第3話 家を建てよう!
第1章始まりました!
かなり投稿ペースを速めてるので結構大変ですが……
ともかくこれからほっこリ度が上がっていくように頑張ります。
朝。
起きるとなぜか酒臭かった。
昨日、妖精達にもらった飲み物って酒だったんだろうか?
羊達のおかげで寒くなかったけど。
精霊達はそこら辺でふよふよ浮いている。
妖精達は全員そこら辺で眠っているのだが、起こす事にした。
朝飯の時に昨日の飲み物の事を妖精達に聞くと、飲むと踊りたくなったり楽しくなったりするのと言う。酒と知らずに飲んでいたのだと思われる。
なんかこの山には変な木が1本あって、その木の洞から酒が湧き出ているらしい。
妖精達はお祭りの時とかに飲むんだとか。
とりあえず、話と朝飯を終えてこれからどうしようかと考える事にした。
さすがにずっと木の洞で寝泊りするのはどうかと思うし、一応妖精に俺が住めそうな場所を聞く。
「お家作れば良いんだよー」
と言われた。
妖精達の家は基本的に木で造られた少しメルヘンな感じの家だ。
でも、建築技術はあるのだろうか。一応、結構しっかりはしていそうだが。
造れるなら造った方が良いだろう。ずっと妖精に甘えるわけにはいかない。
と言う訳で家造り計画は始まった。
「どんなお家が良いの?」
妖精達は全員暇なのかわらわら集まってきて聞く。
俺は木の枝を持ちながら考える。
和風な家が良いんだよな……日本の事は忘れたくないし。
まぁ、着物とか日本伝統のものって結構好きっていうのもあるけど。
完全に再現は無理だろう。
でも、せめて一部は欲しい。
俺の知識でも造れる、あったら良いなと思う部分か……
「縁側があると良いな……」
「えんがわってなにー?」
「縁側ってのはな……」
持っていた小枝でがりがりと地面にどんな物か描いていく。
「出入りが楽だし、日向ぼっこしながら昼寝も出来る。縁側は良いと思うんだ」
「おおー!」
「造る造る!!」
そんな感じで妖精達と話し合い、家の構造が決まってきた。
結構適当だし、なんか変わった家になりそうだが……
他に決めることはどこに建てるか、材料の木をどこから取ってくるか……
まず、ここら辺の土地だが。
川、妖精の住家、そして草原がある。(滝とかは少し離れているしあんまり行かないと思われるので省く)
妖精の住家から麓の方に少し行くだけで木は少なくなる。
というか果樹っぽい木が草原にぽつぽつ生えているような感じ。
木が生え具合から草原ではないけど、上では草原と一まとめにしている。
果樹っぽい木がぽつぽつと生えている所から川の方へ行くと羊達のいた草原に出る。
……うーん、やっぱりこれだと分かり辛いな。
太陽っぽい奴を元に方角を書くと……
麓の方が東、山頂の方が西、川は北って感じか?
簡単に書くと……妖精の住家から東に果樹の木、南東(正確には南南東くらい)に草原。ついでに北西には湖があるとか。
建てる場所としては妖精達の住家の南東にある果樹と草原の中間になった。
妖精達は村に住めば良いのにと言ったけど俺が暮らせる家となるとでかくなるし、森の中では造りづらいだろうという事で納得してもらった。
材料の木材は草原と川の間に生えている木を使う事になった。
細かい金属の部品とかは鍛冶ができる妖精が作るそうだ。
決める事を決めた後、家造りは始まった。
最初に材料となる木材を切りに行くのだが……どうやって切るんだ?
妖精に聞いてみると。
「助っ人を呼んだから大丈夫なの」
助っ人って誰だ?でかい妖精でもいるのか?
そう思っていると出てきたのは凶暴そうな狼だった。
額に雷のように曲がった刃のような角が生えて、尻尾も同じように曲がったでかい刃みたいになっていた。
おいおいこれって妖精食べられるんじゃないのか、と思ったが大丈夫だった様だ。
なんか狼、シェヴェルフと言う種族らしいが、凶暴そうな外見だけど意外に優しいんだとか。
ありがとー!ヴェルー!などと妖精にお礼を言われてガウと鳴いてそっぽ向いてる。
べ、別にお前らのためにやってるんじゃねーよ。なんて声が聞こえそうな感じのする狼だ。ツンデレ?……とりあえず俺もお礼を言った。
それからシェヴェルフは鋭い尻尾で次々と木を切っていった。
すげー切れ味だ。怖いな。
その後も木の加工まで手伝ってくれた。
お礼に妖精達が狩ったという魔物の肉をあげた。
……妖精、ホントに狩りができたんだな。
それで、ここまでの作業なんだが……なんと昼前には終わってしまった。
異様なスピードだ。
何故こんなに早く出来たか……
まず、木を切り倒す作業がシェヴェルフのおかげで数分もかからなかった。
それから木を加工……というか木の皮の部分を切って必要な大きさにするだけだった。
なんだっけ?木に穴あけてはめ込んだりして釘を使わない建築技術があった気がするけど、そんな事しなくてもできるよと妖精達は言う。
なんでも木を成長させる魔法でくっつけてしまうんだとか。
それと、妖精達は魔法が使えたから早くなったのもある。
そんなに強い魔法は使えないらしいが、強い魔法を使いたい時は精霊に助けてもらうんだと。
今回は風の精霊の力を借りて木を加工した。
とりあえずこれで木の用意はできたから組み立てに入るようだ。
でもその前に昼飯だ。
一旦妖精の住家に帰ってから皆で昼飯を食べるのだが……
「……」
なんだろう?うさぎがいる。
全てが何故か鎚……柄がやたら長く頭部は小さめのを手にしていた。
何故鎚?杵じゃなくて?
