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共通イベント「天体観測」

皆さんおはこんばんは。


みんなの人気者、花崎歌の監視役兼モブキャラの通行人Aです。


この挨拶も飽きてきたから、もうそろそろ違うのにしよう。



で、どうしてこうなったか分からんけどなぜか花崎歌率いる六人は夜の学校で天体観測をしていた。



さて、香澄くんがいるのがこれは本当に謎だ。


むしろ私がなんでその場で実況中継らしきものをしてる方が謎だって?



確かに今まさしく私は、夜の学校なうだが。



「うわぁ、綺麗」



ひとり寂しく呟く私、カッコいい。


これをしたいがために私は夜の学校に潜入したのだよ。

嘘だけど。



「わぁ、星に手が届きそう!」



届くわけねーだろ、香澄くんよ。



「ふむ、この望遠鏡はなかなかレンズがいいな」



着目点はそこなの?生徒会長。



「月も綺麗だなー」



オーソドックスすぎてつまんないですね、長谷良太。



「星座の神話って面白いよね」



懐中電灯を器用につかって星座の本を読む副会長。

そうか、とりあえず生の星見ろ。



「うーん、俺は歌ちゃんの綺麗さに勝るものはないと思うよ」


「えっ!?いえあの、滅相もないです」



甘すぎて反吐が出る言葉をいう香坂馨に、それになぜか頬を染める主人公花崎歌。



「……」



欠伸をしながらも黙って星を見ている神村武蔵。

いやいや、何かしゃべれよ。



何だかんだ言って青春を謳歌してるよね、花崎歌。


普通の人なら三年に二回くらい告白されるのがいいとこなのに。


花崎歌は一気に六人、誰を選ぶのかが見所だ。



ちなみに今七人がいるのは屋上、先生への許可はとったのか気になるところだけど。


私は……まあどうでもいいか。

とりあえず七人が何しているのかはよーく見えるよ。

あくまで見える、だけどね。



「確かに、ちょっと寒いかも」



花崎歌が言った直後に、すぐさま香坂馨がブレザーを脱ぐ。



「これ貸してあげる、それとも俺が暖めてあげようか?」


「え、あ……」


「あー!香坂先輩抜け駆けは駄目っすよ?ほら、俺のブレザーも貸してやる」


「僕ので良ければ貸すよ」


「え!?いや三つも着たらさすがに」


「ふーん、じゃあ歌ちゃんは誰のを借りたい?」


「え、あの……じゃあ」



選択肢キター。

この場合は三人か、妥当なところだな。選択肢は、


香坂先輩ので

良ちゃんのを

勇人くんのを

誰からも借りない


だな。

モテモテだなぁ花崎歌。全然羨ましくなんかないけど!


名前がほしいなんかこれっぽちも思ってないんだから。



「勇人くんのを貸してもらおうかな」



あらま、てっきり良ちゃんを選ぶと思ってたよ。

優柔不断だねえ、あっちいったりこっちいったり。


毎回選択してる人が違うような気がする。



「はい、どうぞ」


「ありがとう。勇人くんは星座の本見てたんだよね」


「意外と面白いよ、秋の星座の見分け方とか書いてあるし。でもここは光が多いから見えない星もあって残念」


「うん、そう思うとなんだか悲しくなるよね」



なんかこの二人の組み合わせはほのぼのとしてる感じ。


なかなかいいかも。



「おいおい、俺も話に混ぜろよーっ」



振られた良ちゃんはぎゃんぎゃん猿みたいに騒いでるのがじかに聞こえてくる。


あ、今の私は主人公花崎歌につけといた盗聴器を使って会話を聞いてまーす。


花崎歌は隙だらけだから楽だった、盗聴器つけるのが。

小型だから気付かないだろう、何たって鈍いし。


やってることが犯罪者予備軍?それ今更だよね☆



「静かにしろ、うるさいぞ」



騒ぎを聞いたのか、望遠鏡を観察していた古城兄が会話に入ってきていた。



「う、ごめん」


「分かってるならいいんだ。歌、こっちに来て月を見ないか」



下心丸見えだよ、生徒会長のクセに。


サラリと花崎歌を誘うし、いつの間にか呼び方が歌になってるし。




「え~、僕と星見ようよ!」


「香澄くん」



今度は花崎歌の腕を引っ張って(たぶん)子犬のような目で見つめてる香澄くん。


このクソガー…香澄くんは絶対に自分が可愛いと知ってるだろ。

使い方うますぎ。



「うーん、皆で一緒に見ようよ」


「だーめっ」


「歌は俺と二人で月を見るのは不満か」



ざまぁ、花崎歌め。

迷えばいいよ。


月を見る

星を見る

どっちもしない


選択肢は三つ。

どっちもしないなら神村くんとのおしゃべりイベントが発生するはず。



「月はさっき見たから、星を見ようかな」



あれだよね。

彼女(主人公)はハーレムルートでも狙ってんの?

現実で?


それはさすがに無理でしょ。

いやでも花崎歌なら本当にしそうだ。


たぶん無意識なんだろうけど。



「ホント!?」



香澄くんはパァと表情を明るくして喜んでいた。


残念だね香澄くん、もし君が攻略対象にならなければこんな苦労しなかったのにね。

ライバルが五人いるとか尋常じゃねーぞ。



「うん、星っていいよね」



……まあ今日の収穫はこれくらいかな。

さて私は帰るか、運が良いことにあの七人から屋上の扉見えない+自分たちの世界に浸ってるし。


それにもう二十時になるしね、ご飯食べたい。

実はこれが本音だったり。



私は気配を消しながら、屋上の扉をゆーっくり開けて、屋上から退場した。



共通イベント~天体観測~はこれで終わり、かと思いきや。




最大のミスを私はしてしまったらしい。



「おい」



階段をおりて、ちょうど二階に着いたとき。

するはずのない声がした。


Why?



「……げっ」



思わず声に出してしまった、可愛げの欠片もない。どうでもいいけど?


神村武蔵が、ひとつ上の階から私を見下ろしていた。


てかどうする!?

正直言って今の私はあの保健室のモブキャラキックの状況よりヤバい。



「アンタこの間の店員だよな。ここの生徒……」


「あれー、神村くん誰と話してるの?」



今初めて私は花崎歌に感謝したね。

神村武蔵の後ろから聞こえてくる花崎歌の声。


い け る !


位置につかないままよーいどん!


走り出す私。

なんか100メートル走してるみたい。



「なっー…」



神村くんはさそがし驚いているのだろう。


悪いけど私はモブキャラがいいのさ。名前もないモブキャラがね!




だって楽じゃん!




私は無事に校外に出て帰宅しましたとさ!



終わり!


でもこれ絶対近々言われるよなぁ。理由考えておこう。


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