第19話 お土産で宴会しよう!
久しぶりのランキング入りが嬉しくて投稿。
あ、挿絵コーナーできました。
妖精さんのらくがきが見たい!と言う方は覗いていってみてください。
では、てっしょーさんの酔っ払う最新話どうぞ。
姉御は肩車状態で、妖精達は籠の中に入れて運びながら帰っている最中、ようやく家が見えてきたと思ったら、何故か家の周りに魔物達が集っていた。
とりあえず、俺はイシュナ達に一言言ってから先に家へとスピードを上げて行く。
「おーい、何俺の家に集ってんだ?」
そう声をかけると、てんでに話しかけてきた。
何言ってるか分からん。
「通訳を頼む」
「わかったー」
妖精達に通訳を頼む。(といっても妖精達は魔物の言葉が分かるのではなく雰囲気やらなにやらで言いたい事が分かるんだとか)
「えーとねー」
妖精の言葉をさらに脳内翻訳する。
二重翻訳作業だ。
で、結果の翻訳内容。
『町に行ってきたんだろ?お土産お土産ー』
『土産で宴会しようぜ宴会!』
『ヒャッハー、宴会だー!!』
などと言うことらしい。
なんか変なものも混じっているが気にしない。
というかこいつらどんだけ宴会好きなんだ。
俺はなんだか疲れたよ。
ん?自分達だけ楽しむだなんてずるいだ?
「未知の食材に囲まれて沢山料理作って楽しかったが、そのせいで色々ありすぎて今日は疲れてんだよ。やるんなら明日にしてくれ……」
「やだー、お土産あるー、宴会やろーだってー」
「てめぇら……」
子供か!お前ら子供か!
なんだか宴会やるまで帰らないみたいな事言っているみたいだしどうするか……
そう悩んでいると追いついたイシュナ達がこちらに下りて来た。
「おーい、何やってんだ?」
イシュナが聞き、それに妖精が答える。
「へー、宴会ね。いいじゃねぇかやろうぜ宴会」
お前も宴会賛成派か!!
「宴会っすか?なんだかおもしろそうっすね!俺、てっしょーさんの料理食べた事ないし作って欲しいっす」
「同意」
お前らもかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
「ねぇ、てっしょー。てっしょーは宴会やりたくないの?」
妖精達がそう言ってじーっと見上げてくる。
……っく!やるしかないのか……俺に逃げ道はなかったのか!
「だああああ!もう!やってやんよ宴会!!てめぇら!準備を始めろ!!」
「『おおおおおおおおおおお!!!』」
「ただし!土産もあるし俺が作るのは酒のつまみぐらいだからな!それ以上は作らん!」
それから宴会の準備は始まった。
―――
いつもの広場。
魔物達は手馴れた手つきで宴会の準備を終わらせていた。
「ほえー、独特な雰囲気っすねー」
「綺麗」
レッジ、エプラ兄妹は手伝いをしつつ宴会会場を見て周り、その様子に驚いている。
「昨日は祭りなのにあんまし酒が飲めなかったから、今日はとことん飲むぜ!!」
そう喜ぶイシュナ。
それぞれが宴会を楽しむ準備を終え、後はてっしょーを待つのみであった。
其処に妖精がぽてぽてと走ってきて。
「おつまみできたのー。運ぶの手伝ってー」
その言葉と同時にイシュナ+その他の酒好き魔物達がすごい勢いでてっしょーの家へと向かった。
―――
数分後。
「あー、じゃあ、これより宴会を開始する。後は好き勝手……いや、ちゃんと最低限節度を持って飲め。以上!」
俺の言葉を合図に宴会は始まった。
今回の宴会はいつもより料理が少なく、代わりに珍しい町で手に入れた食材を使ったつまみと酒が出され、さらに森で作られた酒も持ち込まれたので酒中心の宴会だ。
だが、魔物達は酒を俺に近づかせようとはしない。
どうしたんだ? まあ、酒が飲みたいわけじゃないが遠ざける理由が分からん。
ぼんやりそう思いながらつまみをもそもそ食べていると姉御の打楽器演奏が始まった。
姉御の打楽器演奏はかなり人気が高く、見るのも聞くのも楽しい。
あの短い手でどうやってあんな長い鎚をくるくると踊るように扱えるのか……
明らかにそれは無理だろみたいな動かし方もするし……謎だ。
「あれどうなってんのか、いつも気になるんだよなー」
「ああ、そうだな」
いつの間にか隣にイシュナが来ていて、同じ事を疑問に思っていたらしい。
俺が答えたらイシュナは俺の方を見た。