妖精によると、ラーフィスと言う種族らしい。大きさは妖精より頭一つ分大きい。
額にひし形の赤い宝石のような物が付いているのが特徴。
全身真っ白で黒い目なのだが、一匹だけ真っ黒な奴がいる。
前足の先だけ白く、額の宝石は白。後は目も体も黒い。
良く分からんがプレッシャーみたいな物を感じるのは何故だろう……
一匹だけやたら強そうだ……
妙な緊張感に包まれた(俺だけ)昼飯後、家を組み立てに行こうとしたら服を誰かに引っ張られた。
振り返ると黒いうさぎがいた。
「……」
『……』
うさぎは少し離れると鎚を持ってない方の手を仰向けにして来いよって感じで合図する。
何か動作が男らしい。
そう思ったら何故か睨まれた。めっさ怖い目だな……うさぎなのに。
ってあれ?
近くの妖精に小声で聞いてみる。
「あの黒いラーフィスは女の子なのか?」
「うん、そうだよー」
あれ、女の子だったのか……
「なんていうか姉御って感じだな」
「あねごって何?」
「かっこよくて頼れる女性の事だ」
すると妖精達はおおーって言ってから、黒いラーフィスをあねごーと呼び始めた。
妖精達……すげーな。
妖精達は怒られるかと思いきや黒いラーフィスは群がる妖精達の頭を撫でてる。
妖精達を撫でるうさぎ……かわいいな。
一通り撫でた後、視線を俺にやって、来いと呼ぶ。
喋れなくてもかなり意思が伝わる仕草だな。
家の組み立ては一部の妖精達と助っ人の魔物、2匹のラーフィスがやってくれるらしく、俺は残ったラーフィス達と二人の妖精についてく事になった。
住家の端の方まで歩くと変わった建物があった。
妖精の家は基本的に木で造られているのだが、ここは石で造られている。
煙突からはもくもくと煙が出ている。
俺でも中に入れるくらいの大きさがある所だった。
常に屈んでないといけないが……
家に入ると暑かった。
轟々と燃え盛る炎を見る。
……鍛冶場だ。
大きい炉に鉄を叩く金床、ふいごや、石でできた長方形の容器には水が溜まっている。
姉御こと黒いラーフィスはそこで見てなと、視線を送ってきてから一声鳴く。
開始の合図らしい。
妖精達はでっかい手袋はめているけど姉御達はそのまま作業を始める。
火花がたまに毛に飛んでいるが燃える気配がない。
ラーフィスの毛は火に強いらしい。
後、なんというか鉄叩く時のラーフィスの姿を見ているとまるで餅付きをしているようだ……
細かい部品に対してかなり大振りな動作なのだが不思議と部品の形になっているのがすごい。
結構夢中になって見てしまった。
作業終了後。
一部できた家の材料をラーフィスの一匹が運んでいたが、俺は作業を夢中で見ていて気が付かなかった。
最後、姉御にじっと見られていたのだが、妖精曰く。
「あねごはねー、鍛冶のうまい人を見つけるのが得意なの。良かったね、鍛冶を教えてもらえるよー」
だそうだ。
他にも他の妖精から布作って見ないー?とか、壷作ろーとか、色々物作りを誘われている。
自給自足の生活法を学ぶ良い機会なのかもしれない。
物作りは昔から嫌いじゃないし、色々とやってみよう。
そう考えながら家造りの手伝いに行ったのだが……
ほとんど出来ていた。
俺は唖然としながら家を見上げた。
和と洋が入り混じった不思議な家だ。
草原と果樹側に縁側があり、麓側に玄関がある。頂上側にはお勝手がある。
呆然と見ている俺に気付いた妖精が近づいてくる。
「あ、てっしょー!後もう少しでできるのー!あれ?それなに?」
妖精が俺の後ろにいた姉御の持っている物を見て不思議そうにしている。
姉御は俺の肩にぽんっと手を置いて振り向かせて持っているものを渡す。
渡されたのはでっかい籠。
割と重い。良く持てたな姉御……
中を見ると鍋におたま、フライパン、包丁、木のまな板などの料理器具。
昨日、妖精達が料理を知らないと知って、教えたものだ。
料理器具と食材があれば何か作れるんだがと言って、とりあえずせがまれたので器具の形とかを教えたのだ。
てか仕事速いな、妖精にラーフィス達……
なんか驚きを通り越して妙に落ち着いてきた。
妖精に家の中に入って良いか聞いて入る。
もちろん妖精にはこの家では靴を脱ぐように言っている。ラーフィス達、魔物には足を拭いてもらおう。
大体の家の見取り図は妖精達が考えてしまったのだが、どんなのかは分かっている。
一階はぐるりと一周回れる廊下があり廊下の内側、家の中央は部屋が1つ。
