表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セイクリッド・アークス  作者: そらり@月宮悠人
Prologue
17/30

共闘 -Trusted

「はぁッ!」


 カウンター気味の斬撃がモロに入る。秀臣は苦痛の表情を浮かべることもなくガード姿勢でアリエスを見る。


「全く、化け物だな。体力が切れることはなく、痛みも感じることはないか」


 ちらりと、倒れている少女を見る。

 あいつのことだ、おそらく策を練っているのだろう。

 この短期間で、随分と少女を理解できたと感じるのは、共闘によるものだろうか。アリエスにはその経験があった。

 あいつが突破口を見出すまでは、カガミ()()()をいなすしかないか。

 と、その意図に気付いたかのように、秀臣はくるりと踵を返し、少女のほうへ歩み寄る。


「ちッ!」


 背後から切りかかるが、まるで後ろに目があるかのように歩きながら避ける。次に足を狙うが、それも軽い跳躍で避けられた。


「本当に化け物だな」


 仕方ない。と剣の切っ先を秀臣に向ける。


「エルセーレ・オ・ルージェ!」


 秀臣の周りに透明な無数の刃が浮かび、高速で秀臣へと飛んでいく。多角射撃のような突き(ラッシュ)に秀臣も膝をつく。


「さすがの貴様も耐えられまい……くっ!」


 切り札の一つであるこの技は、魔法による剣の連撃。アリエスの魔力では日に一度が限度である。だがアリエスの必死さを物ともせず、秀臣はなおも再び立ち上がり、今度は弱ったアリエスへと振り向き、止めを刺そうとナイフを構える。


「フッ、残念ながら終わりのようだな」


 ナイフを振り下ろそうとしていた秀臣の体が、ゆっくりと力なく崩れ落ちる。


「遅いぞ」


 崩れ落ちた秀臣の背後には、複数の魔法陣に囲まれた少女の姿があった。


「あら、お楽しみを邪魔してはいけないかと思って」

「あの技で駄目なら、もうお前を援護できなかったぞ」

「よく信じてくれましたね」

「お前の()()を見れば分かる。まあ、見なくても分かっていたがな」


 少女の足元には膨大な計算式と血の跡があった。指で荒れた大地に式を書いていたのだろう。服を破って包帯代わりに指に巻いていた。


「どうして分かっていたんですか?」


 少女は包帯をしていない方の手をアリエスに差し出す。


「グランをどうやって倒したのか。アレは力でどうにかできる奴じゃない。だとしたら、魔法に長けていると考えるのが妥当だろう」


 アリエスは少女の手を取って立ち上がる。


「この少年()()()は明らかに魔法の類が絡んでいた。傀儡であるにしろ幻視にしろな。そして尽きることのない体力に痛みを感じない体。としたら、こいつを倒せるのは私ではない」


 少女を見るアリエスの瞳には、信頼の光があった。


「行くぞ」


 歩き出すアリエスに、少女は思わず「少し休んだほうが」と声をかける。


「お前はサポートとしても優秀だ。だから私は遠慮なく行ける」


 構わず進むアリエスを「無茶言わないでよー」と呆れつつも笑顔で少女は追いかける。


     *     *     *


「ほう……」


 苦戦していると思いきや、アリエスという女剣士は時間稼ぎをしていたわけか。


 映像を消して椅子へと戻る。


「あの女は?」

「分かりません。監視の話によれば、あの少年と一緒にこちらの世界に来たという話です」


 ギズの話が本当であれば、あの女は……。


「フッ、ついに現れたか」

「なにか?」


 ギズは小さく呟いた陛下に聞き返すも、陛下は「なんでもない」と答えた。


博士(ドクター)、例の計画を実行に移す」

「アレを? まだ時期尚早では?」

「いいや、機は熟したよ」


 杖の宝石がキラリと輝くと、床に複雑な魔法陣が光り現れる。


「陛下……これは?」

「君に見せるのは初めてかな」


 建物が大きく揺れ、崩壊する――と思うと、周りがグニャグニャと歪んで景色が変わる。廃墟と思われた場所が壮麗な部屋へと変化した。


「ようこそ、神殺しの宮殿へ」


     *     *     *


――ここは……?


 薄ら目を開けると、眩しい光と赤い色が視界に広がる。


「アリエス……?」


 目の前に血塗れで倒れているのは、アリエスと少女だった。


「目が覚めたかね」


 秀臣の後ろから声が聞こえた。寝ている身体を起こして振り向くと、玉座のような椅子に座る男がいた。


「愚かだと思わんかね? 絶対王である私に刃向かおうなど……自殺と同義だというのに。いや、私に殺されるのだから、意味ある死か」


――この男はなにを言っているんだ?


「ああ、状況を把握しかねている顔だね。いいだろう、私が説明してやる。なに、至極単純な話だよ。君は巻き込まれたのだ。そして無謀にも、私に刃向かい、返り討ちにあったというわけだ」


 話を聞いている秀臣の足を、アリエスの手が掴む。


「に……げ……」

「アリエス!?」

「ほう、まだ生きていたのか。その生命力には感心する。だが……」


 男の持つ杖に付いている大きな赤い宝石が光ったと思うと、アリエスが苦しみだした。


「うぁぁッ!!」


 見えない圧力にアリエスが押し潰されている。


「アリエス!」

「ハハハッ! いい声で鳴くじゃないか」

「てめぇ……ッ!」


 立ち上がろうとするが、力が入らない。


「やめておけ。立ち上がれたとして、お前になにができる? それこそ蛮勇というものだ」


 俺は、誰も守れないのか? 助けられてばかりで、俺は……!


――助けたい?


 誰だ……?

 頭の中に、直接声が響く。この声どこかで……。


――助けたくないの?


 助けたい……けど、俺はなにもできない……。


――そう思ってるだけ。私は知ってる、あなたのことを。あなたも知っている、私のことを。


――さあ、あなたにしか果たせない使命を。



 眩い光と共に、意識が途絶えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