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双子の分岐点  作者: キロヒカ.オツマ―


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第二十四章 商品

市場は、真実を価値に変える。


最初に動いたのは、当事者ではなかった。宗教でも警察でも裏社会でもない。広告代理店の下請けだった。炎上対策、話題化、沈静化。その三つを同時に扱う部署。倫理は、KPIの外にある。


企画書のタイトルは無難だ。


——“二面性コンテンツ”の可能性。


資料には、顔の比較、瞬きの癖、声のフォルマント帯。断定はない。曖昧さが売りだ。確定すれば終わる。確定しないから、回る。


「証明は不要です」


若いプランナーは言った。「疑わせ続けることが、エンゲージメントになります」


商品は、三層で設計された。第一層は無料。切り抜き、比較、投票。第二層は課金。長尺、専門家風の解説、限定ライブ。第三層は裏。接触だ。イベント、会食、噂。


専門家は、専門家ではない。元心理学専攻、元声楽科、元捜査協力者。肩書きは、借り物でいい。信頼は、雰囲気で足りる。


配信は、深夜に始まった。刺激は強く、断定は弱い。視聴者は、自分で結論を出した気になる。


《同時性は、偶然か》 《入れ替わりは、現実的か》


投票は割れる。割れるほど、次が売れる。


裏の第三層では、名簿が回った。宗教行事の招待、港の会合、記者の飲み会。**二つの顔を、同じ週に“近くで見た”**という体験を、金で買わせる。


黒崎の耳にも入った。彼は笑わなかった。見せる価値が、値札を持ち始めたことを理解したからだ。


宗教側は、沈黙を選んだ。否定は、素材になる。肯定は、商品になる。沈黙だけが、値段を下げる。だが、完全には下がらない。


警察は、動かなかった。違法ではない。違法にする理由もない。市場は、管轄外だ。


《共鳴》には、リンクが貼られた。貼ったのは、内部者ではない。便乗者だ。流入は増え、質は落ちる。ノイズが、核を覆う。


若い記者は、招待状を受け取った。交通費、謝礼、自由参加。条件は甘い。彼は、迷った末に、行った。行けば、記事になる。行かなければ、置いていかれる。


会場で、彼は二人を見た。いや、二人に見える配置を見た。照明、距離、導線。再演より洗練されている。


拍手が起きた。理由はない。起きるように、作られている。


翌朝、検索結果が変わった。事実は下がり、比較動画が上がる。真実は、SEOに弱い。


宗一は、病室で画面を消した。終わらせる決断が、商品化で裏切られた感覚。黒崎は、港で同じ画面を閉じた。見せれば、完成する。


第三者は、勝った。


双子は、もはや人ではない。コンテンツだ。


だが、商品には、必ず欠陥がある。


欠陥は、いつも、生の部分に残る。

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