幼なじみ
教室の前で自己紹介した花崎歌は落ち着かないのか俯いていた。
先生に席を指定され、ありがちの一番後ろの窓側の席へ行き座る。
ちっ、一番後ろじゃなくなっちゃったじゃんか。花崎歌め。
脳内花畑そうなメルヘンな名前しやがって。
「えっ、もしかして……歌!?」
斜め後ろから机を叩く音とともに興奮気味の声がした。
長谷良太。
バスケ部のエースで明るくてクラスの人気者だ。
いきなり出ました!主人公属性。
あれだよね、
主人公が転校
↓
転校先(しかも同じクラス率が異様に高い、マジで高い)に幼なじみ
↓
もしかして……
の流れ。ありすぎてお腹いっぱいだっつの。
とか脳内で思いつつ周りを見るとクラス全員2人に注目。
え?私は振り向かないよ。
面倒くさいもん。
「……良、ちゃん?」
ぷっ、良ちゃん。
良ちゃんだって、やべぇ長谷は良ちゃんってキャラじゃ絶対にないわー。
だって見た目、筋肉モリモリだし180以上ありそうな長身が良ちゃん。
顔はまあ言わずもがな。
「すっげー久しぶり!」
良ちゃん(長谷)は馬鹿みたいに爽やかな笑顔を貼り付けて花崎歌を見つめていた。
頬を染めながら。
予想だけど合ってるはず。
既に恋愛フラグ立ちまくりなのはお決まり。
いるよねー、最初から好感度マックスなキャラクター。
なのに人気投票ではあまり人気出ないキャラクター。
コイツはそうだな。
幼なじみの爽やかなバスケ少年、長谷良太。
……えー、説明がテキトーだって?
こういう場合は幼なじみだと相場が決まってるんだよ?
パン食ってる美少女と道の角でぶつかったらその美少女が転校生だったくらいにはお決まりだよ?
それに私、実際のとこ二人の様子わかんないしね。