文化祭〜6〜
花崎歌かと思った?残念、女子生徒Gでした!
さあ張り切って行きましょう。
今私は模擬店を周っています、もちろんピンクうさちゃんの着ぐるみで。
ちなみに神村武蔵は完璧に撒きました、これぞ私の力よ。
「わ、良ちゃんも勇人さんもすごい!三個目!」
「余裕余裕!」
「まあ、このくらいはね」
最初は珍しい三人組で問題が起きそうかなぁと思ったけど恐ろしいくらいに平和にヨーヨー釣りしてる。
その前にもいろいろ周ってたけど特に面白いことはなかった。
なんだよーつまらないなぁ、なんかこうもっと面白い修羅場とかさぁ、ないのか……ないのか。
「すみません、一回で」
「え……その格好でやるんですか?」
「はい、これ二百円です」
「わ、分かりました。どうぞ」
見ているだけでは暇なので私もヨーヨー釣りやってやろうじゃないか。
模擬店の人からフック付きのこよりをもらい三人から少し距離をおいてしゃがむ。
今の私はピンクのうさちゃん、なんでもできるようなそんな気がする。
「よっと、四個目!」
「俺も」
二人ともなかなかやるな。
一方花崎歌はすでに終えているようで赤色のヨーヨーをボムボムさせながら楽しそうに二人を見ていた。
よし、私も四つ目つーれた。
でも花崎歌そっちのけなのは如何なものか……。
「あ、千切れちゃった」
「よっしゃあ!五個目!俺の勝ちな!」
どうやら決着がついたようだ、それにしても簡単に四個や五個釣れてしまうのは店側に問題があるのでは?
私なんてすでに七個釣れてるんだが?
「別に勝負してたわけじゃないよ」
「ふふ、良ちゃんらしいね」
「ヨーヨーは三つまでなので選んでくださいー、あ、あとこれ三枚どうぞ」
模擬店の人は小さな紙を三枚花崎歌に渡していた。
あれは生徒会が発案したやつだ。
模擬店で百円お買い上げで一枚もらえる紙、五枚集めて生徒会室まで持って行くとくじ引きができるらしい。
まあ要するに商店街とかでたまにやってる福引きみたいなものだよね。
「ありがとうございま……え?」
あ、やばい。花崎歌に見つかってしまった。
今私の手元にはヨーヨーが十個ほどあった、いやーなんか全然切れなくてさぁこのこより。めちゃくちゃ強い。
さすが私のモブキャラパワー、こんなところで使っても意味ないけど。
「すごい……」
「ん?どうしたの歌ちゃん」
「あ、あれ」
花崎歌につられて古城弟もうさちゃん着ぐるみの私を見る。
絶対に私だと気付かれてはいけないなこれ、この格好で釣ってるのとかもろ目立つよな、もっと考えればよかったかも。
「うわ、すげー。十個以上あるんじゃねえの?」
ヨーヨーを選び終わった長谷良太が立ち上がり、そして私を見て感嘆する。
こんなイケメンたちが私を見ることなんてもうこれから一生ないだろうな、あ、十二個目。
もうちょっと、もうちょっと頑張れ!こより!
なんか人の名前みたい。
もう大分湿ってて今にも千切れてしまいそうだ……十三個目。
「頑張ってください!」
おっしゃ、主人公からの声援をもらいました!もっとやれる気がする!
でも絶対に私が女子生徒Gだってばれちゃいけない!
というかなんでこんなことしてるんだろう私、自分が情けなくなってきた、今更なんだけど。
もう後には引けない状況である。
「今のでもしかして一、二、三、四……十五個目?」
「そうみたいだね」
古城弟がわざわざ数えてくれました!
でももうこよりが限界を迎えている、悲鳴をあげていらっしゃる。
ふと狭い視界に、淡いピンク色と透明のグラデーションがかかったヨーヨーが入った。
少しだけ、綺麗かも。桜色で。
頑張れこより!もう少し!
フックにそのヨーヨーの輪をかけて、よし、釣れた!!
