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私が頑張るとみんな死んじゃいますわ  作者: 孤独
ジャニー・立早のRPG編
7/57

どいつもこいつも勇者になれる。だが、勝てるとは言っていない

立早が召喚する人物達はシィエラのように来た時から強い者もいれば弱い者もいる。戦力はハッキリと分かれていた。どんな世界でも適材適所。どんなルールにも適材適所だ。シィエラのように圧倒的な強さを秘めればここはまだマシなところ。

しかし、そんな彼等に救済を与えたのは意外にも神様である立早であった。



「紹介できる武器はあるよ」

「防具はこっちね」



RPG風の世界観らしく、武器屋と防具屋のセットがちゃんとあった。


「おいおい。そんな装備でダンジョンに出るつもりか。俺のを貸してやろう(俺はそーゆう役目だ)」


また最低限のクリーチャーを倒せる装備を貸してくれる(最終的にはもらう)NPCもいる。初心者や強さを持たない者達は装備の強化から始める。

ダンジョンに入る手前で装備チェックを自動にしてくれるNPCはシィエラに話しかける。



「おいおい。そんな装備でダンジョンに出るつもりか。俺のを貸してやろう(俺はそーゆう役目だ)」

「脂汗まみれで口がくさい男性の服なんて着たくないですわ。別の方をお選びください」



シィエラはサラッとした表情でグサリと男のハートを突き刺す言葉を放ち、街の外であるダンジョンに向かっていった。しかし、NPCは心が痛んだとしてもNPCの役割は常に実行される。

立早がなぜ召喚した者達を生かすようなシステムを作り出したか。彼の弁というわけではないが、生い立ちが強いのだろう。元々弱い人間であり、自分が、世界が決めているであろう当たり前の環境下の中で強くなれればという、儚い希望を自分の世界に造り上げた。



必死に覚えた九九は多くの人間が長く使いこなせるかもしれないが、割り算はそうそう覚えられないし、2桁の暗算なんて電卓を使った方が良いという発想。当たり前じゃねぇか。世界の流れに対し、追いつけない人間と追いつける人間がいることが問題。

一方で立早はできることを装備という形で残したかった。時の流れに負けないように、いつか忘れてしまった技術をパッと使えるようにしたかった。彼は前の世界がとても理不尽と思っているだろう。自分はこーして、肉体に自信がない者にも希望を与えている。どうして前の世界がそうできなかったのか、訴えたい。



「紹介できる武器はあるよ」

「面白い武器って何かある?」



ここに立早と似ている弱い人間が武器屋を何度も訪れていた。

シィエラよりも早く来ており、初日はただ泣いて戸惑っていたばかりであるが、自分なりに戦いを続けて装備を整えてきた少年がいる。名はチィヨコレィト・パンパン。

現在の装備は蜘蛛のエンブレムが刻まれている双剣ムラガモガラミと小さい両翼がつけられた軟鉄の鎧《アラスカ王鳥の鉄鎧》である。鎧の下はサッカーユニフォームに、フェイスペイントも刻まれた少年だ。

お金も溜まり、アイテムにそれなりに入ると良い武器をくれる。使った事のない武器も握ってしまえば簡単に扱い方が分かり、体が勝手に反応する。



「あなたにはこのような武器がオススメです」

「!ナイフ!?」

「いいえ、ダガーです。8200センドでございます。素材ありなら割引しますよ」



最終的な願望はやはりこの世界から出るために神様を倒す事である。しかし、まだ武器を集めることで手が一杯である。

彼はここに来る前までは病弱でサッカー好きの少年であった。唐突に引き込まれ、精神的にも苦しんだのだが、人にも助けられた事も含めてこの世界の単純で報われる図に心が和らいで来た。先が見えないリハビリを味わったり、強くなれない現実に負けていた時とは違う。ちゃんとした道具があり、ちゃんとした結果が出る。好きなサッカーはまだやってないし見ていないけれど、充実感というのがここには確かにあった。



「買います!経験値もそのままですよね!?」

「もちろん。現在装備している武器はこちらで預かれるぞ」



お買い物なんていつも母親か父親が付き添っていた。それくらい1人での買い物はした事がなく、話すことには億劫だったが、NPCは全体的に親切で優しくて良かった。

武器を買った後、すぐに装備して早速性能が気になるパンパン。いつかここで助けてもらった人に恩返しをしたく、強くなるという目標も掲げている。


「よーし。もっともっと強くなって、…………いつかは川城さんのお傍につける存在になりたいな」



川城昇。

パンパンよりも先にこの世界に召喚された会社員姿の人物であるが、非常に強い正義感を持っており彼に救われた人物も多く仲間も多い。もっとも神様との戦いに近い人物とされている。それだけ、この世界で戦闘を繰り広げている人物。現在、街にはおらず攻略に励んでいる。

