第27話 ラスチェストに行こう! 前編
ほっこり、今まで一番少ない回というかない回。
不思議な新しい町が出てきます。
すんません、最後の方は何故かホラーな終わり方してます。……どうして、こうなったのかな?ってな最新話、どうぞ。
アメルハーナの海で遊んでから少し肌寒くなってきた頃。
もうそろそろ冬物の服を作ろうかと思う季節。
なんだかんだでずっと忘れていた色んな野菜や果物がなる妖精達が生やした不思議な樹について調べる事にした。
妖精達を呼んで不思議な樹と周辺の植物について調べて少ししてからイシュナがやってきた。
「ちょっと前から思っていたんだが、あれ、なんだ?」
「分からん。だが、ちょうどいい所に来たな。手伝っていけ」
調べると言っても食べられるか食べられないかぐらいしか調べられないし、何故かその見分けがつくらしい妖精達に食べられる物と食べられない物を分けてもらっている。
この仕分け作業はこの樹が生えた直後くらいに少しだけしていたけど、この樹……日に日に新種の野菜や果物が出来てるっぽいんだよ。
昨日まで何もなかったところに見知らぬ葉が付いていたり実がなっていたり……
で、俺は一部の妖精と収穫作業をしている所だ。
イシュナにも収穫を手伝ってもらう。
「おいおい、拒否権はないのか?」
「ない。だが、自分から積極的に手伝ってくれるなら昼飯と菓子を作ってやる」
「拒否するつもりは最初からねぇ……全力で手伝う!」
食べ物に釣られるとは……子供か?半分冗談だったんだが。
食い意地張った奴だったんだな。
そう思いつつも収穫作業を続けた。
数時間後。
「たいりょー!」
「たくさん取れたー!」
「おいしい物いっぱいー!」
収穫された野菜や果物の山の周りではしゃぐ妖精達。
嬉しい事に収穫された物の大半は食べられる物だった。
食べられなくとも何かに使えそうだと妖精達は言っていたが、どういう風に使えば言いか分からない。
「なあ、それなんだが。森の町に持って行ったらどうだ?」
「森の町?」
収穫物を見ていたイシュナがそう提案してきた。
森の町?アメルハーナは海の町で森の町って感じじゃないから……え?アメルハーナ以外にも町があるのか!?
「森の町は植物の町とも言われているラスチェストって町だ。そこなら使い道の分からん植物を調べてくれる奴等が大量にいるしな」
そんな事より!
「なあ!そこはどんな食べ物が有名な町なんだ!!」
引くな!さっさと答えろ!
「あ、アメルハーナよりは有名な食べ物が無いが……野菜や果物みたいな植物関係なら良いのがあると思うぜ……」
不思議な樹のおかげで野菜や果物に困らなくなったものの未知なる食材はぜひ試したい!
「よし、行くぞ!」
「今からか!?」
「もちろんだ!!」
何いってんだ!すぐ行くに決まっているだろ!!
「あー、うん。わーったよ。行くよ。行けばいいんだろ?どうせ荷物持てとか言うんだろ?」
「よく分かってるな。早速用意開始だ!」
諦め顔のイシュナに収穫した物をまとめてもらって、俺は家へと準備に向かった。
そして数分後。
準備を終えた俺は町に行く時用に作った大き目の籠に野菜、果物を丁寧に積み込み、じゃんけんで選ばれた妖精を一人乗せる。
「前々から思ってたけど、お前って結構馬鹿力だよな……」
イシュナが何か言っているが気にしない。
「さあ!行くぞ!」
「はいはい」
ばさりと翼を広げて飛ぶ。
イシュナに教えてもらった方向へとまっすぐ向かうこと1時間くらい。
イシュナが言った町の目印である煙はすぐにわかった。
森の中から黙々と大量の煙が出ていたのだ。
一瞬火事かと思ってしまったくらい白や灰色の煙がもくもくと出ている。
町の近くに降り立つ。
「何故ばてない!?」
後ろからそんな声が聞こえるけど未知なる町と食材を前にしたら疲れなぞ吹き飛ぶわっ!!
少し歩くと上からじゃ煙で見えなかった町が見えてきた。
さあっと赤や黄色に色付いた木の葉が風で舞う。
「ここの植物は一年中紅葉してるんだ」
イシュナがそう説明する。
鮮やかな木の葉舞う町はなんとも不思議な町だった。
木やきのこを刳り貫いて作ったかのような家が所狭しと立ち並んでいる。
きのこの家というとメルヘンな感じがすると思うけれど、ここは違う。
奇妙なくすんだ肌色の変わった形のきのこで、必ず大小様々な煙突のようなものが生えている。
その煙突のような所から煙が出ているのだ。
上から見えた煙はこれが原因だろう。
「このきのこはヤケムダケっつってな、常に煙を出すきのこなんだ。それにヤケムダケの中は夏でも冬でも気温が変わらない。見た目はあれだが、結構快適なんだぜ」
へー、と聞きながら上を向くと、でっかい木の葉に乗って移動している人達がいた。
「ありゃ、フロームの葉って言ってな。あの葉自体に風の力が篭っているんだ。乗って念じるだけで移動できるここの名物の一つだな」
おお、それは面白そうだ。
自分で飛べるけど、物を使って飛ぶのはまた別だよな。
「さ、調べてもらう奴を探してくれる奴のとこ行くぞ」
上を見上げてフロームの葉を見ているとそう言ってイシュナが町へと向かうように促す。
「……」
調べてもらう人を探してくれる人?
