香坂、恋愛イベント2「お叱り」
皆さんおやすみなさい。
欲望に忠実なサボりの女子生徒Xです。
今から寝ます。
「駄目……」
カーテン越しに、甘い声を出す女子生徒Cがいます。
「可愛いね」
「あ、やっ」
私はかまわず寝ようと思います。
とはいかず、私も健全な高校二年生。しかも男に飢えてるときた。
よし、盗み聞きをしよう!
「胸は駄目っ」
「なんで?」
男のほうは、後に花崎歌に攻略されるであろう香坂馨。
この女好きは誰もいない(と思っている)保健室に女子生徒Cを連れ込んであんなことやこんなことをするつもりらしい。
たぶん今日は私がいると絶対に気付かれていない。
だって私はベッドの下にあるスペースにいるのだから。
若干ほこり臭いが問題ない。
「ひゃあっ」
服が地べたに落ちた音がした、え?マジですんの?
あんまりここで生々しく描写するとかるく18禁にいくのでよろしくない。
「君の(放送禁止)を(ピーッ)するよ」
危ない危ない、今の香坂馨はエロアニメも裸足で逃げ出すくらいに危ない。
「(自主規制)」
「(禁止)」
「(省略)」
……ねよう、と。
ほこり臭いけど。
私はそう思い目をつむった。
のもつかの間、シャッとカーテンの開く音がした。
隣のね。
「なっ、ななななな!?」
「やあ歌ちゃん」
一体主人公花崎歌はどんな光景を目にしたのだろう。
「ちょっとかおるぅ、だーれこの女」
修・羅・場・突・入・☆
まああとの展開は皆さんのもうそ、想像力におまかせ!
てかただに状況説明が面倒なだけで丸投げしたほうが楽……げふんげふん。
とにかく、場面は飛んで女子生徒Cが去っていたその後。
「何やってるんですかっ!」
パシンッと気持ちいいくらいに乾いた音が保健室中に響いた。
この女叩きおった!
こういうとき選択肢出てくるよね。
叩く
泣く
みたいな感じで。
でどっちかが好感度上がるってやつ。
今回の花崎歌の選択肢はどうやら正解だったようだ。
「っ、あははっ!歌ちゃんみたいな子は初めてだ」
叩かれたのに笑うなんてこの男はSに見せかけてドMだな!
「え?」
「面白い、歌ちゃんのこと気に入っちゃった」
うは、気に入られちゃった。
どうだ花崎歌の気持ちを代弁してやった、絶対間違ってる。
主人公がうはなんて言うわけがない。
「何言って」
「オレの女にならない?」
「嫌です!」
「やっぱ駄目かぁ。まあちょうど超絶美人にも飽きてきたし、君みたいな中の上あたりの子を探してたんだよ」
「それどういう意味ですか!」
二人はわんやわんやと言い争ってる、いいねぇ若いって。
さて今度こそ私は寝ようと、あれなんかやっぱベッドの下は無理あったかな。って、
「いたっ」
あ。やべ。
頭ぶつけちゃった。
うるさかった二人の会話が止まる。
シャッとカーテンが開いた。
やべぇぇえええ!
どうする!?
ベッドの下で盗み聞きしてるモブキャラなんて聞いたことない、マジどうしよう。
「?誰もいない」
「いやよく見て歌ちゃん、ベッドの下あたり」
「下?……え」
見つかったぁぁあああ!?
なんでこういうときだけ補正入らないの鬼畜すぎる!
このゲーム作った人おかしいんじゃないの!?ゲームじゃないけど。
「……こんにちは、サボりの女子生徒Xです」
私はベッドの下から二人を見上げてにこりと笑った。
「あ、あなたは確か」
「断じて女子生徒Aではない!」
そう言いながら素早く私はベッドから脱出して、
「ごめんなさい!モブキャラキーック!!」
ええ、二人の腹を思いっきり蹴りました。
左足で花崎歌を蹴ったあと、右足で香坂馨を。
バタバタと倒れる二人。
二人には女子生徒Xについての記憶をなくしてもらう。
なんでこんな事ができるのかって?
それは私が女子生徒Xだからに決まってるでしょう?
十月中旬、すっかり景色は秋色になってきましたとさ。
香坂馨、恋愛イベント2。
終わり!




