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セイクリッド・アークス  作者: そらり@月宮悠人
Prologue
15/30

陛下という男 -Still don't know

「はあッ!」


 華麗な剣さばきで瞬く間に五人を倒すと、真後ろの気配に切っ先を突きつける。


「……フッ、その腕、やはりただ者ではないな」


 少女の剣と交差して、アリエスの剣先が少女の鼻に突きつけられる。


「……自己紹介が必要でしょうか」

「いや、その必要は――ないッ!」


 少女の後ろへ剣を振るう。


「がッ、はッ……!」


 背後から忍び寄る男がアリエスの剣に倒れる。


「おそらくお前も別世界の出身だろう。それほどの腕前だ、敵になったら厄介だからな」


 別の世界の人間が敵になる可能性、この少女も例外ではない。その可能性がある限り、互いを知ることは情に繋がり、それは有事に剣を鈍らせる。そのことをアリエスは誰より解っていた。


「そうならないよう、願っています」


 今度は少女が躊躇いなくアリエスの背後にいる男を斬り伏せる。


「走れますか?」

「無論だ」


 二人が再び走りだすと、どこに隠れていたのか、仲間と思しき男たちがひっきりなしに襲ってくる。それらを倒しながら、二人はペースを落とすことなく突き進む。


「伏兵でしょうか、さっきまでこんなに人がいた気配はありませんでしたが」

「伏兵にしては様子が違う。わらわらと湧いて出て来るかのようだ」

「誰がこんなことを……」


 一瞬、シュミットとギズが脳裏をよぎる。


「いや、違うな……」

「え?」

「なんでもない。今は少年を救出することを考えろ」

「はい!」


     *     *     *


「おやおや、まっすぐこちらに向かっていますね」


 顔が隠れるほど深くフードを被った怪しげな男が、細い台座に浮かぶ水晶を見ながら報告する。

 アリエスたちがいる場所よりずっと離れた所にある廃墟の一室。瓦礫が転がり天井には穴が空いている。そんな廃墟に似つかわしくない調度品や、臙脂(えんじ)色の絨毯などが置かれた一角があった。部分的に手入れが行き届いているその一角に、そのフードコートを着た男はいた。


「ほう、ここが分かるのか。よほど勘の良い奴らなのか……」


 コートの男の背後に、少々仰々しい、まるで王様が座るかのような椅子に座る男がいた。短い黒髪を無造作にオールバックで固めており、ギラリと光る瞳は燃えるような紅。男はほんの少し眉をひそめ、目の前に横たわる少年、火神秀臣を見る。


「それとも、愛の力なのかな?」


 言って、男は自嘲気味に嗤う。


尾行(つけ)られたな、ギズ」


 王座の背後に控えていたギズが一歩前に出る。


「恐れ(なが)ら陛下、あれほどの長距離空間移動です。追尾系魔法の気配もありませんでした。それにここは魔導暗室。位置を特定するにも時間がかかるかと」


 王座に座る男を、ギズは陛下と呼んだ。


「つまり、そのうちここがバレると、そういうことかな?」


 陛下という男の言葉は、ギズに重くのしかかった。


「……申し訳ありません」

「ふむ。まあ良い」


 男はゆっくりと立ち上がる。虚空に手を伸ばすとそこに杖が現れた。艶やかな真紅のシャフトにグリップには大きな宝石が光る。


「少し試してやろう」


 グリップの宝石を正面に向けると、空間に円形の映像が現れる。そこには走るアリエスと少女の姿があった。


「さあ、ショーの始まりだ」

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