第二十一章 終止
決断は、音を立てない。
宗一は、夜明け前の礼拝堂に一人いた。灯りは落とされ、非常灯だけが床を薄く照らす。祈りの言葉は、もう用意していない。用意するほど、間が狂う。間が狂えば、気づかれる。
彼は、自分の声を確かめるように、短く息を吐いた。遅れは、まだある。だが、受け入れられる程度に収まっている。問題は、外だ。線が触れ、意味が動き始めた。止めるには、一つだけ、終わらせる。
宗一は、連絡先を開いた。誰にも繋がらない番号。だが、繋がる夜がある。呼び出し音は一度で切れた。
「終わらせる」
それだけ告げて、通話は終わる。説明は不要だ。説明は、後で齟齬を生む。
同じ頃、港の外れで、黒崎は倉庫の影に立っていた。潮の匂い。鉄の冷え。彼の中で、**合理が勝った。**ここまで来て、流れを止めるには、最短がいい。
彼は、自分の顔を思い出した。鏡ではない。誰かに見られる顔だ。あの夜から、揺れが戻っていない。安定しすぎた目線は、危険だ。目立つ。
「俺がやる」
部下は反論しなかった。反論は、死ぬ理由になる。
宗一は、金庫から封筒を一つ取り出した。中身は、紙。番号と日付。意味を持たない形で、意味の中心にあるもの。これが外に出れば、終わる。
彼は、燃やさなかった。燃やせば、証拠になる。代わりに、渡す先を消す。
夜が深まる。警察無線が、静かすぎる。静かすぎる夜は、誰かが動いている。
黒崎は、車を走らせた。目的地は一つ。宗教施設の外縁。正面ではない。裏口の、さらに外。
宗一は、礼拝堂を出た。足取りは軽い。決断は、体を軽くする。彼は知っている。終わらせるとは、守ることだ。
二人は、同じ場所に向かった。だが、出会うつもりはない。出会えば、終わらない。
施設の裏手で、灯りが一つ消えた。監視の盲点。偶然ではない。だが、誰の操作かは分からない。
宗一は、封筒を持たなかった。持たないことで、持っている者を特定させる。
黒崎は、影から出た。声はかけない。声をかければ、物語が始まる。
次の瞬間、宗一は、足を止めた。理由はない。だが、止めるべき間だった。遅れが、役に立つ。
衝撃は、短かった。音は、抑えられた。地面は濡れている。滑ったとも、押されたとも取れる。
黒崎は、確認しなかった。確認は、関与になる。彼は、去った。
宗一は、倒れた。意識はある。だが、声が出ない。遅れが、致命になる。視界の端で、非常灯が揺れる。
彼は、最後に考えた。終わったか。
答えは、すぐには出ない。
夜明け、発見は遅れた。救急は呼ばれた。だが、判断は分かれる。事故。警告。見捨て。
黒崎は、海を見ていた。潮は、すぐに変わる。痕跡は残らない。
宗一は、病室で目を開けた。終わっていない。終わらせ方を、間違えた。
その瞬間、二つの場所で、同じ理解が生まれた。
——次は、もっと確実に。
終わらせる決断は、一度では足りな




