危なそうな人達 -Unconsciousness
窓から涼しい風が入ってくる。秋風というやつだろうか、夏もそろそろ終わりらしい。
部屋を見渡せば高級っぽい革張りのソファーに戸棚にはトロフィーなどが置かれ、窓に面したところには執務用の大きな机がある。
「どうかね、気分のほうは」
部屋の真ん中に置かれた大きなテーブル。そこにお茶の入った湯のみが二つ置かれた。
「どうぞ、座って」
テーブルを囲うように配置された革張りのソファーに座る。高級かどうかはさておき、座り心地は素晴らしい。校長の椅子もさぞ座り心地が良いんだろうな……なんて考えながら目の前に座る校長を見る。
「あのー……」
「なんですか?」
呑気にお茶を啜る校長を呆れて見る。
「この人達は誰ですか?」
出入口を背に立っている二人、グラサンが似合わない短いブロンド髪の男と、150もないぐらい背の低い青髪ロングの女の子。腰にあるのは刀だよな……?
「明らかに銃刀法違反な人がいるんですが。なんですか? この危なそうな人達は」
俺の危なそうな人達という部分に反応したのか、グラサンは「見た目で判断するのはよくないよ~君」と、いかにもチャラい感じで反論する。
「それに、事態を収拾したのは誰だと思ってるのかな?」
「うっ……」
それを言われるとなにも言えない……。
あの妙な声が聞こえてからミレーを殴り飛ばし、俺はやってやった! と、心の中でガッツポーズを決めたはいいんだが……。当然その様子を見ていた怯えた生徒諸君は、不審者を殴り飛ばし、炎の中に立つ俺の姿が悪魔の化身かなにかに見えたようで。ものすごい猜疑心と恐怖の眼差しが俺の胸に突き刺さった。
そんな時、炎を一瞬で消して目の前に現れたのがこの二人というわけだ。どうやったのか知らないが、このグラサンが「もう大丈夫だよ」と言うと、それまで獣のような警戒心に満ち満ちていた生徒諸君は何事もなかったかのようにあっさりと日常へと戻っていったのだった。
ところがその平和になった直後、俺の胸に鋭く光る刃を突きつけたのがこのロリっ娘である。いくらミレーを吹っ飛ばせたほどの力があろうと、力の扱いも分からないのに、鉄の切っ先を前にして威勢を張れるわけもなく、こいつらに従って現在に至る。
「校長はこの人達を知っているんですか?」
「いいや、知らないよ?」
「知らないのに招いたんですか!?」
「そうじゃない。知らないから、知りたいんだ」
そう言ってこの二人に向ける眼差しは、狩人のそれを思わせた。校長は一見ほのぼのとしたそこらのおっさんだが、柔道、空手は黒帯、剣道は師範級、他にも合気道、テコンドーなど、武術に造詣が深い。
そうだ、こんなすごい校長がいるんだ。こいつらがもし手荒なことをしようとしたって大丈夫!
「いい心がけだね~。でも、教えられるのは限られているし、あんたに教えることはできない」
「どういう意味ですかな?」
「そのまんまの意味だよ。あんたには知る権利はない」
「では、この子になら話すと。そういうことですかな?」
「そう、その通り。でも、こいつに教えたあとで聞き出そうとしても無駄だよ~。だって、こいつはもう二度とそちらの日常へは戻れないんだから」
「どういうことだよ……」
俺が訊くと、にっこりとしながら振り向く。
「君はその力を自由に使えるとでも思っていたのかな?」
「……!」
そうか、なんだか分からない強い力を持っているということは、それは周囲にとって脅威になる。つまり――。
「俺を監視するってことか」
「うんうん、理解が早くて助かるよ~」
「にしても、随分と対応が早いんだな。俺がこんな風になったのはついさっきだぜ?」
「んー、君のことは随分と前から見ていたからね~」
「前から?」
「そう。随分と前から……」
グラサンが意味ありげに口角を上げてニヤリとしながら言う。と、ロリっ娘が刀に手をかけ、ドアに振り返って明らかに警戒態勢に入る。
「詳しい話は後だ」
「なんだよ?」
「やれやれ……」
グラサンも懐から銃を取り出す。
「お客さんですよ」
ドアをぶっ壊して入ってくるのかと思いきや、普通にドアを開けて入ってきたのはスーツ姿のグラマーなお姉さんだった。
「ふーん……」
部屋を見渡してから俺に視線を向ける。
「へ?」
「君がそうなのかな?」
近づこうとするグラマー美人をロリっ娘が納刀状態の刀で制止する。
「あら、いたの? 小さくて見えなかったわ」
「この場は引いて下さい。場所を変えましょう」
挑発に動じることなくロリっ娘は毅然と立ちふさがる。
「いい度胸ね」
これ見よがしに胸ポケットから短い棒を取り出すと、小さな赤い宝石のついた先端をロリっ娘に向ける。
――あの宝石!
記憶から蘇る。あの赤い宝石。アリエスと少女にひどいことをした男の持つ杖にあった宝石だ!
「邪魔よ」
宝石に赤い光が集まる。なにが起きるのかさっぱり分からなかった。それでも身体は勝手に動いて、どうすればいいのかも分からないのに、ロリっ娘の前に飛び出した。




