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嫌われ王子、国を捨て亡国の王女を助ける  作者: 空野進


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火避地

 ガンツとグリムはお互いに睨み合っていた。



「俺が左から回る。お前は右に回れ。これならどちらが役に立つかわかるだろ?」

「くくっ、良いだろう。俺様の力を見せてやろう」

「ま、待ってよ。それだと私の出番が……」



 たくさんの魔道具(ばくだん)を持って、必死にあとから追いついてきたリュリュ。

 当然ながら彼女としても自身が作り上げた|魔道具だと思っている爆弾さいこうけっさくを試してみたい気持ちがあったのだ。



「三人か……。仕方ない、お前が力尽きたらそのタイミングで変わると良い」

「待て、俺は別に……」

「それじゃあ私から行くね。えいっ!!」



 どうやって回るかを決めていたはずが、なにを考えたのかリュリュが速攻で魔道具(ばくだん)を放り投げる。

 その瞬間に異様な魔力の高まりを感じ、ガンツとグリムは互いに顔を真っ青にして、リュリュを抱え、一目散に逃げだしていた。




 ドゴォォォォォォォォン!!



 木を倒すどころか、かなり深い大穴が空いてしまう。


 それこそ魔王が襲ってきた、とでもいいわけができそうなほどに深い穴である。



「いやいや、さすがにやりすぎでしょ、それは」

「えっと、一応投げたのは土玉だよ?」

「土の『つ』の文字も出てきてないだろ!? せめて土を名乗るならそれを出してから言ってくれ」

「で、でも、土を吹き飛ばしたでしょ?」



 確かによく見ると土はかなり吹き飛んで、今も雨のように降り注いでいるが、他のものへの被害が……。



「いや、被害がでかすぎて土だけ飛ばしたかわからねーよ!?」

「なら他のも使うよ。見ててね」

「いや、待て。これ以上は……」



 ドゴォォォォォォォォン!!

 ドゴォォォォォォォォン!!



 止める間もなくリュリュはいくつかの属性玉(ばくだん)を取り出すと無邪気にそれを放り投げる。


 その様子は子供の遊びにしか見えない。

 とんでもない威力を持っているだけで……。



「お、俺たちを殺す気か!!」

「お、俺様は死なないけどな」

「なら俺もこの程度、余裕で耐えられる」

「ふん、俺様なら無傷だぞ?」

「何を! なら俺も無傷だ!!」



 不毛な言い争いをしているが、二人とも至る所に擦り傷を作っているので、どう考えても無傷でいられるはずはないのだが、リュリュは素直に二人の言葉を信用していた。



「それなら試してみる?」

「えっ!?」

「ま、待てっ!?」

「えいっ!!」



 ドゴォォォォォォォォン!!

 ドゴォォォォォォォォン!!



 再びリュリュが属性玉を放り投げる。

 その瞬間にガンツたちはまた走って逃げるのだった。




 ◇◇◇◇◇◇




「はぁ……、はぁ……。し、死ぬかと思った……」



 すっかり息を切らせたガンツは地面に大の字になって呼吸を整えていた。



「ま、まだまだだな。俺様はよ、余裕だぞ……」



 グリムは腕を組み立ってはいるもののその足は小鹿のように震えている。



「だからあれだけ試していいか聞いたのに」



 リュリュは手に持っている属性玉(ばくだん)を弄びながら言う。



「ま、まぁ、結構木をなぎ倒すことができたもんな」



 今まで来た場所を見る。


 木々はなぎ倒されており、ところどころ大穴が開いている。

 それでもかなりムラがあるようで、穴の深さに差があった。



「うーん、なんで爆発しちゃうんだろうね?」

「爆弾を作ってるからだろ!?」

「そ、そんなわけないでしょ!? ちゃんと属性の効果も出てるよ。ほんのわずかだけど……」



 どこにそんな気配があるのか教えてほしいほどである。



「火玉だったら、ちゃんと火に有効だったよ! ……火を消す方にだけど」



 確かに燃え盛る炎ごと吹き飛ばす爆発が起こっていた。

 もっとも逃げ惑うことに必死だったガンツたちはそれほどじっくり爆発の効果を見れたわけではないが。



「本当か?」

「それならもう一度試してみるよ」

「ま、待て。今度は俺が投げてみるぞ」



 さすがにまた逃走劇が始まるときつい。

 ガンツはリュリュから火玉(ばくだん)を受け取るとなるべく火が燃え盛っているところに目掛けて放り投げる。



 ドゴォォォォォォォォン!!



