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柳沢呉服店  作者: 神崎 紗穂
5/11

四、女郎花 帯と遊ぶ

 私がおばあちゃんの家でアルバイトするようになって三ヶ月が過ぎた。

着付け方法にも慣れ、一人で帯を締めることも以前より簡単にできるようになった。

しかし、夏の着物は暑い。

帯のおかげで顔には汗をかかないけれど、その分腰周りや足に汗をかく。

普段はTシャツにショートパンツやスカートというカジュアルな洋服を着ている私にとっての感想はこれにつきる。

丁度旬でもあるので、何とか浴衣での店番許可を得たのだった。

とは言っても基本的に商品である為、好きな物を好きなだけ着られる訳ではない。

 私たちがまとうのはお客様より多少見映えの劣るもの。

それが代々続く呉服屋の女主人たる、おばあちゃんの弁。サービス業は奥深い。


「どうしよう……」

 浴衣に着替えて店に出ようとしていたのだが肝心の帯の色が合わない。

私が着ても良いと許された浴衣と半幅帯の数はそれほど多くないのだ。

「こずえ、まだ支度できてないの?」

いつも通り店の簡単な掃除と商品の陳列を終え、仕事着である浴衣に着替えようとした時だった。

せかすようなおばあちゃんの声がする。

「おばあちゃん、何色合わせればいいかわからない」

私が迷っている浴衣を見せて、おばあちゃんの助言を待つことにした。

今までも着替える時は最終的におばあちゃんにアドバイスしてもらっている。

今日着る予定の浴衣を見せると、おばあちゃんは一つの半幅帯を出してきた。

それは緑みの、冴えた黄色だった。浴衣に合わせてみるとしっくりとおさまり、かつ、全体を引き締めてくれるように見える。

「この色、何て言うの?」

「女郎花という色よ。秋の七草の一つ」

試しに他の浴衣にも合わせてみると、以外とどんな色や柄の生地とも問題なく調和していた。

「浴衣の帯はね、黄色系を一本持っていると重宝するのよ」

年期が入っていると知識の量がさすがに違う。

でも、今度、お店で浴衣の帯選びに迷っている人がいたら、ぜひお勧めしてみよう。

 今夏はやりの「きもの風」浴衣にも使い回しが可能ですよ、と。

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