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嫌われ王子、国を捨て亡国の王女を助ける  作者: 空野進


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34/50

決着

 鋭い視線を送ってくるユミルとカイン。

 嫌われ王子と呼ばれた俺よりよほど悪役のようである。


 ただ、その行動は違和感しかない。


 原作だとユミルは何を考えているのかわからないが、とりあえず能力が高く、高位魔法を扱える技巧派の平民。

 カインはいたって普通の道具屋だけど、他の誰にも負けないほどに戦う力がある。



 いや、明らかにおかしいな。



 冷静に考えるとおかしなことばかりである。

 そもそも普通ならば剣も魔法も貴族の方が得意としているのだ。


 それは当然ながら第二王子ジークハルトや宰相の息子であるミハエルの能力が高いのはそういった要因があるからである。


 しかし、メインキャラで貴族なのはその二人だけ。

 あとのキャラは全員が平民なのである。


 明らかに割合がおかしい。


 確かに一人二人、抜きんでた能力が出て王国の騎士になるくらいの実力を得るものもいる。

 しかし、それは本当にまれな出来事でアルムガルドが建国されてから両手に収まるほどの人しかいない、栄光の成り上がり物語として語り継がれるようなものなのだ。


 そんな特筆した才能の持ち主(てんさい)が同世代に何人も出るはずがない。


 つまり、平民のメインキャラたちは全員、何かの裏があると考えられる。



 道具屋の倅であるカインは闇商人としての顔も持ち合わせていた。

 おそらくは裏世界の住人。

 そのために気配を消すことや能力を偽ることはお手の物なのだろう。

 今回抜いてきた剣も長さ的にどちらかといえば短剣。暗殺用の武器ともいえる。

 そして、おそらくあの武器には毒が塗ってあるだろう。



 腹黒支援職のユミル。

 正直、こいつが一番の謎だった。

 単純な支援魔法ならば初心者の域を出ないこいつよりもいくら嫌われていようと、アルムガルドで十指に入るほどの実力を兼ね備えていた俺の方がまだ戦えるはずなのだ。

 しかもユミルは支援特化。

 対しての俺は回復魔法も扱える。



 確かに容姿が劣るという一点はある。



 ただ魔王討伐に容姿は一切関係ないはず。

 確かに連携が取れなくなる等のデメリットがあることも考えられるが、それを差し置いてもわざわざ初心者を選ぶ理由がない。


 そんな中、無理やり候補に入ってきたのだから何かしらの表には出ていない理由があるのだろう。

 ただそれが原作だと一切見えないのだ。


 でも、ようやく今わかった。

 カインと親しげに話しているその様子からユミルもおそらくは裏家業の人間。

 暗殺ギルドとかに入っているのではないだろうか?

 そこから色々と伝手を使って聖女のパーティー候補にまで上り詰めたのだろう。


 あくまでもこれは想像にはなるのだが、今の二人を見ていると十分にあり得そうである。


 そもそも国王が金に汚く、上層部も腐っている今のアルムガルドならば入り込むのも容易だろう。


 そう考えると二人はそれなりの実力を持っていてもおかしくない。

 それに対してこちらはまともに戦える人間はいない。


 一応グリムを呼んできてもらっているが、もうしばらくかかるだろう。



「うぐぐっ……」



 バーンズのうめき声が聞こえる。

 早くしないと彼の命も危うい。

 アミルが傍について必死に祈っている。



「お前たちはいったい何が目的だ?」

「目的? 生きのいい奴隷(しょうひん)を確保しに来たくらいかな?」

「まぁ、そういうことだよ。だから交渉しようとしているのなら諦めてくれないかい? 奴隷以外の目撃者はいらないんだよ」



 やはり避ける手段はないようだった。

 仕方なく俺はリュリュ特製魔道具(ばくだん)を取り出す。

 形状は仲間を呼ぶときに使う音が出るだけの使い捨て魔道具である。



「仲間を呼ぶ気かい?」

「むしろ人を集めてくれるならこっちとしては好都合だね」



 にやにやと笑う二人。

 油断してくれているのなら、と俺は威力強化の付与をして二人目掛けて投げつける。



「こんなものが効くとでも思ったのか!!」



 ユミルが剣で魔道具(ばくだん)に切りかかる。

 当然ながらそんな強い衝撃を与えたら……。



 ドカァァァァァァン!!



 わかりきったように大爆発が起こる。

 ただ、彼らを守るように薄い壁のようなものが現れる。



「こいつを連れてきてよかったな。それにしても問答無用で爆弾を投げるか、普通」

「いいじゃないか。どうせ一発限りの切り札だったんだろうな。もうあいつらに攻撃の手段はないわけだ」



 勝手なことを言っているが、爆弾で良いのなら正直いくらでも使える。

 それこそリュリュの倉庫へ行けば山のように積みあがっているのだ。

 ただに躓いて爆発させているので、貯めたままにならないのがすごいところである。


 ただ、どうして爆発をまともに受けて平気なのかは問い詰めたいところでもあった。


 そんなことを考えているとちょうど少し離れたところで爆発が起きていた。



 ドカァァァァァァン!!



 その音と共に小さな少女が飛んでくる。



「どいてどいて……。危ないよ、そこ!!」



 空からリュリュの声が聞こえてくるが、それと一緒に大量の魔道具も降ってくる。

 もちろんすべて爆発する特別仕様である。



「おいっ、守れ!」

「んっ……」



 カインは少女に命令する。

 一度頷いた少女は再び薄い壁の防御壁を作り出すが多勢に無勢。

 大量に降ってくる魔道具(ばくだん)を前になすすべなく、そのまま防御壁は破られ、直撃を受けてしまうのだった。



「ま、まさか、俺たちが来るとわかっていて罠を張っているとは……」



 一言言うとそのまま地に伏していた。

 その様子を見て、なんだか申し訳ないことをした気持ちになるのと同時に、危険な行動をしたリュリュに対して厳重注意とおやつ一週間抜きを言い渡すのだった。


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