普通ですけど…
よろしくお願いします
どこかの国では完璧すぎて仮面をかぶらされた令嬢がいるとか。完璧の何が不満なのでしょう?私は努力に努力を重ねてもこんなに普通だというのに!!
名前もジェシー。結構多い名前だと思う。
ある時、お客様がいらして食事をお父様となさっていたわ。その時にお父様が私を紹介しようと呼んだのかしら?その瞬間、招待客に「この料理はもう下げていいよ」と言われた。
はぁ?使用人と間違えた?服が使用人と違うんですけど!ちゃんとドレスです!!
このようなこともしばしばありました。ですから、完璧で何が不満だったのでしょう?実際、彼女は王家の侍女となり、近衛騎士だったかしら?の方と結婚をしたみたいですし、何が不満だったのでしょう?完璧万歳だと思います。
私は来る学園の試験のために勉強をしています。完璧には程遠く、私は普通。順位も普通。クラスも普通クラス(特進クラスとかある)。今度こそ!という気持ちで勉強をしている次第です。
…結果はどうしてでしょう?なぜでしょう?順位も普通でした。
普通に生活をしています。
このままだと、普通の人生を歩むでしょうね。
私は子爵令嬢ですから、どこかの下位貴族との婚姻でしょうか?それとも騎士(見目も、将来性も普通)?普通の商家でしょうか?そんな人生でしょうね。ああ、先が見える。
ある日、私は流行りのカフェに行こうとしていました。(貴族令嬢として普通の行動)
当たり屋でしょうか?ぶつかったのです。この時点で普通ではないんですが…。
「いてててて、肩の骨が折れたかもしれねぇ。お嬢ちゃん、慰謝料払ってくれないと困るなぁ?」
うーん、この人の身長を考えると私の身長では、肩に当たらないのですが…。腰なら理解可能ですが…。
「所謂当たり屋だな。質が悪い。現行犯で逮捕する」
そう言って、人相の悪い人は人相の悪い保護官に逮捕された。
「お嬢ちゃん大丈夫か?」
「はい。えーっと、物は取られていませんし。大丈夫です。ありがとうございました」
「悪いんだけどなぁ、‘あいつに当たり屋行為をされました’ってお嬢ちゃんの話が必要だから、この後舎まで一緒に来てくれるか?」
なんてことでしょう?流行りのカフェに行くはずが当たり屋に当たられ、保護官に保護され、保護舎に行く事になるとは!?普通ではありません。
「是非、よろこんで!」
「おかしな嬢ちゃんだな?将来保護官にでもなりたいのか?女性保護官は少ないからな」
うーん、見た目だとこの人が逮捕されそうだけどなぁ。保護官なのか。人は見た目で判断できないなぁ。
保護舎…。一生縁がないと思ってたんだけどなぁ。来てしまったものは仕方がない。
「あ、この人。肩が痛いって。当たり屋行為をしました。肩って私の身長では無理がありますよね(笑)」
こんなんでいいのか?ま、そのために来たわけだし。まぁいいや。
それからというもの、私の人生は一変した。
まず家に帰ってはお父様に、「お前、保護舎に行ったのか?なんかやらかしたのか?」と責められた。言うには、貴族の噂で私が何かしでかしたことになっているらしい。
お父様には事の次第を説明した。
「なるほどなぁ。ま、そういう事もある。うちは子爵家だもんなぁ。当たり屋に当たったりもするよな。高位貴族なら護衛騎士がガードしてるだろうからそんな輩が当たることもないだろうが」
貴族の噂って怖いなぁ。と、ぼーっと私はしていた。
翌日の学校。
私は売春していると噂されているようだった。私のどこをどうやって売るんだ?まぁ、臓器は売れますけど。
「あー、あの子。売春してるって噂」
「売る人いれば買う人いるのね」
等、結構なことを言われた。違うし。しかしながら、いちいち言い訳がましく言うのも面倒だなぁ。
そんな時、校門の所に人相の悪い保護官がいた。
「きっとジェシーを待ってるのよ、あれでも保護官だもの」
等また色々と言われた。
教官にも会いに行くように言われたので、行った。そういえば、あの人の名前はなんだろう?
「よぉ、元気か?」
「まぁ、元気なんですけど、噂がすごいですね。私、売春してることになってますよ?」
「はぁ?お前のどこをどう売るんだ?」
自分のことだけど、この人も思うのか。私貴族だし、一応不敬罪かなぁ?
「貴族は噂好きですからね」
「そんじゃ、俺と付き合えよ。愛しの俺に会いに保護舎に来た事にすりゃあいいじゃん」
「簡単に言いますね。その場合、私はキズモノということになり、この先婚約者は現れません」
「はぁ、貴族って難しいんだな」
でも、噂をどうにかしないとだし、とりあえずいっかぁ。変なオヤジに嫁ぐことになりませんように!
