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昨日のうちに、出張の準備を終えたルフェルニアは、王宮の外にある馬車の停留所に座って弟アルウィンを待っていた。


アルウィンはこの前の春に王立学園を卒業してから、子爵領に戻り、子爵になるための勉強を進めている。

今日は、ルフェルニアが外国出張へ行く前に、見送りもかねて王都で一緒にランチをとることになっていたのだ。


「お姉様!」


目の前にこぢんまりとした馬車が停まると、中からアルウィンが嬉しそうに飛び出てきた。


「待ち合わせの時間まであと30分もあるじゃないか。いつも危ないから、あまり前に外へ出ないでねと言っているのに。」


王宮内に馬車を通すには色々と手続が必要なので、アルウィンとルフェルニアはいつもこの停留所で待ち合わせをしていた。王宮のすぐ傍に付属している停留所のため、見張りの騎士が常駐していており他の停留所よりよほど安全だが、王宮の外であることに変わりはない。


「だって、せっかく来てくれるアルを1分だって待たせたくないもの。」

「僕だって、待たせたくないのに...。早く来て正解だったよ。」


ルフェルニアにとってアルウィンはいくつになっても可愛い弟だ。

ルフェルニアよりも少し高いが、男性の中では比較的小柄な体躯と、サラサラの黒い髪。

ちょっと目つきの悪いダークグリーンの瞳が甘いものを食べたときに僅かに輝くのがとってもキュートで、ルフェルニアは王都でおいしいデザートがつくランチセットをいくつも開拓していた。


甘いもの好きを隠しているのか、アルウィンは絶対単品では頼もうとしないのだ。


「少し早いけれど、今日のレストランに行きましょうか?

今日のところわね、卵を使ったお料理がたくさんあるらしいわ。

ランチにはデザートもついていて、特に卵をたっぷり使ったカスタードのデザートがおすすめみたい。」


「お店を探してくれてありがとう。お姉様はあいかわらず、甘いものが好きだね。」


「ええ。テーセウス帝国のお世話になる方へのお土産はお気に入りのパティスリー・アンジェロで買ったのだけれど、寂しくならないように、自分用のお茶菓子も買っちゃったわ。」


(ふふ、アルも甘いものが好きなくせに、私に付き合うような口ぶりをして、可愛いんだから!)


ルフェルニアは久しぶりに見るアルウィンの可愛い姿に顔を緩ませながら馬車へと乗り込んだ。

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