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あのときのローズマリーの言葉は声にはならなかったが、ルフェルニアには届いていた。

ユリウスとルフェルニアが馬車に乗り込むと、ユリウスはいつものとおりルフェルニアにぴったりとくっついた。


「ルフェ、本当にごめんね。折角のデビュタントなのに…。」

「ううん。」


ルフェルニアが短く答えると、ユリウスは心配そうな顔でルフェルニアの顔を覗き込んだ。


「さっきから、どうしたの?あの人達に言われたことなんて、気にしないで。」


ユリウスがルフェルニアに身を寄せてルフェルニアの頭を撫でる。


(ローズマリー様の仰るとおり、私は「ずるい」んだ。今もユリウスの優しさに甘えている。)


ローズマリーはきっと、本気でユリウスを好きだったに違いない。それなのに、小さいころから一緒に居るだけのルフェルニアが大事にされていれば、面白くないのも当然だ。

ローズマリーは王立学園でも優秀だったと聞いている。きっとユリウスに見合うよう、頑張ってきたのだろう。

ローズマリーの発したあの3文字の言葉は、ルフェルニアの心に罪悪感を植え付けた。

ルフェルニアもユリウスのことが好きだからこそ、ローズマリーの気持ちが痛いほどよくわかった。


「皆様が仰ったことは、そのとおりだわ。私は、たった過去の1度きりのことで、甘えすぎていました。」

「それは絶対に違う。僕はルフェがルフェだから大事だし、甘やかしたいんだ。」


ユリウスは努めて優しくルフェルニアに言い聞かせるように言ったが、ルフェルニアは首を横に振った。


「ルフェ、こっちを向いて。」


ユリウスはルフェルニアが顔を上げるように、両頬に手を添える。

ユリウスの綺麗な瞳が真摯にルフェルニアを貫いた。


「ルフェ、どうか僕の失態を許してほしい。あの悪意を真に受けないで。君が学園でもずっと頑張っていることを、僕も、先生も知っているよ。」


ユリウスの言葉は、マイナス思考に陥っていたルフェルニアを優しく包み込んだ。

ユリウスはいつだってルフェルニアを支えてくれる。

いけないとわかりつつも、目の前の優しさを振り切って関係を断つことなど、ルフェルニアにはできなかった。


(きっといつかはユリウスには婚約者ができて、私はどこかの誰かの婚約者になる。

そうしたら否が応でも離れ離れだもの。それまでは傍に居させてほしい…。

ずるくてごめんなさい。)


ルフェルニアは心の中でローズマリーや他の令嬢に謝ると、ユリウスに抱き着いた。

ユリウスは震えるルフェルニアの背中をあやすようにゆっくりと撫でた。

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