クリスマス外伝 贈り物は……
※この話は8話より大分後の話ですので外伝と言う事にしました。
冬みたいに寒くなり、雪が降る季節になった。
辺りは白銀の世界だった。
「白いなー」
「白いねー」
家の縁側で俺は妖精達と雪を見ていた。
ちなみにシーホルの毛とひつじわた草で作った服は、冬は暖かく、夏は涼しい優れもの。
今は長袖の上着を羽織って、膝には妖精達を乗せているから暖かい。
妖精達は頭の上や周りにも群がっているのも寒くない原因だ。
「雪って言うとクリスマスを思い出すなー」
「くりすますって何ー?」
最近は適当に集まって雪かきしたり、雑談をしたりしている。
妖精達に雪遊びを教えて眺めたりもしているが。
「クリスマスって言うのはな、簡単に言えば冬にやるお祭りだ。イルミネーションとかで飾ったり、クリスマスツリーを作ったりするんだ」
「いるみねーしょん?くりすますつりー?」
「イルミネーションは、色とりどりの電灯をつけて飾る事だが、ここには電灯なんて無いからランプ草に色を塗って飾る事になるかな。クリスマスツリーは、そうだな……一つの木に色んな飾りを付けて木の天辺に星の飾りをつけた木の事だ」
基本的にはうろ覚えの事を適当に教える。
それでもわりと妖精達は再現できてしまうから。
まぁ、わざと教えない事もあるけど……クリスマスはサンタがプレゼントをくれるとか教えたら大変な事になりそうだし。
「楽しそー!!」
「やるやるー!」
「ちなみに夕食後にケーキを食べるお祭りだ。材料があればでっかいホールケーキを作ってやろう」
「やる!!!!」
「材料集めてくる!!!」
妖精達はお菓子が出ると分かると行動力が凄まじい。
「まぁ待て。ケーキの材料と一緒に夕食の材料も採って来るんだ、ご馳走作るから。それと飾りつけに使う物だな」
「ごちそー!」
「飾りつけってどんなの?」
「まずはランプ草。それと……丸いものやふわふわの白い綿毛。リボン、んー……後は、木か何かで好きな物を作って飾れば良いかな。色は赤を多めにすれば後は好きな色で大丈夫だ」
「わかったー」
「行ってくるー」
群がっていた妖精達が一斉に散らばって色んな方向に走っていった。
妖精達の事だから魔物達も誘って来るだろう。
「さて、今のうちに出来るだけご馳走の下準備をしますかね……」
こんな感じで唐突にクリスマスが始まった。
大体いつも通りだけど。
それから少し時間が経った。
「てっしょー」
でっかい籠を持った妖精が一人いた。
「ん?どうした」
「これで、おいしい物作ってー」
籠の中身は木の実やキノコ。
短時間でよくこれだけ集めたなってくらいの量だ。
「分かった。ありがとな」
「ほめられたー!」
小踊りし始める妖精。
妖精達は褒めるとすごく嬉しそうにする。
仲間同士で褒める事が無いらしいから、褒められるのは新鮮なんだろうか?
