悪魔、女神、社蓄、ロボット、一般人、商人による飲み会①
嵐のように現れ、人々を恐怖に陥れる。しかし、最後の退場はあまりにもマヌケというか、神様とは思えない敗走を見せた。
「立早は生きている。まだ、この世界があるからな」
「千載一遇でしたのに男性お2人には呆れますわ」
人々は恐怖を抱いたり、また冒険に出て強くなることを決めたり、様々であった。
その中でシィエラ達は飲み屋に入ってジャニー・立早についての情報交換を行った。
「俺、帰って良いか?情報とやらを共有しないのなら」
「あら、広嶋君のご自宅はこの世界にあるのかしら?すんすん、……泥臭そうな匂い。川の近くにあるお家かしら?」
「そんな匂いはしてねぇよ。この空間に男の比率が多いから、男臭いだけだろ。鼻に匂いが届かないように殺してやろうか?」
「あなたがそうされたいでしょ?美しい女性の匂い、嫌いそう。視線も向けてくれないし、時折鼻も抑えるし。あなたってホモ?○○スの使い方が一般男子と違うの?」
「どっちもねぇよ」
シィエラ、広嶋、川城、X76、パンパン、テンバーの六人による情報交換である。初っ端からシィエラと広嶋は言い争い。
「テンバー。俺ハ何モ飲メナイシ、川城トハ組ムツモリハネェ。立早ヨリ先ダ」
「テンバー。私は広嶋くんとシィエラを連れて来るなら行くと言ったが?」
川城とX76も敵意を剥き出しにしていた。
「はははは。そ、そ、そんなにいがみ合うなよ。この中でたぶん、6人があれと立ち向かえるだろ?」
「……え?ぼ、僕も入っているの?シィエラさんに連れられただけなのに」
テンバーとパンパンは今にも殺し合いに巻き込まれそうな空間で生存していた。
この6人が集えたのはテンバーの力量であった。初対面である広嶋を上手く誘い、シィエラも川城も、X76も集わせることができた。
「戦ってる時間は10秒もなかったと思うが、それなりに収穫はある。情報を共有すれば立早と対峙した時、役立つだろう?」
テンバーはチームプレイを強調する。
しかし、鼻で笑う広嶋とシィエラ。
「誘ったテメェは何もしねぇだろ?」
「パンパンくんと同じであなたは強く感じないわ。利用しようって魂胆でしょ?」
まだテンバーとの付き合いが浅い2人がそう言うのも無理はない。
テンバーが握るお金や権力、人材など。広嶋とシィエラには無価値でしかない。
しかし、川城とX76には彼の働きは理解している。
「こーやって実力者を4人集めるテンバーの手腕も見るべきだ」
「同ジク」
広嶋とシィエラよりも歳を重ねている2人らしい答えである。川城達の言葉に広嶋は納得こそしないものの、
「テメェ等が立早を殺せれば都合が良いのは確かだな」
やや前向きに情報交換に参加。広嶋が参加する形でシィエラも
「じゃあ、注文しましょうか。お代は全額テンバーとかいうお財布で良いんでしょ?店員さーん!注文お願いしますわー!」
さりげなく、奢りを催促。抜け目ない女である。
店員がシィエラ達の席にやってきて注文を承る。
「生6つお願いするわ」
「俺は酒飲まねぇよ。お茶にしろ」
「僕、未成年です。オレンジジュースで」
「俺ハ単3電池。1パック16個入リ」
「酔って作戦会議などできまい。水で十分だ」
「お前等ーー!せめて注文決めてからしろ!従業員混乱してるだろ!」
テンバーから全員に渡されるメニュー。従業員はお客の注文が終わるまでキチンと待ってくれるようにセットされている。その1ページ目。
【飲み物】
【過去から来た亀の池】
【赤と青と白の太極図】
【医者の求人】
【黄金麒麟】
【黄色な俺味(CCレモン)】
【人生を応援ドリンク(ジンジャーエール)】
などなど…………。
「普通に品名を書いておけ!なんだこの馬鹿は!どこまで頭沸いてんの!?とんでもねぇ氷使いだろ!ここにいねぇのに、ここまで寝ぼけんな!」
即座にメニューを叩き折る広嶋。人の黒い歴史を見ると自分も恥ずかしくなるそれである。
「ちなみに先ほど行ったスイーツショップにあったシーソルトケーキは、"海神王のおやつ"だったな」
川城、さりげなくスイーツショップでのメニュー名を広嶋に教える。
広嶋は立早と同じ世界から来ているため、飲み物についてはある程度分かる。また、X76も電池がある世界から来ているため、知っている品名もあるようだ。
一方でシィエラ、川城、テンバー、パンパンの四名はそれらをよくは知らない。
異文化の飲み物に興味がある。
「それでも、お酒よ!この、"スーパー・ライジング・ドライ・サン・プレミアム・ドライ"を頂戴」
「2回もドライするのか」
品名をカタカナにしアナグラムするだけで、安価な中二の完成である。
メンバー紅一点にして、大人の魅力が溢れ出して誰もが意識してしまうシィエラ・レイストルがとても簡単なダサい技名っぽい事を発言している。
当たり前のように言うシィエラを見て、広嶋は世界の違いというのを感じている。いつもこれには驚き、慣れることができない。
「僕は、"赤と青と白の太極図"をお願いします」
「絶対、立早は太極図分かってねぇよ」
パンパンはペプシを注文。メニュー名には赤と青、白の三色がある時点で太極図は完成しない。そもそもペプシのマークは太極図ではない。さらにペプシには赤と青、白の三色はついていない。
「私はそうだな。"ネスカフェ・ゴールド・ブレンド・スティック・コーヒー・セルフスタイル"を頼む」
「……ああ。普通だな」
「コーヒーだろ?コーヒーと書いてある。私の世界にもあるからな」
「まぁ、コーヒーだけどな」
だが、おそらく。いや、100%言えることがある。
テンバーに置かれる飲み物はスティックコーヒーであると。なんだこの嫌がらせ。お湯はどうやら厨房近くまで行かないともらえないようだ。
「皆、無難だな」
「全然無難じゃねぇよ。お前等もホント頭おかしいな」
「そうなのか?広嶋?」
広嶋がメニューを叩きつけたり、イチイチメニュー名にツッコんでいるだけでシィエラ達は広嶋がちょっと不思議な奴だとは思っている。
「あなたも変人じゃない。顔を赤くしたり、鳥肌立てたり広嶋君は可愛いわね」
「俺はそれをお前等に言いたいぜ」
「アノ馬鹿ト同ジ世界カ、文化ガ知レルナ。ボケトツッコミガヨクデキテイル」
「X76、聞き取り難いから喋るな。読みにくいだろ」
そして、注文は広嶋と川城となって。
「"水"を頼む」
「川城、それで良いのかよ?」
「広嶋君は何にするんだ」
「"お茶"だ。以上だな」
「かしこまりました」
2人がそういうと従業員はご確認のため、注文した飲み物を語り出す
「"スーパー・ライジング・ドライ・サン・プレミアム・ドライ"、"赤と青と白の太極図"、"ネスカフェ・ゴールド・ブレンド・スティック・コーヒー・セルフスタイル"、"ケアフル・セレクション・ホーリー・ウォーター"、"伊藤園香り豊かなお茶500ml"をお一つずつでよろしいでしょうか?」
「飲み物を頼むだけで長ぇよ!」