周りは障子に似た戸で中に入ると巨大な木のテーブルと椅子が沢山あると言う不思議設定。周りの障子以外に仕切りなんてない。正真正銘一部屋。
後は玄関の方には物置などの小部屋が廊下の外側にある。
二階はお勝手の方に階段があり、部屋が5つある。頂上側を上としてT型の廊下。ちなみに戸はふすまに似たもの。
廊下を進んで一番奥にある部屋が俺の部屋らしいが、妖精達によってやたらでかく造られている。
大体の見取り図はこんな感じ。
さっと家の中を見て回ってお勝手のある所に行くと、何だか少し変わってはいるが料理場があった。
それなりに大きい料理場だ。
石のかまどや流しなどがある。水道なんてないから水瓶が置いてある。
準備の良い事に水瓶は満タンで、薪も沢山ある。
これで食材と調味料があれば完璧だが……
と思って料理場を見ていると妖精がでかい籠を2個持ってやってきた。
「てっしょー!家が出来たからお祝いしよー!皆の分の食べ物持ってきたの」
「ねぇ、てっしょー。てっしょーの言ってたのってこれの事?」
などなどそれぞれが話す。
「ちょっと待て、お前ら。とりあえず食材見せてくれ」
籠を置いてもらって食材を見る。
魚、魔物の肉、野草と果物や木の実が入っていた。
あと妙な白い石が……
「これなんだ?」
「それしょっぱい石なの。食べても大丈夫だけどしょっぱくて食べられないの」
岩塩みたいなものか?なにやら他の鉱石に混じって採掘されるそうだ。
他にも知らない野草について教えてもらった。
「よし、これなら料理が出来そうだ」
「りょうり?おいしいって言ってたの?食べたい!」
「ねーねー、りょうり見てもいいー?」
「良いぞ。でも、料理中のものに触れるなよ?危ないからな」
妖精達ははーいと返事をしてじーっと見てくる。
正直少しやり辛いが、家を造って貰ったんだ。せめておいしい料理くらい振舞わないとな。
今こそ、主夫と呼ばれた料理の腕の見せ所だ!!
それから、初めての食材にやや苦戦しつつも何とか人数分の料理を作り終えたがその頃には家も完成して暗くなっていた。
あ、ちなみに明かりはどうなっているかと言うと……天井にランプ草を加工した物をつけている。
ランプ草はすずらんのような形の草で光の魔力を集める習性があり、集めた魔力で発光する。
大きさは15cmから50cmのものまであり、特殊な加工をする事で枯らさずに花を取る事が出来る。
妖精達はこれを普段明かりに使って生活している。
家は夕方には完成していて、その頃から匂いに釣られてきた魔物も含めた妖精達が、じーっと料理を見てくるのだ。
出来た料理をつまみ食いしようとする奴は鉄拳を喰らわせた。
ちなみに皿は木の実を入れる木の器などを家から持参させたり、いつの間にか新しいのを作ってたりしていた。
最後の一品が出来たら皆で1階の大広間……にある巨大テーブルに運んでいく。
運び終えてから妖精達は椅子に座る。丸太に小さな背もたれの付いた椅子で妖精の身長くらいあるが、妖精は軽々飛び乗ったりして座っている。
ラーフィスなどの座れる魔物は椅子に妖精と同じ椅子に座り、俺は……
「てっしょーの椅子はこれね」
妖精が椅子を引く。
俺だけ丸太椅子ではなく普通の背もたれ付きの椅子だ。何故?
それから、いつの間にか作ったらしい木製のナイフとフォークが置かれて皆が料理をそれぞれ食べ始めようとした時、俺は元日本人としての習慣から一言。
「頂きます」
「てっしょー、いただきますってなにー?」
昨日も言っていたのだが、騒ぎでかき消されたらしい。
「そうだな……頂きますってのは、食物への感謝の言葉かな。自分達の糧となってくれる命にありがとうって言ってるのさ」
「それボクもやるー!」
「わたしもー!」
妖精達が皆そろっていただきます!といい始める。
なんだか微笑ましいな。
それから妖精達と魔物達は、初めて食べる料理に感動したりしながら食事をした。
妖精や魔物の喜びようを見てなんだか自然に笑顔になる。
こんなに喜んでもらえるとは思わなかった。
また、こんな風に集まった時に料理を作ろうかなと思う。
食べ終わって片づけが済んだ後、魔物達は帰り、妖精は俺の部屋に集まって、でっかい毛布に包まって皆で寝た。
何だか嬉しくて暖かかった。
魔物達は以外に感情豊か。表現仕切れてない感じですが……
ツンデレ狼さんと姉御兎さん登場でした。
姉御兎は一応外見のモデルがいたり……
かわいい生物を増やしていきたいです。
では、誤字脱字、感想アドバイス等お待ちしております。