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[027] 王都での戦い(2)

 バルバリア商会の一団は、三十騎ほどで、こちらの、おおよそ三倍といったところだ。馬を駆けさせているものの、乱戦の渦に阻まれ、速度が落ちている。


「いけます! これなら追いつけます!」


 先頭を走るニコラスが叫ぶ。普段は朴訥(ぼくとつ)とした印象の男が、珍しく声を張り上げていた。興奮しているのだろう。だが、ルックは煽られることなく、ラルフを呼び、静かに指示を出す。


「ラルフ。スネル王子のもとへ走れ。暗殺の企図ありと伝え、一時後退を進言しろ。ヤームシュタット公爵の使者と名乗ってもかまわない」


頷くや否や、ラルフは近衛軍の旗をめがけて駆け出した。


「おい、気をつけろよ。あいつらもこちらに気付いたぜ!」


振り返ったルックの視界に、バルバリア商会の後衛が弓を構える姿が映る。矢はすでに放たれていた。


 トールセンの護衛二人が前に出て、盾で矢を弾く。その隙に、ニコラスが飛び出し、射手に斬りかかった。しかし、騎乗の射手は、すぐさま弓を捨て、剣を抜き、ニコラスの剣を弾く。


「お、あいつら、そこそこ使えるようだぜ」


ニコラスの剣が払われた様子を見て、何故か嬉しそうなグレンだった。対照的にマリナは、相手の個々の実力が自分と同等か、それ以上だと瞬時に見抜き、手綱を握る手に力がこもる。


マリナが剣を抜こうと、柄に手をかけようとしたとき、レミが飛び出した。


「ちょっとレミさん! 魔力、もう尽きてるんじゃ――!」


マリナの制止を意に介さず、疾走するレミが、バルバリア商会の騎馬を瞬時に斬り落とす。その隣では、グレンが二人の騎馬を大剣で薙ぎ払っていた。


 バルバリア商会の一団の空気が一気に変わった。


「なんなんだ、あいつら。我々の動きを察知しているとでもいうのか!」


突然現れた敵に、わずかな動揺を見せていたバルバリア商会の一団は、それでもメーデン・バルバリアが選りすぐった精鋭の集まりで、即座に体勢を立て直す。


数で優っていることを瞬時に悟り、三騎一組の陣形を組む。前衛の一騎が盾と剣を構え、その左右の二騎は盾を掲げつつ、長槍を前方へ突き出す。


馬さばきも鮮やかだった。


左へ圧をかければ、前衛が中央に寄り、陣形ごと左へ回頭する。右に寄せれば、今度は右へと向きを変え、常に隙を見せない。巧みな連携に、ルックたちは一瞬、攻めあぐねた。その隙をつき、バルバリア商会の一団から六騎が離脱する。そのうちの一人は、ローブをまとった魔導士だった。


「グレン! ここは任せたぞ! マリナ、ついて来い!」


レミの号令に応え、グレンが短く「おうっ!」と吼える。不意を突かれたマリナは、一瞬だけ息をのみ、それでもすぐに「は、はい!」と馬を進めた。


だが、レミとマリナの進路に、三騎が素早く回り込み、行く手を遮る。


進路を阻まれ、ルックが瞬時、逡巡する。そのわずかな逡巡の間に、躍り出たニコラスが一騎に馬をぶつけ、動きを止める。


「ルックさん! 先に進んでください!」


三騎のうちの先頭の一騎を弾き飛ばし、一刀のもとに切り伏せる。だが、ニコラスの体勢が崩れる。その隙を見逃すはずもなく、二本の長槍が、ニコラスに突き立てられた。


「これは好都合……!」


ニコラスは、自らに突き立てられた槍をつかみ、引き寄せる。ニコラスと共に二騎が馬から落ちる。ルックは、その様子を視界に収めつつも、馬を駆った。


(すまない……ニコラス……)


「レミさん!? ニコラスさんが!」


「マリナ、いいから突き進め! 今、動きを止めたら、あいつらに追いつけない!」


レミの言う通りだ。先を行くバルバリア商会の一団に追いつくためには、ここで動きを止めるわけにはいかない。だが……。


「あの魔導士が『爆炎の魔導具』を使う前に止めるのがお前の望みだろ! 欲望を果たすために、他人を思いやる余裕があるのか!!」


「でも、ニコラスさんが!」


言いつつも、マリナも馬を駆っていた。自分の言葉と行動が相反している。ニコラスの容態は気になるが、ニコラスとの距離はぐんぐん開いていく。


レミが、バルバリア商会の一団に追いついた。


瞬時の剣さばき。一騎に重傷を負わせ、もう一騎は軽傷だ。


「やはりこの姿では、剣が軽いな……」


レミが、五騎に囲まれ剣を振るっている。魔力の尽きた魔導士が騎馬に囲まれるということは、猟犬に囲まれた兎のように、あとは狩られるのを待つばかりだった。


マリナは、重傷の一騎を討ち取り、レミを囲む騎馬のうちの一騎に打ちかかる。


振り抜いた剣は弾かれ、相手の振り下ろした剣を受け流す。


(こいつら……強い!!)


慣れない騎馬戦とはいえ、マリナは防戦一方となる。相対する騎兵は、剣の腕では後れを取ることはないだろう。だが、馬さばきに雲泥の差があった。右利きのマリナに対して、軽やかに左に回り込み、利き腕の逆から攻め立てられる……。


とっさに剣を左手に持ち替え、相手の剣を流す。右手はベルト付近にやり、手にした投げナイフを放った。


投げナイフは、敵の目を貫き、馬から転げ落ちる。


後ろを振り返った。


マリナの目に、一団から離脱する魔導士の姿が映る。


「マリナ! あと三人は私が抑える! お前はあいつを追って『爆炎の魔導具』を止めろ!」


指示を出しながらも鮮やかな剣さばきで敵を制しているレミの腕に驚きつつ、マリナは魔導士に向けて馬を駆った。

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