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ルフェルニアが王立学園に入学してからしばらくして、学園での生活も慣れてきたころ、もう1人の友人ができた。

サムエル・アルノルト、ベンジャミンの弟で男爵家の三男だ。


サムエルはベンジャミンからルフェルニアの話しを聞いたようで、サムエルがルフェルニアに話しかけてきたのがきっかけだ。

サムエルは貴族らしくない粗野なところがあり、思ったことも素直にすぐに口にするので、貴族の令息たちの空気に馴染めなかったのか、ミシャとルフェルニアと一緒に居ることが増えた。


サムエルはちゃんとテストを通過して入学したが、ぎりぎりの合格だったらしく、テスト前はルフェルニアと2人でミシャに助けてもらいながらひーひー言っている。


「ルフェ、お前デビュタントってまだだったよな?今度の王宮の夜会って出るのか?」


サムエルはミシャがいないときを見計らってルフェルニアに声をかけた。

王宮では毎年の社交シーズンの最後に1回、爵位を持つすべての貴族に招待を出す大掛かりな夜会が催される。

両親からは度々夜会の招待状の転送がありデビュタントの時期を相談したい旨の手紙が届いていた。ただ、以前ユリウスに会ったとき、ユリウスから無理に社交をする必要はないと言われたこともあってルフェルニアは何となく気が進んでいなかったのだ。


しかし、ルフェルニアも貴族の端くれ、そろそろ婚約者も見つけなければならない。両親はルフェルニアの学業を気にしてか、強くはせっついてはこないので、ルフェルニアはぼんやりしていたが、同い年のサムエルからデビュタントの話しを振られ、急に現実味を帯びたような気がした。


「う~ん…招待状は転送されてきたけれど、考えていなかったわ。そろそろちゃんと考えた方が良いわよね…。」

「その、もし出るならさ、俺にエスコートさせてもらえないかな…?」


ルフェルニアは突然の申し出に驚く。サムエルは顔を赤くして、少し眉間にしわを寄せている、ルフェルニアの初めて見る表情だった。


サムエルは確かに粗野なところがあるが、女性に人気がないわけではない。

輝く黄金色の髪と瞳、勉学はいまいち(とはいえ、王立学園高等部に入学できたのだから、世間一般から見ればとても優秀だ)だが、剣術が学年でもピカイチで、剣術の授業では、女子生徒の見学者が出るほどだ。


ルフェルニアは”エスコート”と聞いて、一番にユリウスを思い浮かべた。

ユリウスは確かに無理をして社交をする必要はないと言ったが、デビュタントのときはエスコートも含めすべて用意する、とも言っていた。

ルフェルニアはユリウスとの手紙のやり取りを続けていたが、今は必ずユリウスの返事を待ってから、返事を出している。


ミシャとのあの会話以降も、学園内でルフェルニアの知らないユリウスの話しを聞く機会があり、気持ちがもやもやとしてしまったルフェルニアは前にどんな内容で手紙を出していたかわからなくなってしまった。

最近は授業の内容や学園行事の話しなど、当たり障りのないやり取りしかしていない。


(ユリウスはとってもモテるみたいだし、次期公爵様なのだから、当然素敵なパートナーがいるわよね…。きっと私がお願いしたら、約束を守ってエスコートしてくれるだろうけれど、ユリウスのお相手に申し訳ないわ…。)


ルフェルニアはツキン、と感じた胸の痛みに気づかないふりをした。


考えを巡らせてみれば、他に仲の良い令息がいないルフェルニアにとって、サムエルの申し出は大変ありがたいものだ。両親とだけで参加するのもちょっと恥ずかしい。


「ありがとう、そう言ってもらえて嬉しいわ。でも、私が出るとなると、お父様とお母様もいらっしゃるだろうし…まずは家族に相談してからで良いかしら?」


「もちろん!じゃあ、どうするか決まったら教えてくれよな!」


サムエルは嬉しそうに表情を明るくさせる。


「うん、今日中に両親に手紙を出しておくわ。」


その言葉のとおり、ルフェルニアは寮に戻ってすぐに両親へ手紙を書いた。

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