わたし、強いから
「いつつ……」
ゆっくり起き上がると、周りの人々がざわついていた。
「なに? 今の?」
「スゲー音したぜ」
「なになに? 爆発?」
さっきまであれだけ無関心だった人々が、俺を見ている。そりゃあ、あんな爆発すればね……まさかあの炎の塊が爆発するとは。
自分の状態を確認すると、服が少し焦げていた。でっかい炎の塊を受けたわりには――。
ハッとして周りを見る。すぐ近くに、あの少女が倒れていた。
「おい、大丈夫か!?」
駆け寄り、声をかける。返事はないが息をしている。
「よかった、生きてる……」
さっきの炎を一身に受けたのか、背中の服が焼けて無くなっていた。だが火傷もなく、綺麗な白い背中が露わになっているだけだった。
この子が守ってくれたのか……。
「あの子、誰に話してるの?」
「さあ? 今の爆発でおかしくなっちゃったかな?」
なにを言ってるんだ? 目の前に、炎の直撃を受けた女の子が倒れているんだぞ?
「おい、大丈夫か? おい!」
何度か揺すって声をかけるが、気を失っているのか、反応がない。
「ほう、直撃してその程度か。やはりただ者ではないな」
いつの間にか、目の前に忍者コスプレ野郎が立っていた。
あれ? 言葉が分かる……?
なんだか分からんが、言葉が通じるならなんとかなる。
「おい、あんたちょっとやり過ぎなんじゃないの?」
「ん? なんだ貴様は」
いたのか、というように俺を見下ろす。
よく見れば見るほど、漫画に出てきそうな格好をしている。真っ黒な装束で顔は覆面で見えないが、声は低くて落ち着いてる。服の上から見ても、鍛えられているのがよく分かる。
「……通りすがりの高校生だよ」
「コウコウセイ? なんだか知らんが、我らが見えるのか。……危険だな」
忍者の声のトーンが下がる。右の掌を俺に向けると、炎が出現し、メラメラと燃え上がる。さっきのもこれか!
「死ね」
どうする? タイミングを見て避けるか?
目の前の炎は間違いなく本物だ。熱量が凄まじい、2メートル程の距離でも火傷しそうなほどに熱い。
どうやって生き抜くか、必死に考えを巡らせていると、横から現れた少女の蹴りが忍者をふっ飛ばした。
「え?」
後ろを振り返ると、さっきまでそこにいた女の子がいない。いつの間に?
「ぐっ! 目が覚めたか」
立ち上がった少女の服は申し訳程度にしか残っておらず、スカートもその丈をさらに短くしている。
「あんたなんかにやられるわけないでしょ?」
余裕の表情を見せる。腰ほどまである銀の髪が、片手剣の鈍色ともマッチして、危険な美しさを醸している。
「大丈夫?」
少女は、心配そうに手を差し伸べる。改めて女の子に縁なんてない俺は、緊張しながらもその手を握る。
「ああ、大丈夫だけど。君は?」
「わたしは大丈夫よ。良かった、まさか同じ軸の人がいるとは思ってなかったから。ごめんなさいね」
「同じ軸?」
分からず呆けていると、少女は驚いたように目を見開く。
「え、もしかして全く関係ない人?」
「ええ、全く」
そんなことより周りの視線が痛い。そりゃそうだよな、こんな可愛い女の子といるだけで、俺には異世界みたいなもんだ。
さらりと流れる銀の髪、吸い込まれるような翡翠の瞳、目はくりくりと大きく、まるでアイドルと話しているようだ。
「そんな……まさか……まさか、じゃあ、もしかして……」
少女はブツブツ呟きながら自分の世界へと入ったようだ。そんな姿もまた可愛い。
いかんな、普段縁がないからって、惚れっぽくなってるのかな。
「とりあえず、あの危険人物をどうにかできないかな?」
忍者は、これが殺気かと、素人の俺にも分かるほどゾッとするものを飛ばしてくる。
「ああ、アレはいいいのよ。ザコだし」
さらりと言い放つ少女に、忍者の殺気が増す。
「うぉっ!?」
思わず少女の後ろへ隠れる。なんか情けない……。あ、でもスカートが焼け落ちてて見えそう。
「大丈夫? アイツとは遊んでただけ。たまたま君にぶつかって不意打ちを受けたけどね」
少女は片手剣を持ち直し、正面から殺気を受ける。
「わたし、強いから」




