アレは強いからな
俺たちの前に、二人の男は現れた。
月の明かりが疎らに届く一階部分は、上と同様になにもない。机も椅子も、床さえも土がむき出しになっている。
「やはり貴様か、シュミット」
シュミットと呼ばれた赤髪の男が、ヘラヘラとした顔でやってくる。
「知り合いなのか……?」
「よ~く知ってるぜ~? 旧知の仲ってやつだ。なあ? アリエス」
アリエスが答える前に、シュミットが耳障りな口調で言う。
「フン、貴様とは例え腐れ縁だとしても願い下げだ」
「つれねーなー、一緒に狩りをした仲だろ?」
シュミットはヘラヘラしながらも、全身に青い電気のような光を纏う。
「あえて問おう、私たちをどうするつもりだ?」
アリエスが訊ねると、シュミットは大声をあげて笑った。
「ハーッハッハッハー! いいね! 『私たちをどうするつもり』かって?」
威嚇のつもりなのか、周りに小さく雷撃が飛ぶ。
――光の球がない?
避けるさいの指標としていた光の粒がどこにもない。どういうことだ?
「なるほど、ラグがあったのは照準だったか」
アリエスが球の正体に気付く。
「照準?」
「あの光で位置を正確に指定してから雷撃を放っていたんだ」
俺の質問に、相手を睨んだままアリエスが答える。
「ご明察~、よくできました」
小馬鹿にしたように、シュミットが拍手をする。
「シュミット。遊んでいる時間はないぞ」
「分かってるって。お前も楽しめよ、ギズ」
スキンヘッドの男はギズというらしい。体格からして、格闘が得意なのか?
「ギズとやら、話し合いは無駄か?」
アリエスは鋭い視線をギズに向ける。
「平和的解決。そんなことができるのであれば、この戦争自体起きてはいないだろう」
――戦争?
「そういうことだ。大人しくそこの坊主を置いて失せな。さもないと……」
魔法の雷がシュミットの手のひらに集中する。それをこちらに向け、脅しをかける。
「少年を? そうか、それで尾行したというわけか」
「その通り。雷撃に踊る様は見物だったぜ」
「まさか遠距離で雷撃を撃てるようになっているとは思いもしなかったよ。成長したな、坊や」
その一言に、シュミットの顔色が変わる。
「てめぇ……」
「尾行していたというのなら、もっと上手い方法があっただろうに」
「ハッ! 分断には成功した。上は別部隊が制圧してるだろうよ。四人で行動してればなんとかなったかもな」
――四人?
違和感を感じた。なぜ四人なんだ? 俺とアリエスとグラン、そしてあの少女……もう一人いたはずだ。
「ああ、それなら心配はいらんよ」
アリエスは焦るどころか、涼しい顔をして言う。
「アレは強いからな」