そう考えているとまた別の妖精が駆けて来る。
「てっしょー。こんなんでいいのー?」
両手で抱えているものを見せる。
なにやら金平糖っぽい形をした木の飾りだった。
好きな物を作ってと言ったから金平糖の可能性が高い。
前に思い切って作った事があったし。
この様子だと飾りの大半はお菓子型になるんだろうな……
まぁ、妖精達が喜ぶならそれでいいけど。
「ああ、それに好きな色塗って後で飾りつけしよう」
「わかったー!」
とてとてと走って行ってしまった。
いつの間にか踊っていた妖精がいなくなってるが、また食材探しに行ったかな。
それから更に時間が経ち……
台所は食材でいっぱいになっていた。
まぁ、いつもの事だけど。
お祭りの事とかを教えた日や妖精達の気合が凄い時は、とんでもない量の食材を集めてくる。
おやつを作ってくれると分かった時などもそうなる。
だが、毎回一度に使えないほどの量なので、最初の頃はどう処理するか困った。
「てっしょー!たくさん取ってきたー!」
「ケーキ作ってー!」
「はいはい作るから、今日使わない食材を氷室に持っていってくれ」
「はーい」
冷蔵庫は作れないから、代わりに氷室を作った。
精霊達の力も借りて家の近くに作ってもらったのだ。
冷蔵庫より物が沢山入るし便利で助かっている。
中は一年中氷が溶けないようになっているから夏でも大丈夫。魔法って便利だ。
料理を作りながら、たまに飾り付けを見に行く。
家の近くの一番大きな針葉樹の木をクリスマスツリーにして、色づけしたランプ草を飾っていく。家の周りにもランプ草を飾らせる。
クリスマスツリーを見ると、やっぱり色とりどりのお菓子の飾りが付けられている。
妖精達がいかにお菓子好きか分かるぐらい。
たまに妖精が枝に引っ掛かってぶら下がっていたり、木から落ちて雪に埋もれてたりするけど、怪我は全くないし本人達はとても楽しそうだから大丈夫だろう。
そんな感じで少しずつ、クリスマスらしい感じになってきた。
少し違う感じもするけど、妖精らしさというか、ここならではの雰囲気が出ているのだろう。
色づけされたランプ草の電灯より温かみのある光はこれまで経験したことのない雰囲気を出している。とても奇麗だし暗くなるとまた違って見えるだろうから夜が楽しみだ。
夜。
ご馳走が出来たので皆を呼びに行くと、昼間とは別の世界が広がっていた。
家とクリスマスツリーにしかランプ草を飾らない予定だったのだが、地面やら他の木にもランプ草が飾られていて辺りは色とりどりの不思議な光に包まれ幻想的な風景になっていた。
ぼーっと見ていると服を引っ張られた。
「すごいでしょ、てっしょー。頑張ったんだよ」
下を見ると妖精が服をつかんだままそう聞いてきた。
「ああ、凄いよ。凄過ぎてびっくりしてたんだ」
それを聞いた妖精は踊り始めたり飛び上がったりして嬉しそうだ。
「てっしょーびっくりしたってー!」
「やったー!」
「俺も頑張ってご馳走作ったからさ、早く皆を集めて暖かいうちに食べようぜ」
「わかったー」
「てっしょーのごちそー♪おいしいのー♪」
歌ったりしながら皆を呼びに行く妖精達を見ながらクリスマスツリーに近づく。
天辺にはちゃんと金色に塗られた星飾りが付けられている。
そして小さいランプ草が散りばめられていてきらきらと光っている。
お菓子型の飾りばかりでクリスマスツリーと言うよりお菓子ツリーって名前の方が合いそうだ。スイーツツリーの方が良いだろうか?まぁどっちでも良いか。
「てっしょー、集まったよー」
「分かった。じゃ、行くか」
妖精と手伝ってくれた魔物達と家に入って皆でご馳走を食べた。
ご馳走は作るのは大変だったが、いつも以上に皆喜んでくれている。
だからご馳走を作るのが好きだし、美味しそうに食べてくれている皆を見るのが嬉しい。
ご馳走の後は皆でケーキを食べていつも通り解散。
そして妖精達はいつも通り俺の家に泊まっていく。
でも今日は縁側に集まってイルミネーションを見る事になった。
妖精達は食後の運動なのか踊り始め、魔物達はそれを見る。
俺は姉御に渡された笛を吹きながら妖精達やイルミネーションを見た。
幻想的な風景。
踊る妖精。
振り始めた雪。
クリスマスでこんなに楽しいと思ったのは何年ぶりだろうか?
いや、子供の頃でもここまで楽しく感じたり嬉しいとは思わなかったろう。
沢山いる家族が、友達が全員喜んで、楽しんで。
自分も心から楽しくて嬉しい。
暖かい気持ちがして、幸せだと感じる。
気持ちもプレゼントに入るのなら、最高のクリスマスプレゼントだろう。
あいつらから俺へ、俺からあいつらへ。
今、感じているこの気持ちが、この一瞬が。
最高の贈り物。
皆さんが素敵なクリスマスを過ごせる事を祈ってます。
では、誤字脱字、感想アドバイス等お待ちしております。