「調べてもらう人の所に直接行かないのか?」
「俺が学者とかと知り合いだとでも思ったのか?ここには偶々知り合いの神族がいてな。そいつに学者を紹介してもらうつもりだ」
学者……そこまで詳しく調べてもらうつもりはないんだが……
でも、イシュナ以外の神族か……少し楽しみかもしれない。
「ほれ、確かそこの家にいるはずだ」
イシュナが指差した先にはちょっと小さめのヤケムダケの家が建っていた。
このヤケムダケだけちょっとメルヘンに見えるのはなんでだろうか?
イシュナが家のドアをノックすると女性の声が返ってきた。
籠はドアに入らないので妖精に番をしてもらって外に置く。
「ちょっとだけ見張っていてくれ」
「りょうかいなのー」
「いえっさー!」
……うん、妖精にあんまり変な事を教えるのは止めよう。
つい、せがまれて色々教えちゃうけど、自重しなければ……
妖精達に変な言葉の癖が付いたら大変だ。
そう悩みつつ、家に入った。
適度に整理整頓され、清潔感に溢れた室内。
所々、可愛らしい彫刻の様な物が置かれていたり小物が置かれていたり。
先ほどの声の主は可愛い系の女性と言うよりは綺麗系の女性の声だったんだけど……意外に可愛いもの好きな人なのかもしれない。
イシュナに案内されて奥の部屋に行くとそこには美人がいた。
艶やかな水色の神は耳の後ろ辺りから両方三つ編みになっていて、それが円を描くようにして一つに結ばれその先は流すという不思議な髪型で、真っ白なヴェールをしている。
服は白い……一番近いのはワンピースだろうか?に似た服と金属の綺麗な飾りが付いた長方形の布がぐるっと背中を回っていてふわふわと浮いている。
後は腕輪や首飾り、腰などにアクセサリーを付けている。
耳には雫型の長く青いイヤリングを付けた髪より少し濃い水色の目をした女性。
「こいつが、俺と同じ神族のアウラだ」
「もうちょっとちゃんと紹介できないの?イシュナ。はじめまして、てっしょーちゃん」
色々と突っ込みたいけど……何故、名前を知っているのか。
「以前からイシュナに話を聞いていたのよ。料理がとっても上手だって」
「そ、そんな……普通ですよ、普通」
褒められて少し顔が赤くなる。
だって、相手は見た事ないような美人。そんな人に褒められたんだ。恥ずかしさもあって顔が赤くなる。
イシュナとはまるで違う神秘的な雰囲気で女神と言われても結構すんなり信じられそうな外見の人だ。
「おい、今、失礼な事考えなかったか?」
「イシュナとは全然同属に見えないくらいアウラさんは神秘的な感じだと思った」
ついうっかり感想が口から出てしまった。
「喧嘩売ってんのかてめぇ!?」
「あらあら、褒められたのかしら?」
それぞれの反応の二人。
「あ、それとアウラさん。てっしょーちゃんは止めてください。さすがに恥ずかしいです」
「敬語は使わなくても良いのよ?てっしょーちゃんと呼ぶのが駄目なら……てっちゃんでどうかしら?」
なんだか微妙な気分になる呼び名だ……それならてっしょーちゃんの方がましかもしれない。
「てっしょーちゃんで良いです……」
そう言うとアウラさんは嬉しそうな笑顔になった。
思わず見とれてしまう笑顔だなと思った時、イシュナが肩を叩いた。
「あー……てっしょー。一応言っておくが気をつけろよ?アウラの外見はああだが、中身は……」
「イシュナ?少し、お話をしましょうか?」
「うお!?何時の間に背後に!?っておい!引き摺るな!うわあああああああ!!」
一瞬でイシュナの後ろに回ったアウラさんは片腕で男でもわりと大きい方のイシュナを引き摺ってどこかへ行ってしまった。
少しした後、イシュナの悲鳴が聞こえてきたけどきっと気のせいだ。
戻ってきたアウラさんの頬に赤い液体が付いていたのもきっと気のせい。
「さあ、頼み事があるんでしょう?どうして私を訪ねてきたのかしら?」
そうにっこり笑うアウラさん。
……後ろに見えた赤い液体が付いた鉈のようなものもきっと気のせいだ。
気のせい、なんだ……
アウラさんはずっと出そうと思いつつ出すタイミングがつかめなかったキャラ。キャラデザもイシュナと同じ時に作ったのに……
……それにこんな終わり方にするつもりはなかったのですが、書いている間になってしまいました。
血の付いた鉈と言うと嘘だっ!!というとある人を思い出しますね。
……なんでそんな人連想するものだしたんだか。自分でもわかりません。
ともかく、次の投稿はお正月か1月後半ですかね……
お正月に特別外伝書くやもしれません。
他の作品を書く可能性もありますが限りなく低いです。
では、長くなりましたのでこの辺で。