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私が頑張るとみんな死んじゃいますわ  作者: 孤独
ジャニー・立早のRPG編
13/57

立早演劇団(1人)が世界中を真っ赤にし、凍死させる

「ふはははははは!よくぞ我の前まで辿り着いたものよ!さぁ勝負と行こう!」



……なんか違う。



「台詞からしてこー……違うな。もっと凝った台詞は……。ふはははははは!よくぞ己の終点まで来たものよ!我に殺されるか、己が我を殺すか。最終決戦と行こう!」



……違う。



「人間達よ、我が神と知って抗うというのか。挑む覚悟だけは認めるが、すぐに無謀と知るだろう」



神様はそんな言葉は使わないだろう。



「ククク、感じるぞ。我を殺したいという気持ちがな。しかし、すぐに忘れるほどの苦痛を与えてやろう」



考えれば考えるほど、難しい。



「そもそもだ。俺、世界を作っておいて姿を見せてねぇよな。因縁が薄い気がする。名前自体は街中に沢山張ったり、NPCに喋らせているが……俺の恐ろしさが伝わらない。あるいは誤解されている」



ジャニー立早。

この世界の創造主にして、ラスボスとして待ち構えている人物。

現在、ラスボスとしての台詞を考え中であった。この世界を自由にできる力を持っていながらも、自分の発言はどうやら上手くできないようだ。

色々な決めポーズとコスチュームを試しているわけだが、どうもインパクトに欠ける。



「貴様等、人間と一緒にされては困る。なぜなら我が神だからだ…………おおぉっ、カッコよくね!いいんじゃね?良くね!?痺れるの来た!!」



中二かつ1人という組み合わせは心に核融合を生み出す。

想像や妄想、実行中はテンションが高まるのだが、後になって身震いのする寒気がやってくることは多々ある。浮き沈みが激しい精神の不安定さを持っていることが分かる。

神の如き力を得たとしても、精神と支える知恵は立早でしかない。また、その二つが立早だからこそ彼が立早と名乗れると言える。



「なんだと!?神魔八英傑を倒してしまうだと!では新たな神魔八英傑を発足させるのだ!」



NPCはなにも街にいる連中だけじゃない。立早の部下となったNPCも存在しており、彼の中二センスが生み出した軍隊に入れられている。立早の命令は絶対であり、完全な服従。

神魔八英傑という恥ずかしいと思われる名称は即刻取り消すべきなのだが、立早は分かっていない。カッコイイじゃんと本心は大真面目である。

川城やX76など、立早の命を狙っている者達が次々に立早の部下を倒しており、部下の数が少なくなってきた。自分の出番もそろそろ近い。その練習中だ。



「うーん、神は部下が無くなったくらいで驚くのか?所詮、元人間が俺の部下として転生しただけのことだしな。神は低い命を大切にはせんだろ」



悩んでいる立早だが、悩んでいる内容は神様ではない。

しかし、深刻な悩みでないからこそ中で楽しくいた。この自分の思い通りに動く世界で自由にいられた。



「……やはり、発言やポーズは浮かぶが…………。イマイチ、インパクトがない。アイデアじゃない。そう俺自身の問題だ。神様とはいえ、今いる連中は俺がどれだけの神様か分かっていない。それがアイデアを腐食させている」


1人でペラペラ喋る奴だな。気持ち悪いぞ。

いや、問題はそこじゃない。お前の頭が問題なんだ。

という回答が来るのは5分後くらい。立早は今の自分に足りない物を補おうとするため、大胆でかつ未来の自分から止めるんだと叫ばれる行動に出た。



「全国放送だ」



マジか。

自信満々で作成したポエムで顔写真と本名、住所まで記載して、自ら持つ喉と天才と思いきった腐っている馬鹿頭で、言葉を生み出すというのか。それも全世界に聞こえるように…………。

度胸は凄い。だが、後悔の時間の方が長いだろう。

勢いだけでやってしまうとどーしようもない大人になってしまう。

立早は自分の手にした能力を自信と勘違いして、マイクを用意して堂々と瞬間移動で現場にやってくる。


現場というのはここの人間達の生活拠点である街だ。



「!なんだ。この気配は……」

「強イ生体反応」

「上空ね」



シィエラ、川城、X76の3人は丁度戦闘を終えて、話でもしようかという時だ。3人が上を見てフード

街には相変わらず、異世界から人間達が召喚されており、事情を掴めない者達もいる。また、立早を倒す事を諦めてこの世界で生きようとする者達もいれば、NPCもいる。

多くの人間達がいるこの場に現した立早に緊張はなく、この文面を平常心でほざいていた。



「ようこそ我の世界へ。我がお前達を呼び出し、この世界を作りし者だ」



その紹介文は極めて普通。しかし、恥ずかしい。インパクトが欠けており、何を言っている?感じが強い。


「我が」


冷静さを意識している。

立早の感性ではあるが、やはり神様や魔王、王様というのは激情家ではなく、冷静な一面が強い。にも関わらず各々が使う言葉には重みがあり、心に残るものが多い。



「名は」


立早は当たり前のようにサラッとカッコイイことを言える奴になりたい。将来、大きくなった時に発言したい言葉は、【中二病を患ったら、彼女ができるまで病院には行くな】という名言を広めたい。立早はとうに大人のような体格であるのだがな。

名言クリエイターに成りきったつもりで、特大のボイスで全員に伝えたのは



「ジャニーーーーーー!!」

「……………………」

「ターーーチーハーヤー!!!」

「……………………」



自分の名前であった。なんで名前なんだよ。

ロックンローラーと思わせるポーズに、これから俺の伝説が幕を開けるんだぜと意気込んで叫んでいる。しかし、音速のボイスに対してこの世界にいる立早にとってのお客様達と言える人間達が放ったのは、光速の総ポカーンであった。伝説開幕と同時に閉幕を教える無言、ポカーン。

