第30話 温かい手
姉御の可愛い姿を想像したら書き上げてた。
でも短いです。具体的に言えば26話の雨の日の一日と同じくらい。
ちょっとだけ何時もと違う感じの文章だと思います。
では、最新話どうぞ。
今日は雲ひとつ無い気持ちの良い晴れの日。
何時ものように俺の家の周りには妖精達の声が響く。
キャーキャーと楽しそうな声をあげながら駆け回る妖精達を縁側から見守る。
いつも通りの一日だ。
「あー、日差しが温かい」
少しだけ涼しくなった風が優しく吹く中、温かい日光を浴びるのはとても気持ち良い。
このまま昼寝したくなるくらいだ。
そう思っていると見覚えのある黒いのがやって来た。
さっと片手を上げて挨拶する鋭い目のラーフィス。
姉御だ。
魔物の中で唯一妖精達と一緒の村で暮らしている種族、ラーフィスは基本的に面倒見が良い。
だがその中でも姉御は特に面倒見が良く、妖精以外の他の魔物達からも慕われている。
女の子だが、仕草が漢らしくとても頼れる存在だ。
姉御はこちらに歩いてきて隣に座る。
どうやら今日は妖精達の様子を見に来たようだ。
妖精達はとても頑丈で怪我をする事自体が少ないのだが、それでも危なっかしい行動に出る事が多いので誰か一人は見ていないと不安になる。
妖精達の村ではラーフィス達がいるからいいが、俺の家に来ている場合は俺か姉御が見ている。
「ん? どうした?」
服を引っ張られたので姉御を見ると縁側をぽんぽんと叩いている。
「寝てて良いって? 姉御にはお見通しか」
喋れなくとも仕草で大体言いたい事が分かるようになったが、姉御もこちらを察してくれる。というか見抜く。
今回は昼寝したいと思っていた事が見抜かれていたようだ。
「じゃ、ちょっとだけ妖精達の事を頼む」
頷く姉御を見てから縁側に寝転がる。
そのまま目を閉じるとすぐに眠りに落ちた。
◆ ◇ ◆
「……っしょー」
声がする。
「てっしょー」
「……ん?」
寝ぼけ眼をこすりながら起きると目の前に妖精がいた。
「てっしょー! 綺麗な石見つけた!」
「きらきらー!」
妖精達は綺麗な青い石を持っていた。
水晶のような石だが……宝石じゃないよな?
まあ、宝石だろうが石だろうがどっちでもいいけれど。
「確かに綺麗な石だな」
「てっしょーにあげる!」
「そっか、ありがとな。玄関にでも飾るか」
「飾ってくるー!」
そう言って家の中に突入する妖精達。
「あ、こら! 靴脱いでから入りなさい!」
追っかけてちゃんと靴を脱がせ、汚れた床を掃除する。
妖精達は思いついたら即行動で周りが見えなくなることがある。
若干不安で目を離せないことの一つだ。
心配事が多いような気もするが、あいつらは少し心配しすぎなくらいが丁度良いとも思う。
そう思いつつ妖精達と先ほどの石を玄関に飾る。
といっても棚に置くだけだが。
それから妖精達は遊ぶ場所を庭から家の中に変更したらしい。
部屋の中を走り回る。
それも一階と二階にそれぞれ別れたので一階を姉御に頼んで二階に行く。
一階と比べて沢山部屋のある二階では妖精達が妖精サイズの枕を投げ合って遊んでいた。
お泊まり会の次の日に教えたのがこの枕投げだ。
現在、二階の全部屋を使って枕投げをしている妖精達。
扉を開け放ち、駆け回りながら枕を投げる。
枕投げを教えた後、妖精達は枕投げ用の枕を作ったので枕の数は多い。
床には大量の枕がそこいらに散らばっている。
……こりゃ、片付けるのが大変そうだ。
しばらく枕の当たらない安全地帯から見守る事に専念した。
夕方。
「はい、そこまで! 片付け始めるぞ!」
「はーい!」
枕を片付け、それが終わったら解散。
「じゃあねー」
そう言って帰る妖精達を見送ってから縁側に座る。
すると後ろから姉御が来て縁側を飛び降りた。
「今日もありがとな、姉御。助かった」
お礼を言うと姉御はじっとこちらを見た。
少ししてから視線を外してさっと地面を指した。
「どうした?」
縁側から立って姉御をみると相変わらず地面を指したまま。
「しゃがめって事か?」
頷く姉御。
どうしたのだろうか?
とりあえず姉御の言うとおりしゃがんでみる。
すると、姉御は背伸びしてぽんっと俺の頭の上に手を置いた。
そして撫でた。
予想外の行動に俺は少し固まった。
少しして満足したらしい姉御はそのまま帰っていった。
立ち上がって姉御が見えなくなるまで見送る。
撫でられた頭を掻きながら放心する。
「お疲れ様、って事なのか……?」
多分、そういうことなのだろう。
そう思い、家の中に入る。
ちょっとだけ撫でられた所があったかい気がした。
想像してみてください。
しゃがませた相手に精一杯背伸びして頭を撫でる姉御の姿を!!
顎乗せペタン(前話参照)より破壊力はないかもしれませんがグッと来る何かがあると思います。




