはぁっ!」
グラマー美人が口から血を吐く。遅れて切り傷から血が滲む。右肩から大きく袈裟斬りと、十字を描くように左肩からも。そして横一文字。一体何者なんだこのロリっ娘は……。
「うっ……!」
無残な姿に吐き気が込み上げる。
「大丈夫かい?」
どこから出したのか、グラサンがビニール袋をくれた。
「さて、色々と吐いてもらいますよ。グラン・ベリー」
「はっ! 誰がちんちくりんに言うものかい」
強気のグランに、ロリっ娘は容赦なく太ももを突き刺す。
「あああああっ!!」
その声に、俺が耐えられなかった。
「やめろよ! もう十分だろ――」
言いかけて、頬をなにかが掠める。遅れて痛み。ロリっ娘が後ろ手で刃物を投げたということを、ようやく理解した。
「黙ってなさい。これはあなたに関係ありません」
「まあまあ、殺しやしないから」
どうどう、と頭をポンポン叩かれる。
「知り合い……なのか」
「ん? グラン・ベリーのことかい?」
「余計なことは喋らないで」
釘を差されてグラサンは「大丈夫、大丈夫。それに、無関係ってわけじゃないしさ」と、意味ありげに微笑む。
「彼女はね、とある機関に所属する暗殺者なんだけど、なぜかここのところ君を狙っていてね」
「はあ!? 関係大ありじゃねえか!」
「あっはっは、まあまあ。で、ここからが本題なんだけど」
「……なんだよ」
「君、釣りは好きかい?」
「おい、まさか囮やれってわけじゃ……」
「すごいね! よく分かったなー、びっくりだ!」
「わざとらしいわ!」
ハッハッハと笑いながらグラサンは校長に向く。
「すまんね、そういうわけでこの子は我々が預かるよ。修理費用は十分な額を振り込ませておくから」
「ひとつだけ約束してもらいたい」
「なんだい?」
「その子を死なせるな」
「……安心しなさいな、我々は彼を守るためにいるのだから」
意味ありげに言い残すと、グランを回収して学校を出る。
「ああ、忘れてた。そういや厄介なのが残ってたっけ」
目の前に、青白い奴が立っていた。
「おや、どちらへ?」
「久しぶりですね、ディメルさん」
「知ってるのか?」
「ええ、特一級危険人物の一人ですから」
なんか、聞くだけでやばそうだって分かるな……。
「アギリさん、行けそう?」
「ちょっと厳しい」
アギリって言うのか、このロリっ娘。
「ボスに連絡取れる?」
「5分あればなんとか」
「了解」
アギリは数歩前へ出ると、腰を落として構える。居合か?
「さて、修理代は倍で済むかなー」
「はぁ?」
「危ないから、一歩も動かないでね」
「一歩も?」
「ほら」
グラサンが指差す方を見ると、風に舞う葉がパンッ! と弾けた。
「彼女の剣気に触れるとああなるから」
「ああ……」
物凄く納得した。
「なんとも激しいですねぇ、障壁も兼ねているようだ」
ディメルがロッドをアギリに向けると、周囲の葉が光り、弾丸の如くアギリを襲う。しかしアギリに届く前に、弾丸は弾けて落ちる。
「フフフ、下手に動くより守りに徹する。なかなか良い判断ですね」
ふと、弾丸が大きく放射状に広がる。
「相手が私でなければ、ですが」
弾丸は直接俺たちを狙ってきた。
「うわぁぁぁ!」
恐怖で思わず逃げようとすると、グラサンが「動くな!」と一喝する。すると不思議な事にピタリと身体が動かなくなる。
「……はれ?」
「余計なことしないで」
さっきまで構えていたアギリが、縦横無尽に駆け回り弾丸を落としていった。
「あと3分」
弾丸を全て斬り落とすと、アギリはディメル目掛けて突進した。




