悪魔、女神、社蓄、ロボット、一般人、商人による飲み会②
「戦った感じ。立早の能力はこの世界ならば何でもアリと言ったところだろう」
6人は飯を食べながら、主に広嶋と川城が話しながら情報を提供した。
「世界を造り出したり、私達をこうして召喚するだけでも相当な力を有している。しかし、戦闘力は分かっての通り、そこまで高くはない」
「川城に同意だな」
恐ろしい能力であることは6人とも認めている。しかし、立早に恐れているわけじゃない。
「戦闘に関して言えば、ロクに経験がねぇ。無双した事はあっても、喧嘩や戦争を知らない立早にはいくつも隙がある。それが弱点の一つだな」
「私としては立早じゃなくて、立早の能力をもっと知りたいんだけどね」
「何デモ有リ以外何ガアル?」
「何でも有りという表現がちょっと違うかもな。立早の理想が叶うと言えば良いか。私の槍は確実に立早の体を突き刺したが、奴は刺されてから脱出をした。何でも有りならどんな攻撃も効かないというルールも付けられたはずだろう。限界はあるはずだ」
実力者が4人揃えばわずか10秒足らずの戦闘から膨大な情報を得てしまう。
単純な能力だけにかまけている連中とは違う。
「し、質問です」
「なにかしらパンパン」
「あの、次。立早は何をしてくるんでしょうか?初めて姿を見せてくれましたけど」
ここでまったくと言って良いほど、戦闘経験のないパンパンが良い横槍を入れる。
対策や情報を共有するのは何も立早の戦闘力だけじゃない。
これについては一番近い川城が答えてくれた。
「どこにいるかは検討がつかないが、仕掛けてくるとしたら世界そのものを変えてくるか、まだ隠している部下達を大量に使うかだな」
この世界に来て立早が望むように攻略に勤しむ川城。何回も立早の部下=この世界での死者と戦い、勝ち続けている。
「私の予想だが、部下を全員倒せば立早は出てくるんじゃないかと思う。あるいは奴の拠点が現れるといったところ。奴の作るシナリオを攻略し続ければ必ず見つけられる」
「シナリオって?」
まだ来て日の浅いシィエラと広嶋にはそれがあまり分からない。パンパンも本格的にシナリオを齧った事がないため、疑問の目を向ける。
3人は川城の素面を見ながら彼の声に耳を傾ける。
「キーとなるNPCと話しかけることでフラグが立つんだ。最近あったのは、NPCをある地点までの護衛。成功するとアイテムやお金、未開の地の情報をくれたよ」
「キーとなるNPCは簡単に見つけられるの?」
「困った時は情報屋を使う。情報屋から攻略率というのを取得できて、私の現在の攻略率は72%だ」
「俺ハ53%」
「あくまで個人の数値だが、チームとして組めばまだ攻略が済んでなくても先のイベントに出会えるぞ」
サラリーマンの恰好をしているのにゲームっぽい話をしていると、こいつ働いていないんじゃないかと疑う。
「早めに立早を潰すには協力した方が良いってわけか」
「そういうことだ、広嶋君」
あまり組むことに気が乗らない広嶋。立早が作ったとされるシナリオを攻略していくのも良いが、その間にどんどん人間が召喚されるというのなら悠長にしてる場合ではない。
嫌でも手は組まないとマズイだろう。
「なら善は急げよね?」
「シィエラ」
「お腹も満ちたし、お化粧も済ませたし」
シィエラはお酒で少し赤くなった顔を見せながらも、平静に近かった。唯一、酒を飲んでいた。
「この6人で戦うんでしょ?私は良いわよ」
「待て、俺は協力までする気はねぇ」
「勝手ニ入レルナ」
「ぼ、僕は無理だよ~」
シィエラの何気ない言葉に広嶋、X76、パンパンが反対。
「私も遠慮かな。戦闘向きじゃないから援助だけだよ?」
最後にテンバーが優しく拒否する。
パンパンを除けば実力は確かであるが、チーム力はまったくない。シィエラの誘いも仲間意識を高めるためじゃなく、面白いからという割合が強い。
同じ境遇にいるが、友達という関係は築けないだろう。
「あら~、みんな協力しないの?一緒に飲んだ仲だって言うのに、残念だわ」
そう言いながらシィエラは席を外す。
「どこに行く」
「そーゆうことを聞く男がいるなんて、信じられないわ。広嶋君」
シィエラが去るとX76も動く。テンバーとの付き合いで参加していただけ。いずれは倒す立早の情報もとれたのだ。これ以上いれば川城と広嶋も殺したくなる。
「情報ヲアリガトウナ、俺モ行クゾ」
「攻略するつもりか」
「川城、次会ッタラ戦争ダゾ。終ワッタラ広嶋、シィエラ、最後ニ立早ダ」
「俺をカウントすんじゃねぇーよ。雑魚を相手する時間はねぇよ」
X76も立ち去る。このチームプレイのなさ。それぞれが強者であるという自覚であろう。広嶋もこの場から去る前にテンバーに話しかけた。
「テンバー。お前は俺達と協力して得があるのか?」
「え?お金儲けしかないですよ」
「本当にそうか?まさか、立早にブルッたからこの世界から出たくなったとかじゃねぇだろうな」
広嶋の推察。実は当たりである。この世界で商売を通じて周囲に影響ができるようになったものの、立早の恐ろしさを知り、すぐにその考えを捨てた。
図星であるものの、表情が揺れなかったのはテンバーのファインプレイ。広嶋は推察でしかなく、それ以上の感情もないため確信に迫ろうという気はなかった。
「いえいえ、そうでもない。ただ邪魔だなって感じますね」
名演技。
立早を倒すために情報や人材を川城達に流す。協力という体でお金はキッチリ頂くつもりだ。
立早が死ねばこの世界からおさらばという事にもなるが、ここで得た経験でテンバーがやりたいこと。
「立早が死んだら、自分の世界で商人をやりますよ。いやぁ、良い夢をもらいましたから」
「人の世界で自分の夢を持つってどーゆう頭してんだ。今までロクでもなかったんだな」
「まったくですよ」