それと同時にこよりは千切れて水の中へ入って行った……ああお前のことはあと五秒くらい忘れないよ、こより……。
「おおおー十六個。すごい」
「おめでとうございます!記録大幅更新!好きなのを三つまで選んでください」
ここでしゃべるわけにはいかないよな……ということで私は桜色のヨーヨーを指差し、ひとつだけもらった。
昔よく桜の咲く季節に、ひらひら舞う桜の花びらをキャッチして遊んだものだ。懐かしい。
「すごかったです!」
花崎歌が主人公特有のキラキラした瞳で私を見ている……ああ嫌だ、嫌いだ。
返事代わりに黙って頷いときゃいいだろ。
「よし、行くか」
「そういえば俺、福引券二枚持ってるよ」
「あっ、俺も三枚持ってる!」
「え?本当私はえっと、さっき神村くんと隼人さんにもらった分四枚と……今もらった三枚あるよ」
「うーん、じゃあ生徒会室に行こうか?運試しでもしに」
「俺の分は歌がひいていいぞ!」
「ありがとう、良ちゃん」
お、三人はどうやら生徒会室に行くらしい。よし私も行こうじゃないか……少し離れて尾行しようっと。
途中神村武蔵の姿が見えてヒヤッとしたけど、慎重に動いてなんとかやり過ごした。やつめ……本当どこにでも現れるな。
あっという間に生徒会室に三人はつき、花崎歌が計十五枚の紙を生徒会のモブに渡していた。
「よ、勇人」
「仕事おつかれさま」
「ほんっと、めんどくさ。誰か代わってくんねーかなぁ」
げっ、あいつは……。
まあいいか、私が私だってバレるはずないし。
「うしっ、じゃあ三回、どぞ!」
「本当に私が全部ひいちゃっていいの?」
「いいよ」
「ああ、気にすんな」
「それじゃあ」
わくわく、ドキがムネムネする。
だって花崎歌は主人公だよ?
そんな主人公様々がくじをひくわけだよ?
何かが起こりそうじゃな……
「!やった!!一等!」
起きたー!!
めっちゃ起きた!
「歌すげーな!」
「一発目で」
「あと二回……」
さすが主人公はやることが違う!
確か一等って在校生は学食三千円分だったはず、外部は近場の温泉の無料券だったような。
いいなぁ花崎歌。羨ましい。
「あ、これは三等だ!」
「すごっ。三等は学食五百円分でーす」
「これで三千五百円分も……さすが歌ちゃんだね」
三等か、ハズレじゃないしむしろ大当たりだよなぁ。なんというか持ってるな花崎歌。
「これで最後!」
「いけいけー!」
さて、結果はどうだろうか……。
花崎歌がくじ引きの紙を開く!
「これは……!?」
「と、特賞!?」
えええええええええ!!!
とりあえず驚きの言葉を羅列してみました、実際はそこまで驚いてない。
なんというかここまで来ると……うん、何も言えないわ。
特賞って一個しか入ってないはずなんだけどなぁ?おっかしいなぁ?
「すごすぎ……」
「俺はひくと思ってたよ、歌ちゃんだしね」
「え、えへへ」
「特賞は学食一万円分」
「やったな歌!これでメロンパンが買いたい放題だぞ!」
ははは……メロンパン。
というかここは学食の券しか配ってないのかよ!明らかに外部の方が豪華だ!
外部は日帰り温泉バスツアーなのに!
「二人のおかげだよ、ありがとう」
花崎歌は嬉しそうにニコニコしてて、その姿がさっきの美術準備室にいた佐藤さんと被って見えた。
全然似てなんていないのに、不思議だ。
やっぱり主人公は持ってる力が違ったりするのかね。
「あれ、なんかお前……」
「?なんですか?」
「いや。知り合いに笑った顔が似てるなーって、それだけ」
「?」
生徒会のモブがしゃしゃっている。
お前はモブキャラなんだからそんな言う必要のないことなんて言わなければいいものを。
「じゃあ俺たち行くから」
「おお、じゃあな」
三人は学食一万三千五百円分をもって生徒会室から去って行った。
そして私も一回分くらいはひけたので試しにひいたら四等の学食二百円分でした。
いい加減学食から離れて欲しいんだけど。
……その後は特に何も無く、無事に文化祭は終わりました。
この三人は本当に何も起きなかったな、これが古城弟じゃなくて香坂馨とかだったら面白いことになってたかもなぁ。
まあ悔やんでも仕方ない。
あ、ちなみにピンクうさちゃんの着ぐるみは元の場所に戻しておきました。
あのうさぎの中身は誰だ?っていう話が文化祭後一週間くらい広まっていたけど。
まあ私が中に入ってたって誰も思わないよね……神村武蔵以外知らないんだから。
ほんっと、絡んできてどうにかなんないかなぁあいつ。
まあ、そんなこんなで。
文化祭はウォッチングの楽しさより美術準備室での一件でのイライラの方が勝ったので楽しくなかったです。
花崎歌にとってはけっこう楽しめたんじゃない?
はぁ、ちょっとだけ憂鬱だ。
読んでいただきありがとうございます。
お知らせです。
モブキャラの暇潰し!
のリメイク版の連載を始めました。
モブキャラの暇潰し!〜二周目!〜
です。
リメイク版では、こちらの作品を大幅に修正し、文字数も話数も多くなっています。
変更点は二周目らしく、終盤から結末にかけての展開と、真の隠しキャラ(教師)の追加、そして花崎歌が結末を迎える相手を変えるというところです。
しかし、終盤からは長谷良太以外とくっつくのを見たくないという方にはオススメできない内容になっていきます。
読んでいただければ幸いです。
文化祭は次に投稿する予定のエピローグで終わりですが、番外編はもう少し続きます。
同時進行で進めていくので、よろしくお願いします。