「あ、ところで貴方の名前は?」
「あれ?言ってなかったか?ジョセフだ」
「了解。では、私の恋人ジョセフまたね」
そう言って、校舎に戻った。
私は質問攻めにあった。
「懲役は決まったの?学生だし、減刑されるの?」等。
「あのねぇ、私はあの人に会いに保護舎に行っただけよ?何を想像してるの?私の彼なんだけど?」
「「ええ――!!」」
そう言ってもなぁ。家でも言わないとなぁ。
家に帰ってお父様に言った。
「「保護舎には恋人に会いに行った」ってシナリオにした。保護官からの提案。だから、今日からしばらく保護官のジョセフが私の恋人よ。よろしくね」
「私はまだ交際を認めないぞ!!」
うーん、お父様はそういうタイプかぁ。
「フリよ。フリ。それで、私はキズモノかしら?今後変態オヤジに嫁がせるのだけはやめてね!それなら一生独身で過ごすー!!」
お父様には釘を刺しておいた。変態オヤジは嫌だ。
その頃のジョセフ
あの嬢ちゃん面白いなぁ。
「殿下、何か面白い事があったようでなによりです。お忍びで保護官になるのは構いませんが、これらの山の様にどころか、山そのものの書類に目を通してサインを。殿下は久し振りに会っても人相が悪いですね」
「デニーは口が悪いな」
等と軽口を叩いていた。
いつ本当のことを話そうか?楽しみだなぁ♪
翌日はジョセフが学校まで送ってくれた。
「ほら、恋人だもん。途中で何があるかわからないし?送迎」
…ガラの悪い兄ちゃん(保護官)が子爵令嬢を連行しているように見えるけど。
「そんじゃあ、学校が終わるころにまた来るね、ハニー♡」
保護官というのは暇なのか?ねぇ暇なの?
その日の放課後、
「ジェシー?俺、ジェシーのお父さんに挨拶したいなぁ。一応、仮にでも娘さんと交際してるわけだし?」
「ああ、それね。お父さま曰く、「交際は認めない!」だそうよ?頑固親父チック」
「そっかぁ、それはそれで面白そう。行きたいな。ダメ?」
ジョセフのおねだりは脅迫のようです。慣れません。怖いものは怖いのです。
「了解しました。では、明日の放課後にでも行きましょう。私の方からも明日来るよ~と伝えておくね」
「わかった」
明日の放課後はどうなるんだろう?
明日の放課後
「さあハニー、迎えに来たよ。ついでにお父様に挨拶に行こう!」
ジョセフ、保護官の格好じゃないから、ちょっとドキッとしました。本人には内緒にしておきます。
「初めまして。保護官をしているジョセフと申します。偶然お嬢様と出会い、交際するに至りました。是非お父様にも認めていただきたく」
「で…殿下…」
「え?見たところお宅の電化製品はまだまだ現役で使えそうですよ?」
何やらジョセフがブロックサインみたいなのを出していたけど、わからないからまぁいいや。この後の展開はお父さまが「交際は認めない!」っていうかな?
「うちの娘でよろしければ、どうぞ交際をしてください!」
へ?ジョセフはニヤッとするし、私は展開についていけない。仲間外れ…。
そういうことでお父さまの許可も取れた私とジョセフは正式に交際をすることとなった。未だにあの人相には慣れない。
その日の学校からちょっとした変化があった。
高位貴族の方からイヤガラセを受けるようになった。なぜ?
「なんで、あなたみたいな子が?」
等と仰っていましたが、言動全てがわかりません。
あ、下位貴族の方は「あんなに普通でも恋人は特殊なのね?人相の悪い保護官(笑)」
等と言っている。わかる~。ジョセフは人相悪いから。
高位貴族の方の嫌がらせには困ったなぁ。うちの爵位ではどうにもできないし、まぁ、やられっぱなし。私はサンドバックなのでしょうか?何か嫌な事でもあったのでしょうか?
ターゲットが私という事は…私は彼女たちを不愉快にするような事をしたのでしょうか?
「おーい、ジェシー。迎えに来たぞー!」
あ、ジョセフですね。
「ジョセフ様!!何故あのような娘と行動をともにするのですか?」
高位貴族の彼女が敬語?
「面白いから」
「ふふっ、そうですよね。婚姻前の火遊び。若しくは妾になさるとか?」
「いーや、できれば正妻にしたくてさぁ。デニーに調整頼んでるんだけど、なかなかなぁ」
話が読めない。何の話をしてるの?
私は下校したいんだけど?
「ジェシー、俺と付き合ってくれませんか?」
「えーっと、帰宅しましょう?」
正直、私は早く帰りたかった。殿下は肩透かしだったかもしれない。
家に着いた。
「ジェシー。こちらは我が国の皇太子であらせられるジョセフ殿下だ」
人相の悪い保護官じゃないのか!?人相の悪い皇太子!?国は大丈夫?
「優秀な方だから安心をしなさい」
お父様は読心でも出来るのでしょうか?
