からっぽなうつわに 作者: 薄雪草 夏は終わり、秋の半ば 最後の歌が終わるように 残響は宵闇にかき消されて 青の静寂に沈んでいった 秋雨が降る晩の、空は灰色 鈴虫、松虫、蟋蟀の声 秋野は今、盛り 月のない闇夜の道を行く 忘れられた金物のうつわが一つ しとしと雨を受けていた 秋の雨は冷たくて からっぽなうつわが 寂しそうで 萩の花、咲いたら 少しは慰めになりましょう 晴れた秋野に 雨粒は輝くでしょう __________________________________