そ、そんな……ブラックサンダーが、効かない!?
提示されたセリフを適切に配置して短い物語を作成しましょう。
「そ、そんな……ブラックサンダーが、効かない!?」
とある高級料亭で、壮年の男と若い女が向かい合って座っている。男は尊大な態度で値踏みをするように女を見ている。女もまた、不遜なほど自信に満ちた様子で男の視線を受け止めていた。男は道路族の国会議員であり、女は大手建設会社のマネージャーだった。女の座る脇にはジェラルミンのケースが置かれている。そしてそれは、女の自信の源であるようだった。
「この度の橋梁建設プロジェクト、是非弊社にお任せいただきたいのです。弊社にはこの分野において充分な経験と実績があります。必ずや先生のご期待に添えるものと自負しております」
女の言葉に男は小さく鼻を鳴らす。
「そう言われてもね。この案件は入札で業者を選定する。正々堂々、君たちも入札に参加すればよかろう? 経験も実績も充分なら入札で勝ち抜くことができるはずだ」
白々しい建前にも女は表情を崩さない。
「無論、入札でも我々は勝てると思っています。本当に公正な入札なら」
男の眉がピクリと動いた。
「入札の公平性を疑うのかね?」
「入札要件がいささか、特定の業者を意識したものになっている、と噂が」
女は薄く笑う。男は不快そうに額にシワを作った。
「言いがかりだ。選定基準は工事に必要な条件を積み上げた結果でしかない」
「結果的に、新規参入業者には不可能な条件になったと?」
「信頼のない業者に任せるわけにはいかん」
「代謝が滞れば老廃物が溜まる。同じ業者を使い続けるのは信頼ではなく惰性ではありませんか?」
女が男を見つめたまま、ジェラルミンケースに触れた。男の視線がジェラルミンケースに向く。
「先生のお力があれば、今の不公平な選定基準を正しいものに変えることもできるはず。私たちに便宜を図れと言っているわけではありません。公正な、本来あるべき選定基準に戻していただきたいだけなのです。もちろん、先生にご助力いただけるのであれば、労力に見合うだけのものをご用意いたしますわ」
女がジェラルミンケースを引き寄せ、膝の上に置いた。男がごくりと唾を飲む。焦らすようにゆっくりと、女は鍵を開け、ケースを開いた。そこに収められているのは、隙間なくびっしりと詰め込まれた、ブラックサンダー――
「帰れ」
男はひどく冷静な顔で言い放った。女の顔が驚愕に歪む。
「そ、そんな……ブラックサンダーが、効かない!?」
「むしろ何で効くと思ったんだ」
「今まで失敗したことなかったのに!」
「この国の政治家はバカばっかりか」
「ブラックサンダー以外に何を送るというんですか!」
「逆ギレか」
女は畳に両手をついてうなだれる。
「……あなたがそれほど清廉な政治家だと思っていませんでした。私の負けです」
「清廉とか以前の問題だが」
男は立ち上がり、女を見下ろす。
「次はもう少しまともな話を聞かせてもらえることを期待している」
そう言って男は部屋を出ていった。顔を上げ、男の背をにらみつけながら、女は小さくつぶやいた。
「次こそ、ブラックサンダーの魅力を分からせてやる――!」