 耳をつんざくような爆発音が当たり前に聞こえてくるが、リュリュが言ったとおりにそれほど大きな穴が開くわけではなく、代わりに炎を吹き飛ばしていた。



「なるほどな。これは使い道があるかもしれんな」

「でしょ。私の魔道具は便利なんだからね」



 ほめられて嬉しそうな表情を見せるリュリュ。



「まぁ、吹き飛ばしちまうし人前では使えないけどな」



 今は山火事から人を助けるためにこれ以上、火が燃え広がらないように火避地を作っているのだ。

 さすがに炎を吹き飛ばせるだけで周囲を吹き飛ばす爆弾を使うわけにはいかなかった。



「とりあえずそろそろ半分だな。残りもやりきるぞ!!」



 ガンツが立ち上がるとその瞬間に彼のそばを一本の矢が通り過ぎる。



「誰だ!!」



 矢が飛んできた方を睨みつけるとそこには猫人族の獣人たちがいた。



「お前たちが火を放ったのかにゃ!?」

「許さないのにゃ!!」



 獣人たちはそれぞれ、怒りをあらわにしている。



「ちょ、ちょっと待って。それは俺たちじゃない……」

「問答無用にゃ!!」



 そう言って突っ込んでくる猫人族。

 ただ、次の瞬間――。



「どかぁぁぁぁん!!」



 というリュリュの可愛らしい声と同時に風玉(ばくだん)が爆発し、猫人族が空中に飛ばされてそのまま落ちてくるのだった。



「お、おい、いきなり攻撃したら……」

「大丈夫だよ。これはテオ君が強化した風玉じゃないからね」



 確かに大穴が開くような結果にはならずに爆風で猫人族が飛ぶ程度だったが、あまりにも近くで爆発音を聞いたために猫人族たちは全員目をまわしていたのだった。




 ◇◇◇◇◇◇




 ミューの両親を救い出した俺たちはとりあえず火避地を超えた先まで戻ってくるとすぐさま二人の治療に取り掛かっていた。



「パパとママ、大丈夫だよね?」



 ミューが不安げに聞いてくる。


 状態を見る限り、ミューの症状を悪くした感じである。

 そもそも瀕死状態がかなり長いこと続いてしまったので、治せる確率は下がっていてもおかしくない。


 半分の確率で復活とかそういう状態になってしまっているだろう。


 実際には状態によって、どのくらいの確率で蘇生が効くといった感じに段階を踏むのだろうけど、正直そこまで詳しくはない。


 それにそれぞれ別の状態異常も引き起こされている。


 父親の方は『火傷』と『煙中毒』。

 直接火の魔法をくらったということなのでそこはおかしくはなかった。

 いたって普通の状態異常であるために、問題になるのは瀕死の方だろう。


 すでに予断を許さない状況のように思える。


 母親の方は『裂傷』と『貧血』。

 こちらは自然治癒を待つしかない状態異常なので、治し終えた後は回復魔法を掛けながら様子見するくらいしかできないだろう。



 ただ問題は……、すでに俺がミューに対して蘇生魔法を使っていることだろうか。

 俺の魔力値で考えるなら一日に使える蘇生魔法は三回が限度である。


 しかも、先ほど魔道具に付与をしている。

 かなり魔力を鍛えているとしてももう今はほとんど空の状態だった。


 でも、さすがに魔力切れの対策も考えてある。


 そう、魔力回復ポーションである


 もちろんかなり高価な品でゲームだと購入できないアイテムである。

 現実だと実は金さえ積めば買うことは可能だったが、さすがに嫌われ王子たる俺には売ってくれない。


 だからこそ虎の子の一本であった。


 ……いや、合計で三本あるけどな。


 瓶に入れられたその一本の蓋を取り、腰に手を当てて一気に飲み干す。



「うぐっ……」



 魔力回復ポーションの味はお世辞にもいいとは言えなかった。

 むしろ悪い。

 最悪と言っても過言ではない。

 良薬は口に苦しというけど、苦ければ良いというものではない。


 飲んだ瞬間に舌を襲うねっとりとした液体。

 強烈な苦みが襲ってきたかと思うとすぐに渋みへと変わり、思わず涙目になる。


 更に口の奥へ運べたかと思うと今度は鼻をつんざく臭みである。


 最悪の後味もしっかり残り、ようやく飲み込むことができると腹の底から生暖かい熱が体全体にいきわたるのだ。


 ただし、その急激な体温の変化に抗おうとしてるのか、体の節々が痛み始める。

 そんな高熱の症状も乗り越え、ようやく魔力が回復してくれるのだ。


 誰も魔力回復ポーションを飲みながら魔法の連発……なんて真似をしないわけである。

 そんなことができるのはゲームだからだということだ。


 とにかくそんな地獄のような苦しみを味わった俺は何とか魔力を回復することができていた。

 ただ、一瞬で一定数字まで回復する、というわけではなく、じわじわと体を巡って、ゆっくり回復していくといった感じである。


 その待ち時間はどうしてもそわそわとしてしまう。

 時間の勝負である以上、それは仕方ないことかもしれない。



「よし、治すぞ」



 魔力がしっかり回復したのを確認すると俺はすぐさま二人に向けて蘇生魔法を使っていた。

 すると、青ざめた彼らの表情が見る見るうちに血色を取り戻していくのだった。



「これで最低限、命の危機は去っただろうな。あとは……」



 もう一本の魔力回復ポーションとにらめっこする。



 命の危機がないのなら無理してこれを飲まずに自然回復を待ってもいいのではないだろうか?



 でも、大森林の火事であるために助けないといけない人は多数いる。

 のんきに時間をかけている余裕はないために飲まないといけないことはわかる。



 でも、味がなぁ……。



 仕方なく覚悟を決めると鼻を摘まんで臭いが入ってこないようにしたうえで、もう一本、魔力回復ポーションをキメるのだった。

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