モブキャラの本音
みなさんメリークリスマス。
名も無き女子生徒Yです。
まあまだメリークリスマスではないんだけど、気分的に言ってみただけ。
さてさて、今は十二月の始めです!
(花崎歌の)イベントが目白押しですよ奥さん!
気分最高!と言いたいところだけど今の状況を考えると死にたくなるレベルで気分最悪。
理由はもちろん、
「お前、花崎のストーカーか何かなのか?」
……い・ち・お・う!剣道のエース、神村武蔵くんのせいです☆
学校の下駄箱で健全に花崎歌ウォッチングに励んでいたところ、どこからともなく彼が現れたのでした。
星になればいいのに、むしろ教室のゴミレベルくらいまで退化すればいいのに。
「あんたも、私のストーカーだったり?」
「いやお前明らかに不審だろう」
真面目な顔で返された上に、私の質問はスルーですか。
というかなんか最近花崎歌との絡みより、私との絡みの方が多い気がしてならない。
なぜか神村くんにはモブキャラパワー効かないしふざけんな。
「不審じゃないしー」
「お前に聞きたいことがあるんだ」
「え?いや私はないよ」
「花崎をストーカーする目的は何なんだ」
話が噛み合ってない。
ある意味言葉の暴力だよねこれ、泣きたい。
しくしく……。
「暇潰し」
まあ嘘をつく必要はないか、八割はこの理由だし。
答えてあげる私優しいなぁ。
「は?」
「非日常的な日常を見てみたかったみたいな?まあでも、あとは花崎歌がどういう結末を迎えるのかが気になるから」
いつもポーカーフェイスな神村くんにしては珍しくポカンとした顔をしている。
ぷっ、おもしろ。
「……お前は花崎が嫌いなのか?」
もうしばらく花崎歌ウォッチングしてるけど、私が花崎歌をどう思ってるのか。
「うん、大嫌いだね」
花崎歌も、あの兄弟も、幼なじみくんも、女好きな先輩も、天使で悪魔な中学生も、神村武蔵も。
みんな嫌い。
「笑顔で言うなよ……」
「引いちゃった?いつも嘘ばっかついてるけどこれは本音」
神村くんは何を言っていいのかわからないって顔してる。
「神村くんは」
と言いかけて、私は口を閉じた。
下駄箱なんかにいるんじゃなかったと心の底から思ったね。
運悪いなぁ私、今日の星座占いは五位だったのにさ。
絶賛リア充中のラブイチャカップルが下駄箱にきた。
美男美女カップルがね。
まあそこまではいいんだけど、問題は私はあの二人を知っているということ。
花崎歌たちが知らなくて、私の知っている二人。
ま ず い 。
この二人が絡んでくるのはもう勘弁、話がややこしくなる。
「逃げるが勝ちっていうよねこういうの」
私は急いで靴に履き替えて、校門までダッシュして逃げた。
ちゃんと避けてたんだけどなあの二人。
神村武蔵?置いてきたに決まってんじゃん。
これは花崎歌の物語、花崎歌の知らない人なんて出てきちゃいけない。
……王道破りなんて、許されるはずがないから。
神村武蔵は、たまたま私と関わる機会が多いだけだ。だからたまたま私の本音を聞いただけ。全部たまたま。偶然。
だから今更、神村武蔵が現れて何を言おうが私は揺るがない。
たとえあの二人が、本当に忌むべき二人でも私には関係ない。