だが、その場のテンションのみで現実を否定してしまう病を持っている立早。



「全ての人間達よ!神である我の僕となるがいい!神の雷の一撃で死を与え、我に服従する兵とさせよう!」



恐れろ、泣き叫べよ。と伝える恐怖の文面を恥ずかしがる事もなく、むしろ魔王口調でよく伝えている。



「すごーい。怖いわ~(棒&馬鹿にしてる)」



俳優に中二病部門神様大賞なんてあったら、ジャニー・立早が受賞もしくは入賞できる。それほどの名演技であった。立早の声量は人々にアクエリアスを欲してしまうほど、汗を湧き出させる。

子供だって総ポカーン。女にいたっては気持ち悪い、バカ~?っと伝える顔。男は顔を覆いたくなる。

運動した時に出る汗じゃない。これは冷や汗だ。

出る汗をアクエリアスで補えるが、冷え切る体にはアクエリアスは逆効果だ。



「驚いたか!!」


立早にYESと伝えたい。

お前の行動に驚いている。


「臆するだろう!」


立早にYESと伝えたい。

お前すげーよ。お前に臆する。誰にも真似できねぇよ。



「ふはははははははははは」


高笑いも勢い任せのテンション。それを聞く人々は止まらぬ冷や汗と、熱気や火照りとは違う赤い色を表情に作り出す。心を蝕む恥に襲われ、顔を赤くした。



「なんで俺達はあんなのに連れて来られたんだ」

「き、聞いているだけで恥ずかしい」

「馬鹿。あれ完全に馬鹿」



世間は冷たい。自分の思うがままに動いちゃくれない。神様と名乗っている立早の中二拗らせた頭に誰もが限界を迎え、



「なんだその恥ずかしい台詞はーーー!!」

「聞いてて恥ずかしいぞ!!」

「言っていて恥ずかしくないのか!?」

「そんな奴に俺等は呼ばれたってのかよーーー!!」

「お前なんかどーでも良いから元の世界に俺達を帰せーーー!!!」

「頭オカシイんじゃねぇかーー!!」

「鳥肌が立っただろうが!死ね、馬鹿野郎!」

「何が神様だ!?」



NPCを除く人間達、全てが立早に痛烈な罵声と批判を飛ばす。1万人以上召喚した人間達が同時に行えば、馬鹿な立早も気付ける。



「え、え、え?」



自分のテンションと、全員のテンションが違うことにようやく気付く。


「死ね、テメェ!」

「撃ち落せー!」

「地上に叩き落として袋にするぞ!」

「矢でも弾丸でも、石だって良いからとにかくあいつ目掛けて投げろ!」

「なにがジャニー・立早だ!馬鹿だろ!!」


遅れるように立早も自分の叫んでいた事に赤面し始めた。ようやく、立早に世界の時間というのが流れた。

人間達は上空にいる立早に届こうが、届かないが飛ばせる物を全て投げる。飛ばす。



「ちょ、ちょ、タンマ!タンマ!痛い痛い!」



この時の立早にとっては召喚した人間達の反応が想定外と考えていた。(なんでだよ)


飛んで来るわずかな物が立早に届いており、神様と名乗りながらも直撃していた。堪らず逃げながら、


「クソ、なんでこんな事になったんだ。俺は何を言っていたんだ」


ようやく、立早は人間達の反応が想定通りと納得。

同時にそれが悔しかった。恥ずかしいと違っているのはそれなりの気持ちが入っていただろう。

孤立感を味わい、惨めになった。

忘れていた惨めに耐えうるしかない思い出を見た。ただ求めた孤立とは違う。自分の意見と周りの意見の齟齬というのは心に溝が生まれることを知っている。

あの時は自分に力がなかった。だが、今は違う。

そして、力を振り翳された立早にとっては今の状況をどうすれば良いのか。すぐに答えを出した。



「いい加減にしろ!」



頑張って出す大きな声も、たった一人の声では地上にいる人間達の怒声に押されて届かない。

それでも良い。

立早が一発で全員の目や現状を押さえつけるのはこの方が気持ち良い。



「堕ちろ!"寒鳴來挫魔・射手"(イ・レーラ)」



雷を発生させる黒い雲は一切なかった。

人間達の目には雷が唐突に落ちたのではなく、現れたという表現を使うしかなかった。

雷速かつ、巨大な範囲と射程距離。この世界全体に雷音が響き渡る前に雷の中にいた者達の体に電流が走り、黒ずみとなって即死となった。

しかし、ただの雷を発生させたわけじゃない。立早が呼び出したのは凍える雷だった。



「な、なんだこれは!?」

「し、しっかりしろ!」



立早が作り出した雷が消えない。白く妖しく耀きながら、木のようにドッシリと雷が文字通り突き刺さったまま。人間などを閉じ込めてそこにいた。

合計で48本の雷が街全体を襲い、巻き込まれた人間は2000人を超えた。それは2000人以上が死に、立早の駒と化すNPCとなった事でもある。

立早は息を荒げにしながら、怒声と罵声が沈んだこの状況下で口にした。


「屈辱を受けた時。人は何を思う?力がなかった悔しさだろ?」


私怨を込めた口調であった。


「今、俺には力がある!やり返すだけの力がある!!」


今までの不満。理不尽。それらを振り払ったように、


「お前達の命は俺が握っている!ちょっとでも、俺を侮辱したらどうなるか分かっているな!」


例え、どんなに馬鹿だとしても。

これだけの力を持った者が現れたとしたら、馬鹿でも神になる。

生き残った多くの人間達が立早の圧倒的な力に畏怖したのは当然であった。




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