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俺なりの童話2

作者: 骸骨
掲載日:2026/02/05

 

 生暖かい風の吹く夜。肩をすぼめるように歩く奇妙な一団が通りを歩いていた。背の高さから、恐らく子供なのだろう。人気のない夜の道を、四人ほどの子供たちが横一列に並んで歩いていた。子供たちはお互いの顔を見ることもなくただまっすぐに、道を歩き続けている。

 何件か家の前を通り過ぎると、街中には不似合いなほど古い二階建ての家があった。中には年老いた両親と、幼い娘が住んでいた。

 子供たちはその家の前で立ち止まると、周りを見回した。元々人通りの少ない地域とはいえ、用心は欠かさない。一人の子供が懐から出した針金で戸を開けると、一斉に家の中に上がり込んだ。年老いた両親は耳が遠いせいか、子供たちが建てる音にも気が付かずにふるえ、歯のない口を大きく開けたまま眠っている。


 娘の部屋に入ろうとする子供たちは、恐ろしく邪な目をしていた、どんな大人でも目をそむけたくなるような。

 子供たちは娘を揺さぶって起こした。両親に起こされたものとばかり思っていた少女は、まだ朝になっていないことに気が付いて不思議そうな表情で体を起こした。

 目の前にいたのは、邪な目をした四人の子供たちだった。悲鳴を上げる寸前に一人の子が、さっと口を押えつける。

 一人の子供がわずかに震えながらしゃがみ込むと、口から白くて細長いひものようなものが飛び出した。ひものようなものはゆっくりと少女に近づくと、耳の中に入っていく。

 しゃがみ込んで震えていた子供と同様に体を少しだけ震わせると、少女は起き上がった。


 日が上がりだすころ、少女を含めた四人の子供たちは家を出てどこかへ姿を消したのだった。



 ある春の日。村で祭りが開かれていた。豪勢な食事に、酒。普段は大人しい村の住民たちが、滑稽な踊りを踊る。大人から子供まで、ただ座っているだけのものなど、一人もいない。踊るものの前ではやし立てるものも同じように踊っている。はたから見れば騒ぎ過ぎに見えるが、あまり変わり映えのしない毎日の中で年に一度開かれるこの祭りだけが唯一の楽しみといっても大げさではない。だからこそ、ここまでの騒ぎとなるのであった。

 にぎやかな村祭りがおこなわれている一方、どこか遠いところから地響きに似た音が鳴り響いていた。恐らく村からそう離れてはいない、山の頂上付近から聞こえてくるのだろう。たいていの村では山崩れか、何かの異変として警戒されていたのだが、春の祭りが開かれているこの村では、この音に気が付いたものは誰一人存在してはいなかった。

 

 村人の踊りが終わったかと思えば、次に年老いた老婆たちが気持ちよさそうに歌を歌い始めた。初めのうちは笑顔でその姿を見ていた者たちも、一緒に歌い始め村中騒々しいく大きな声が響き渡る。村人たちの歌声はあの不穏な地響きもかき消してしまうほどの声量であった。

 豪勢な食事も食べつくされ、酒も飲み干された。顔の赤い村人たちは各々、寝転がり昼寝を始めた。昼寝にはうってつけの、気持ちの良い風が村に吹いていた。村中の人間がすっかり眠り込んだころ、すぐ村の側にまであの音は近づきつつあった。


 山頂から村のそばまで恐ろしい勢いで迫りつつある、音の正体。それは何かに取りつかれてしまった、巨大な豚であった。

 大きな豚たちは眠り込んでいる村人たちを次々に踏みつけ、命を奪っていく。それ程の巨体を誇る豚たち。村を滅ぼした豚は止まることなく走り続けている。

 湖が目前に迫ってきた。豚たちの勢いは止まらず、そのまま水の底へと姿を消したのであった。


 

 とある森にある川の側にその獣は住み着いていた。近くを通り過ぎる木こりたちや旅人などを襲ってはその肉を喰らいながら生きていた。その姿は人間には見えない。ただ、人を襲ったときに浴びる返り血が、体に付着するとそこだけ肉眼で見えてしまう。すぐに血を落とせるように、獣は川の側に住み着いていた。

