婚約破棄を笑って見ていた俺、翌日に王国を買った
俺はモテない。
前世でもモテなかったんだ、きっと魂レベルでモテない。
そう、俺がモテないんじゃない、魂がモテないんだ!!
◇
「君とは婚約破棄する」
招待された夜会でこの国の王子が、令嬢に告げていた。
何があったんだ?
周りの奴らも眉を潜めてヒソヒソと婚約破棄について噂しあってる。
まあどうでもいい。
モテる奴らが揉めてるのを見るのは実に楽しい、それだけだ。
パシッ!
「何を笑っているんです? 失礼だわ」
目の前に婚約破棄された令嬢がいて、右手を開いて目の前の相手の頬を引っ叩いた後のようなポーズを取っている。
左の頬が痛い……。
「あなた平民のくせに株で儲けてるって評判の人ね。夜会に招待されたからって貴族になったなんて思わないことね。私が貴族の礼儀を教えて差し上げますわ」
ニヤリと見下すような瞳から嗜虐心が溢れ出している。
「待て待て! 婚約破棄された腹いせに、庶民をいたぶるつもりなのか!? 貴族のやる事か!?」
ふんっと鼻で笑うと、令嬢は俺を外に連れ出した。
婚約破棄されて荒ぶる令嬢に誰も手出しできない。
俺は令嬢の馬車に乗せられて、どこへともなく連れて行かれていた——。
◇
連れて行かれた先は令嬢の実家の公爵家だった。
「申し訳ございませんでした!」
家に入るなり、令嬢が土下座して来た。
「あなた様をこの屋敷に連れてくるためにはあの場ではああするしかなかった訳じゃないんですけど、王太子にムカついたから、誰かを引っ叩きたくなって……」
正直な令嬢だ。
「どうぞ、私の頬も引っ叩いて下さい」
そう言って目をつぶって俺に顔を向ける。
思ったより礼儀正しいし、公爵令嬢なだけあってすごい美人だ。
「叩くのは痛いから、キスで許すよ」
「二発叩いていいので、それだけはご勘弁を!」
クソッ!
「で、俺を連れて来た用って何なんだ?」
「あなたにこの王国の債券を買って頂きたいのです」
「は? 債券……」
ファンタジーな異世界で聞くとは思わなかった単語だ。
「実はこの国では国庫が枯渇していて、急きょ債券の発行で賄っているんです。我が公爵家も王太子の婚約者ということでかなりの債券を引き受けていたんです。でも、婚約破棄されてしまったのでどうしたものかと思っていたんです」
「何で王太子はそんな債権者と婚約破棄なんてしたんだ。売られて困るのは王太子側だろう」
「我が公爵家でも引き受けきれないほどの債券が必要になったのです。だから隣国の助けを求めるつもりなんです」
「そりゃやばいだろう」
俺、大富豪だけどこの国に住んでて大丈夫なのか!?
「国庫が足りないって原因は何なんだ?」
「それはカジノのせいです」
「カジノ!?」
「国営のカジノでの負けが込んで、どうにもならないのです」
「閉鎖しろよ、そんなもん!」
俺も相当儲けさせて貰ってるけど!
「それは出来ないのです。神がお作りになった施設は閉鎖できません!」
神って……プログラマーのことか?
——この世界は俺が前世でプレイしていたRPGの世界だ。
カジノでバグ技を使えば金策できるんだが……転生先の異世界になっても出来るからやってるが……。
他の住人たちもバグ技で金策してたってことか……?
ならもっと俺みたいな大富豪が沢山いるか。
本来のゲームなら所持金がカンストすればそれ以上はカジノで勝っても増えないんだが、異世界では株って仕組みがある。
そっちに資金を逃がせばいくらでもカジノから金が引き出せる。
モテない俺にはそれくらいしか楽しみがなくて、カジノに入り浸ってるうちに大富豪になってしまったが……。
…………。
「買って欲しい債券ってどれくらいなんだ……」
「ゼロがこれだけです」
令嬢は手でゼロの数だけ指をたてて両手をパーに開く。
「……それだけか……」
カジノから無限に金を引き出せるから俺の全財産はもっとある……ってか俺のせいか、この国が財政破綻してるのって……。
◇
翌日、俺は令嬢の公爵家の持ってる国の債券を全部買いとった。
そして、国王に会いに行き、この国の債券を全部買い取ると言う。
国王や王太子にも感謝されてる。
元はカジノ——つまり、この国から引き出した金で、実質的なこの国の支配者になったわけだけど——。
やっぱりモテない!
「何故なんだーー!」
俺が叫んでいると、俺の右腕となって働いてくれている令嬢が来る。
「主はちゃんと近づいて来た女性と仲を深めようとしていますか?」
「……抱いてと言われたら、いつでも抱けるようにしてる!」
「……そんな女はいません」