この世界ではパンパンのような強さをつけている者達を"ビギナーズ"と呼ばれ、川城のような神様を倒すことを目論む者達を"ハンター"と呼ぶ。一方で強さなど求めておらず、神様に恐れて足を止め続ける者達もいる。NPCになるのも怖く、今日の宿と飯代を確保してなんとか生きていくだけの"ソウルレス"と呼ばれる者達もいる。好きで来た奴なんて誰一人もいない。

また、三つのグループと違って変わった事でお金を得る者達もいる。"アシスタント"と呼ばれる、NPC外の完全な人間による情報屋集団である。



「毎日恒例!人間最新強さランキングが出たよー!」



街にいるNPCには武器屋、情報屋、宿屋以外にもちゃんとある。しかし、それらを自由に使いこなせる人間(金がある奴)はあまりいない。NPCの存在を最大限に活かし、他の人々に情報を提供してくれる。

また、"アシスタント"達の多くはパンパンのような一般人ではないが、戦闘をメインに行う能力ではない者が多い。彼等もまた適材適所故に作り上げられた組織である。

一回の戦闘よりも多くのお金を巻き上げられ、命を奪われるリスクは限りなく0。まだ知らない場所が広がるこの世界では情報は高く売れる。特に川城のような神様を本気で殺そうと考える輩には大金で売れる。



「楽して金を儲けるのはサイコーだ(決して楽じゃないが)」



"アシスタント"の多くはこの世界から出る気がない。元々、情報収集専門の能力をその世界のトップから命じられて生み出しただけ。物語や世界の裏方のような存在には明るい場所はない。握る情報は常に勇者の命の次にくらいのものだ。そして、勇者のように華やかではない。

一方、ここには安心できる街という箱庭があり、求めている情報が沢山転がっており、ちゃんとした値段で買う者がいてくれる。情報は鮮度が非常に問われており、誰も知らないからこそ高値であり、複数の者が知っただけで価値は急落してしまう。



「さー、皆さん。賭け事はどうだったかな!」



"アシスタント"全体を束ねている男はかなりの商売上手であった。この世界で初めて情報の取引にお金を要求した男でもあり、次々とお金を回収しばら撒いた。現在やっている賭け事は"投資ゲーム"と呼ばれるものであり、NPCの中に現在いる人間達の中で誰が一番強いか教えてくれる者がいる。そいつを利用し、誰が現在強いかというのを賭けようというゲームである。

今、ランキング結果の表が張り出される。



1位 広嶋 健吾 (3回目、1位)

1位 シィエラ・レイストル (初)

3位 川城 昇  

4位 X76



これが出来たばかりの頃は非常に好調な賭け事であった。なにせ、川城昇とX76などの戦士達が次々に現れて未開の地を突破していってくれたからだ。装備できる機能はもちろん、本人の強さもあるためランキングはいつも乱れまくった。誰も予想が困難だから賭けにもなった。加えて、お客の掛け金の8割は賭けられた人物に渡されている。そのお金を元に川城達は長く冒険を続けられると言っていいだろう。残りの2割は言わずもがな、"アシスタント"の資金源となる。見事1位を当てた者に掛け金×倍率のお金が入る。

しかし、つい最近。おかしな事態が起こり、人気が落ち始めてしまった。



「ま、また変な奴が一位だぞ!」

「この前来たばっかの奴だろ!」

「っていうか、同率一位がもう1人!?それもまた、初ってどーゆうことだよ!?」

「おかしいんじゃねぇーか、テンバー!」



NPCの正しい答えを張り出しているだけに批判を喰らう。

"アシスタント"を束ねる男、テンバー・ギル・ワイステン。眼鏡に鹿追帽子という探偵と思わせるファッションで、口がなければ怪しい商品を売る商人にしか見えない。

強さでは貫禄の選外であるが、お金の保有は全ての人間の中でトップに立っている。




「まぁまぁ、これが神様が出している結果。しばし、対策を打ってありますのでお待ちを…………」




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