 

獣がいる森はいくつかの村があり、木を切るために木こりたちがやってくる。獣は腹がすくと、やってきた木こりたちに襲い掛かり、その肉を食う。村では、戻ってこない木こりたちの身に何かがあったとは思うものの、木がなければ暮らしが成り立たないため仕方がなく木こりたちを森に送り出すのであった。


 見えない獣は、木こりたちが仕事を始めると側へ近づき、そっと様子をうかがう。仮に人数が多いと、その身が血で濡れた時に見つかった場合、反撃される可能性もある。できるだけ、人数が少ない時を狙って獣は襲い掛かる。

 その日も木こりが森へやってきた。年老いた男の二人組だ。一人は白くなった髪を腰まで伸ばし、髭も生え放題。力仕事をしてきただけあって、老人とはいえ太い腕をしている。もう一人は、薄くなってきた毛を短く刈り込んでいたが、もう一人同様髭は伸ばし放題。腕はそれほど太くはない。

 二人は村を出てから、ずっとしゃべっていた。いなくなった女房や、最近生まれた孫のこと。失われつつある食欲と若さのことなどひたすらしゃべり続けていた。声を聞きつけた獣がすぐそばに迫ることなどお構いもなく。

 ある程度仕事を終えたところで切り株に二人して寄りかかると、髪が長い老人の方が腰に下げてきた液体が入った瓶を毛の薄いほうに示した。中身は酒だった。仕事終わりの一杯を始めようというのだろう。


 様子をずっとうかがっていた獣は二人の動きが緩慢になってきたのを見逃さなかった。まずは髪の長いほうの首筋に噛みついた。酒が血のめぐりをよくしているせいか勢いよく血が噴き出した。血で湿った獣の上半身が露になった。

 毛の薄い老人は怯えて身動きが取れない。逃げ出す間もなく、獣の餌食となった。

 伐採された期の側にはかつて木こりだったものが散乱していた。


 森で見つけたシカを追い続けていたら、フランチェスカはいつの間にか森を出て村のすぐ近くまで来てしまった。

 木の陰に隠れて様子をうかがっていると、子供たちが出てきた。三人いる。みな竿と腰には魚籠を吊り下げている。川へ釣りに出かけるのだろう。楽しそうだ。木の陰からフランチェスカは姿を現した。

 フランチェスカの姿を見た子供たちはいっせいに泣き出し、竿を放り出して村へ駆け戻っていく。子供たちの異変に気が付いた大人たちが家から出てきた。フランチェスカの姿を見て子供同様怯えた顔を見せると、慌てて家の戸を閉めてしまった。昼間だというのに、フランチェスカのせいで、見た家の中に閉じこもってしまった。

 人気のない村の中にゆっくりと足を踏み入れるフランチェスカ。数少ない家々の中から一軒だけ立て付けの悪い戸のせいで隙間が開き、中が見えてしまっている家を見つけた。強引に戸を引きはがすと、中から人の悲鳴が。

 まだ幼い子供とその母親だ。母親は箒を手に取るとこの前に立ちふさがり、フランチェスカの頭に勢いよく箒を振り下ろす。何かが頭に当たった気がするが、大した衝撃にも感じなかったのか何も感じていない様子でフランチェスカは、母親を腕で横に払い、壁にたたきつけた。

 母親の後ろで泣いた子供は、動かなくなった母親と目の前にいるフランチェスカを交互に見て、より大きな声で泣きわめいている。それは何を意味しているのか分からないまま、子供の頭に歯を押し当てる。

 骨片を後に残すと、他の家々にも目を向けるフランチェスカ。一見頑丈そうな戸に見えても、フランチェスカの腕力には歯が立たなかったようで簡単に外れてしまう。次々と家の住人に手をかけるフランチェスカ。

 無人と化した村を出ると、フランチェスカは森へ戻っていった。

 

  


 

 

 


 


 


 

 


 


 



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