「って、なんだよお前。酒飲んでねぇのか?せっかくいい酒が集ってんのに」
「なんでか魔物達が酒を遠ざけててな。まあ、元から飲む気はないが」
「なんだよそりゃ、ん?もしかして酒がだめなのか?」
「いや、普通だと思うが……」
いつも最後は寝ちまうんだよな……
「じゃあ、飲めよ!ほら!アメルハーナで人気のフロセ酒(特)だ!」
「な、なんだ(特)って……がっ!?」
無理やりイシュナに酒を飲まされる。
あ、あれ……いし、き……が……
酒紹介。
フロセ酒(特)
アメルハーナで好まれる酒であるフロセ酒。
主に魚などのヒレに近い部分を漬け込んで作られる酒でアルコール度数はそんなに高くはない。(普通のヒレ酒とはかなり違います)
だが、今回のフロセ酒(特)はアルコール度数が普通のフロセ酒より異様に高い。(大体ウィスキーのアルコール度数の高い奴くらい)
なお、このフロセ酒(特)は一部の酒に強い酒好き(イシュナなど)が職人に頼んで造ってもらうもので、あまり市販に売り出されていない。
今回は料理人がふざけてお土産の中に入れたものをイシュナが発見して持ち出し、てっしょーに飲ませた。
フロセ酒(特)はちびちび飲む事をおすすめします。
というか酒一気飲みはだめ、絶対。
決して無理やり人に飲ませたり一気を勧めてはいけません。
解説終了。
イシュナに無理やりフロセ酒(特)を飲まされたてっしょーは目をとろんとさせた。
周囲の魔物はそれを見た途端ざざっと後ずさる。
イシュナは一瞬で酔っ払ったてっしょーに爆笑していて、魔物達の様子に気付いていない。
てっしょーの周りに風が不自然に吹き始めた。
ゆらりと立ち上がったてっしょーが腰に提げてあった鎚を持ったと思った瞬間、イシュナが吹き飛んだ。
魔物達がそれを見て逃げようとするが風で逃げられない。
「ったくー、むりやりさけのませんなよなー」
完全に酔っ払い目をとろんとさせたてっしょーが不機嫌そうに呟く。
「あー……でもふわふわするー。いいきぶんだー……」
そう言いながら鎚を持ってふらふらと魔物達に近寄る。
魔物達は完全に青ざめて怯えている。
レッジ、エプラ兄妹はイシュナが吹き飛ばされてから何が起きたのか分からず、おろおろとしていて、イシュナは完全に気絶。
妖精達は演奏をやめた姉御を見てからてっしょーに気付きぽてぽてと近寄り何を思ったか。
「てっしょー、歌ってー」
「んー?いまは、きぶんがいいからいいぞー」
妖精達を見てから歌い始める。
酔ったてっしょーから漏れ出た力が歌に加わり、吹き荒れる風が歌を運ぶ。
その場にいた者は一瞬にして歌に引き込まれた。
先ほどまで青ざめていた魔物も一部は目をとろんとさせて歌を聞き、レッジ、エプラ兄妹は完全に聞き惚れていた。
妖精達は嬉しそうに歌を聞き、姉御は歌に合わせて打楽器を演奏し始めた。
いつの間にか精霊達はてっしょーの周りに集い、踊り始める。
そこだけまるで別の世界のような不思議な空間ができあがった。
精霊が舞い、神がかった打楽器の音と天上の歌が響き渡る。
後日その場にいた者は、その光景をまるで楽園のようだと語った。
そして歌が終わった頃には全員、ぐっすり眠っていててっしょーも歌い終わった途端にばたりと倒れ、寝てしまった。
そんな中、一人だけ何故か起きていた姉御は、やれやれと言った感じでどこからか毛布を取ってきて全員に毛布をかけ、最後にてっしょーの所に行き、同じ様に毛布をかけてからぽんぽんと優しく頭を叩いた。
裏話。
てっしょーが歌っていた際、漏れ出た歌に加わった力は偶然治癒の効果を発揮し、気絶していたイシュナの怪我を治し、吹き荒れる風は歌をアメルハーナまで運んだ事を誰も知らない。(風の中には精霊も含まれており、精霊が町まで歌を運んだ)
この日、アメルハーナではどこからともなく聞こえてくる謎の歌で大騒ぎとなった。
もちろんその事をてっしょー達は知らない。
知っているのは精霊だけ――
視点切り替えのやり方を変更してみました。
酒については適当です。あまり酒を知らんのです。
ちなみにてっしょーさんは状況次第で様々な酔い方をします。
今回はあまり酔ってなかった様子。ほろ酔いぐらいですかね?
なんか他に書く事があった気がしますがこの辺で。