「心の声がダダ漏れなんだよ、お前は…」
お父様に呆れられた。ショック…。あ、ジョセフが皇太子!?忘れてた。
ああ、それで高位貴族の令嬢がイヤガラセしてきたりしたんだ。納得!
で?
「お前…畏れ多くも皇太子と交際をしてるんだぞ?」
そういえば、そういう設定だった。忘れてた。いやぁ、しつこく送迎されるとは思ったけど。
「それでな、殿下が畏れ多くもお前を妻に迎えたいと仰ってるんだよ」
妻…つま…TUMA…都万…つまらないですよねー。
「コラ、思考放棄するな!この俺が!嫁に迎えようとしてるんだ!」
はい。で?
「子爵家としては有難いお話ではあるのですが、この娘の家柄に問題があるのでは?」
「そのへんはうちの秘書官にうまくやってもらう予定だ」
つまり未定だということか…。
「では、決定後に改めてお越しください。それと、高位貴族の令嬢にイヤガラセ受けるんですよ?なんとかそれも止めて下さい」
「了解した」
話がついたところで、私はもう就寝した。なんだか今日は疲れた。
明日からは高位貴族の令嬢にイヤガラセされないといいなぁ。スヤスヤ。
甘かった…。高位貴族からのイヤガラセがエスカレートしとる!
ジョセフ!止めてって言ったじゃーん!!
朝、登校したら上履きにはたっぷりと水が張っていた。…どこからこの水持ってきたんだろう?
体操着は切り裂かれ、机は落書きされながら、解体・放置されていた。
手が込んでいる…。と私は思う。明日からはどうしようかなぁ?
いやぁ、机の解体が見事なあたり、首謀者は昨日の高位貴族の令嬢だろうか?
今日からはジョセフはいないからなぁ。
一日トイレスリッパで過ごしたわけだけど(上履きが使えないから)、帰ろうと思ったら行きに履いていた靴にも水が張っていた…。
どうして私はサンダルとか履いてこなかったんだろう?あ、寒いからか。
トイレスリッパで水を捨てた靴を持って帰り道を歩いていた。
「あーら、噂の人ではなくて?」
人違いです。と帰りたかった。でも相手は高位貴族。
「あらまぁ、靴も履けないの?ふふふ、トイレスリッパなんてあなたの噂にピッタリね。では」
そう言って、去っていった。馬車…乗せてくれてもいいじゃん。性格悪いの?
家紋覚えておこう。今に見てろよ!絶対仕返しするんだから!!
「ジョセフ、私は結婚する!!」
「お、おう。なんかあったのか?」
「よくぞ聞いてくれた。イヤガラセ、止めてくれたって言ったのに、なんかエスカレートしてたっぽいよ?まず、登校しました。上履きに水が張ってありました。ハイ、1件。体操着が切り裂かれました。ハイ2件。机が落書きされつつ、解体・放置されていました。ハイ、3件。帰ろうと思ったらまた靴に水が張っていました。ハイ4件。おかげで私はこの寒空のしたトイレスリッパで濡れた靴を抱えて帰宅だよ?その間に馬車に優雅に乗ったお嬢様になんか言われるし」
「ハイ、ドードー。落ち着け。そっか校舎内は俺が見てないからやりたい放題だな」
「それを何とかしてほしかったんだけどね!」
「ハイ、落ち着いてください!うーん、しばらく休学したら?そんな頭悪いわけじゃないでしょ?」
普通です。
「そうそう、今後国母になるっていうのに、普通の脳みその持ち主でいいの?」
「いいんじゃない?面白いじゃん!現に、今日の帰りに見た馬車の家紋は覚えてるんだろ?」
「それはもうバッチリ。いつかどうにかしてやろうと思って」
「そういうのが面白いんだよ~。ただのインテリは面白くないからね」
褒められたのか?
そうして、私はながなが休学し、卒業後ジョセフと結婚した。やっぱり人相には慣れない。
でもでも、きちんと国母の役割というやつは果たしました!
長男・長女・次男 です。今のところ。女の子が一人だと我儘になるんじゃないかとかなんとか言って、子供を作ろうと迫ってくるジョセフは怖いです。いや、我儘王女は嫌ですけど、王女になるか王子になるかはわからないし。
あ、そうだ。覚えてた家紋!みっちりと仕返しをしました。デニーに貴族名鑑を見せてもらい、どの家の家紋なのかを割り出しました。もう、デニーがボロ雑巾のように使ってます。私が使いなさいと命じました。そして、爵位は侯爵だったみたいだけど、伯爵に格下げ。理由「婚前の私に無礼を働いたため」。フンっ。トイレスリッパで寒空の下で濡れた靴を持って歩いていたんだ。馬車に載せろって!
あら、いけないわ。また怒られちゃう。これでも、王妃教育を受けました。結果は普通。教官も普通がいいですね。と褒めてくれた。普通で良かった。
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