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嫌われ王子、国を捨て亡国の王女を助ける  作者: 空野進


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45/50

決着

 目の前で起こった結果を見て、魔王と敵対しなくてよかった、と青ざめながら思っていた。


 確かにボスに支援魔法を使うなんて通常だと考えられないことである。

 

 ただリッカは唖然と見ていた。



「……敵が」



 ぽつりと呟く。

 そういえばリッカを隷属化させた魔族もあの場にいたはずだったが……。


 もはや敵のての字も見えない。

 この中からリッカの仇を探せというのはさすがに難しすぎるだろう。

 敵が跡形もなく消えてしまったのだから。



「……敵討ち」

「代わりに魔王がやってくれたってことだな」



 そっとリッカの頭を撫でてやる。



「……なんだ、今の威力は?」



 魔王は自分の手のひらを見て不思議そうにしていた。

 そして、再び魔力を溜めていた。



究極闇魔法(デスワールド)



 再び先ほどの魔法を放つ魔王。

 ただ今回は支援魔法なしで放ったものだから威力がかなり低く一部に穴が空く程度のものだった。



「一体さっきは何をしたんだ?」



 魔王が俺の肩を強く掴んでくる。



「ただの支援魔法だ。魔族にも使い手はいるだろう?」

「いるにはいるが、そもそも魔族は実力主義で他人を強化する支援魔法の評価は低かったからな。でも、これほどの威力が出るのなら……」



 魔王が真剣に悩みながらいってくる。


「お前、我の下へ来る気はないか? 今ならば最高待遇で迎え入れるぞ? それこそこれから手に入る分も含めて我が領地の半分をくれてやろう」



 そのあまりの評価ぶりにリフィルが少し慌てていた。


「て、テオドール様、この国を出られるのですか!?」

「いや、魔王には申し訳ないが俺はこの国を出る気はないぞ? そもそも国を出た俺に領地を与えてくれて、更に爵位までくれたリンガイア国王を裏切るつもりはないからな」



 俺の答えに魔王は高笑いを始める。



「はははっ、お前ならそういうと思ったぞ。全くこの国に来る前に捕まえるべきだったな」

「確かにそれなら魔王国へ行ってたかもしれないな」

「この国を出るようなときがあれば選択肢に入れてくれ。お前ならいつでも歓迎する」



 それだけ言うと魔王はあっという間に姿を消していた。

 もう一度結界の一部を破壊して……。



「えっと、テオドール様、本当に良かったのですか?」

「なにがだ?」

「魔王様、テオドール様のことすごく買われていましたよね? テオドール様のお力をもっと生かせるかも」

「それをいうなら俺をこの国へ連れてきてくれたのはリフィルじゃないか? 最初に俺のことを信じてくれたのはリフィルだからこの国のために働こうって思ったんだぞ」



 リフィルは大きく目を見開き、そして、嬉しそうに抱きついてくる。



「……私、違うところに行こうか?」



 リッカがいらない気を利かせてくる。



「いや、まだここにいてくれないか?」

「……見られた方がいいの?」

「そういうわけじゃない。さすがにもう襲ってこれる戦力はないと思うが念のために……な」



 既に跡形もない死の大地。

 もう別の攻撃をされるとも思えないし、魔王もそう思ったからこそ帰って行ったのだろう。


 ただ俺はなんだか嫌な予感がしていた。

 そして、それが正しかった。



 死の大地になった場所に突然現れる第一王子ルーベルト……のように見えたけどよく見ると強烈な爆発音を鳴らして姿を現したのはリュリュであった。




◇◆◇◆◇◆




「……ちょっと待て。全滅ってどういうことだ?」



 自分の出番がないとは思っていたものの念のために帝国近くまで来ていたルーベルト。

 その目的はもちろん支配した国で自分好みの女性を見つけ出し奴隷とすること。


 特にリンガイア王国は王女が美少女であると聞いている。

 処刑さえるかどうか、絶望を抱いている美少女を奴隷化するなんてどれほど興奮するだろうか。


 そんなことを考えていた矢先の全滅報告である。

 最初は部下の冗談かなとも思ったが、どうやらその慌てた様子から冗談ではなさそうであった。


 しかし、帝国ですら滅ぼした軍勢がたかがリンガイア王国程度に滅ぼされるなんて思えない。



「一体何があったのだ?」

「わかりません」

「わからないってどういうことだ!!」



 ルーベルトが怒声を上げ、報告に来た部下が青ざめている。

 しかし、彼自身も本当に何が起きたのかわからなかったためにそう言うより他なかった。



「と、とにかくあの国は危ないです」

「どうせ臆病風に吹かれて逃げたのであろう? それとも誤報か? とにかく行ってみればわかることだ。行くぞ」

「あ、あの、私はその……」

「良いから付いてこい!」



 嫌がる部下を引き連れてルーベルトは兵が集まっていたという場所へと向かう。

 すると報告通りの何もない。

 文字通り本当に何もない荒野が広がっていた。


 そんな中、ひっそり佇む城壁。

 そこに何か攻撃をしたあとがない。


 つまり一方的に攻撃されてそれで倒された、ということだろう。

 そもそもここは荒野なんかじゃなかったはず。


 地形が変わるほどの攻撃?

 そんなものあるはずがない。


 そうなると天変地異でも起こったとしか考えられない。



「お前、ほんのわずかでも知ってることはないのか!」

「そ、それが突然夜になったのだけは知っているのですが、他は何も……」



 本当に役に立たないやつだ。

 こんな奴はクビにしてもっとマシなやつを入れるか。


 ただ今の情報で自身の考えがあながち間違いではないことがわかった。


 今回は奇跡的な豪運に阻まれてしまっただけ、ということに。



「よし、そうとわかれば改めて軍を再構築する。ついてこ……」



 ルーベルトが最後まで言い切る間もなく、突然空から飴が降ってくる。

 更にその側には小柄な少女が同様に降ってくる。


 一体この土地で何が起こってるんだ?


 ルーベルトがそう考えた次の瞬間に彼は(ばくだん)に巻き込まれるのだった。


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