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掌編

ねこにゃんにゃんにゃん

作者: 綴 詠士

「にゃんにゃんにゃん」


 路上で青年がにゃんにゃん言っている。

 何を言っているのか誰もわからないかもしれないが、事実なのだ。

 

 おかしいのだろうか。

 

 (おかしいだろ!)

 

 少なくとも青年はにゃんにゃん言いながらもシリアスな表情で考えていた。

 

 分かっているのは誰もがにゃんにゃん言っているということだ。

 

 どういうことかわからない?

 なら見てみよう、青年の住む町を。

 

 そこに広がっているのは、どこにでもある田舎の町じゃない。

 にゃんにゃん言う人ばかりの異様な町だ。

 

 だれもがにゃんにゃん言っていて、お互いににゃんにゃん叫んでいる。

 

 これは彼らの言葉じゃない。

 

 なぜなら皆相手の言葉が分からない上に、自分もにゃんにゃんしか言えずに憤っているからだ。

 

 この場はにゃんにゃん語によって支配されているが、誰もそれを理解できていないのである。勿論青年もだ。

 

(理解できるか! 何がどうしてこうなったんだよ!?)


 青年の問いに答えてくれる者はいない。いたとしてもにゃんにゃんしか言わないだろう。


「にゃーん……」

 

 青年は悩む。すると何かひらめいたようだ。一体何なのだろうか、言ってごらん?


「にゃんにゃん!」


 にゃんにゃんね、はい何を言っているのか分かりません。


「にゃーーーんん!!!!」


(うるせーーーよ!! ナレーターが勝手に喋るな!)

 

 青年は怒りながらも考えた。


(あいつじゃないか? あの魔女なら何か知ってるんじゃ……)

 

 青年は魔女の家に向かった。


 町はずれに一軒の家。ぽつんと立ちながらも存在感のある家。

 青年がノックすると、魔女が出てきた。


 彼女は滅茶苦茶楽しそうに、青年を見る。

 

「やあ、元気? どうだい? にゃんにゃんしか言えないのはどんな気分だい?」

 

「にゃんにゃんにゃん!」

 

「あはは! 何言ってるかわからないよ! やった! 成功だ!」


 魔女は滅茶苦茶嬉しそうにする!


「にゃああああああん!!!」

 

(なんでこんなことするんだよ!!)


 青年が思いっきり怒っていると、さすがの剣幕に魔女は一歩下がる。


「ごめんごめんって。そんなに怒らないでちょっとした冗談じゃん、ね? ああもう分かったよ! 戻すから! だから落ち着いて!」


 そういって魔女は本を取り出すと、呪文を唱え始める。


「アリホリハフラ、ミヒヒヒヒ! マリウエポぺトムヒへヒヒ!」


 魔女が呪文を唱え終わる。


「どう? 戻ったんじゃない?」


 そういわれ、青年が口を開く。


「あー。……戻った! やった!」


「よーし。よしよし。じゃあ君も助けたことだし、僕は次の実験に戻るね、じゃあね」


「おい! ちょっと待て!」


 青年が思いっきり魔女の肩を掴む。

 

「え?」


「町のみんなへの魔法を解け。あと謝罪と罰を受けてもらうぞ」


「絶対やだ! 罰とか絶対嫌なんだけど!」


「ほらこい!」

 

 そういって青年は無理やり魔女を町に連れて行き、町のみんなの魔法を解き、罰として1年間、傷を癒す魔法薬を作って街の皆に配るように言われたのだった。

 








 

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