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双子の分岐点  作者: キロヒカ.オツマ―


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第二十七章 事故

事故は、説明できる形で起きた。


夜明け前の高速。雨は弱まり、路面は黒く光っていた。トラックが一台、車線をまたいだ。原因は、運転者の不注意。記録はそう残る。ドラレコの映像は、肝心な瞬間だけ白飛びしている。偶然は、よくある。


亡くなったのは、一人。名は伏せられた。肩書きも伏せられた。だが、知っている者には分かる。名前が出た夜から、動線が変わっていた人物だ。


警察は、粛々と処理した。実況見分、聴取、書類。違和感は、現場ではなく、時系列にあった。前夜の会合、急な移動、同乗者の変更。だが、違法は見当たらない。見当たらない以上、事故だ。


宗教は、弔意を表した。形式通り。距離を保った文言。秩序を乱した個人の悲劇、という位置づけ。信者は、泣いた。だが、理由は語られない。


裏社会は、静かに理解した。事故は、警告にも見捨てにもなる。誰が決めたかは重要ではない。決まったことが重要だ。


マスコミは、扱いに迷った。名前は出ている。だが、因果は証明できない。事故として報じるか、背景を匂わせるか。編集会議は長引いた。結論は、薄くだった。


SNSは、割れた。偶然だという者。必然だという者。どちらも証拠はない。だが、疑念は残る。疑念は、次の事故を呼ぶ。


黒崎は、港で煙草を消した。事故は、商売を静かにする。静かになるのは、短い。


宗一は、病室でニュースを見た。終わらせる決断は、ここで完成した。秩序は、命より重いと理解したからだ。


警察内部では、誰も越線しなかった。越線しないことで、秩序は保たれる。だが、守られた秩序は、誰のものか。


第三者は、完全に手を引いた。市場は、事故を嫌う。事故は、説明できるが、制御できない。


事故は、誰も名指しで殺していない。


だが、名指しが始まる前に、流れを止めた。


雨は止み、路面は乾き始めた。乾けば、痕は消える。


消えないのは、知っている者の沈黙だけだ。

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