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4 野良犬・野良猫・店を畳む

2004年に書いた小説を一部リライトし、20年ぶりに引っ張り出して、ホコリを払い、掲載し直してみました。内田百閒文体を試したくて書いてみた短編習作です。

 博物館があった所に、たくさんの野良犬と野良猫が住み着くようになった。私は散歩が好きなのだけれども、博物館が吹き飛ばされてから益々散歩が好きになった。


 私は野良犬と野良猫が地面に鼻をこすりつけるようにして何かを探しているのを見るのが好きである。彼らはめいめい勝手に鳴いたり威かくしあったりして、とにかく騒がしい。しかしふとした瞬間にその音が止むときがあって、その静けさがまた堪らない。


 最近では保健所が乗り出してきて野良犬と野良猫を狩るものだから、ずいぶんつまらなくなってしまった。保健所の連中はトラックで乗りつけてきて、機関銃のようなものを乱射するのである。私は散歩の最中にそのような光景を目にしたが、不愉快なものであった。地面に埋まっているらしい骨や獲物を鼻で掘り返していた野良犬が機関銃でやられるときは、弾が当たってしばらくしてから痛みがまわると見えて、まるで命乞いをするような甲高い声を出して、地面に這いつくばってけいれんを始めるのだ。まったく哀れなものである。


 保健所の連中が言うには、彼らけものは不潔だということなのだが、それならまず先に人間がけものとして撃たれなくてはいけないところだ。


 博物館の跡地に向かう途中に、私がいつも寄ることにしている屋台があるのだが、屋台の親父が、もうよそへ移ろうかと思っていると言う。親父が言うには、博物館がなくなってから客足がふつりと途絶えてしまった。それだけでなく、野良犬・野良猫が集まりだしてから益々人が来なくなったと言うのだ。あいつらは不潔だからな、食い物屋のまわりにあんな不潔なものがいてはな、と親父は言うのである。


 だから店を畳もうと思うんだ。


 私はそれについては何も言わず、よそへ移るにしても、屋台は畳むのが簡単でいいね、と言っただけだった。

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