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私が頑張るとみんな死んじゃいますわ  作者: 孤独
ジャニー・立早のRPG編
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居心地の問題

「か、川城!交渉に失敗したとはどーゆうことだ!?連れて来てくれよ!」

「言葉通りだ。しかし、確かにあの男は俺より強いのは間違いないようだ」


街の酒場にてテンバーと川城は商談をしていた。しかし、商談と感じているのはテンバーだけであり、川城にとっては広嶋と出会えたことだけで十分であった。



「そんなあぁっ!俺は奴に街の拡大のためにこの街に居て欲しいと思っていたのに!」

「もうすぐ、この世界は終わるんだ。また何を考える、テンバー」

「"ハンター"のお前等はそう考えているだろうが、"アシスタント"の俺達は思っていない」


テンバーは広嶋と出会ったことはない。

川城は使い勝手が良いが、最終目標が自分とは異なることにテンバーは不満があった。その代わりに立てようとしていたのが広嶋であったが、おそらく会っても話はまとまらないだろう。川城はそこも踏まえ、無理に連れて来たりはしなかった。

あの男はおそらく自分以外の生物とは相容れない。



それより、川城の敵はテンバーである。この世界の外貨を握り締めながら彼は言った。



「俺はこの世界が気に入った。元々、神様に興味がない。頭の中は金儲けだけさ」


無理矢理連れて来られて、それを気に入って受け入れているテンバーは珍しい類だろう。しかし、彼なりの夢が偶然にもこの世界には存在した。

自分で、会社を設立して成功することだ。

世界を作りだす立早ほど壮大ではないが、細かく念入りにやりたいのなら起業するのが良い。自分のやり方で価値ある外貨を手にし、規模が小さくてもテンバー達の仕事は間違いなくこの世界に影響を与えていること。これはテンバーの思う成功だった。



「川城。あんた、サラリーマンだったろ?」

「大人になれば誰でもサラリーマンだ」

「夢のない人だな。私はごめんだったよ」

「愛はある。子供と妻にな、だから早く私はこの世界から出たい」



愛と夢、そして金と。性格と思想ではテンバーと川城はまったく逆の社会人であった。お互い、まともな世界で同じ会社にいたら喧嘩や派閥争いになりそうだと思っている。それでも今はお互いの利益だけを出し合った関係を作っている。環境とは大切である。

テンバーは握った外貨を指の力で握りつぶした。情報屋としてこの世界の情報を売っているが、得るためには多少の危険と冒険もする。川城ほどではないが、そこらへんの魔物と戦闘できる力量は持っている。



「やっぱり誰よりも金を集めて、誰よりも金を使って、さらなる金を集める」

「いつか破滅するぞ?」

「死なない生物っているのか?私はただ金を集めるだけの亡者とは違う。金そのものを玩具としている。遊ぶ気概は生きる気概だ」



テンバーはこの世界に来てから結構な頻度で笑顔をみせた。

前にいた世界では影を薄くしなければいけない諜報員であったからだ。自分がいる組織に忠誠を誓い、裏切れば組織そのものに消される。自由がなかったが、この世界まで追っ手はないようだ。だから、心の奥にあった気持ちを実行できる。



「川城、私はこの世界を潰して欲しくはない。潰れたら私の夢が潰れる。街を大きくしたいのも私の商業を発展させたいからだ」


テンバーはお金と出会い、成功によって夢を膨らませた。現時点の最終目標もいつかは通過点。



「神様が世界を造り出すなら世界を動かすのが私の夢であり目標だ。私なら誰にでも幸せの箱庭を用意してやる。神様よりも人間の気持ちは理解できる」

「一つ言えるのは、テンバーの方が神様らしいな」

「罰が下るか?」

「いや。世界が人間達を動かしているわけじゃない。人間達が世界を動かしているのだから、普通のことだ」



2人の商談と雑談が入り混じったものは終了した。

世界を出たい者、世界から出たくない者。全員の意思が通じ合い、一致することはない。



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