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授賞式当日、ルフェルニアはドレスを身に纏い、髪を結いあげられた姿でミネルウァ邸のエントランスに現れた。
先に待っていたユリウスはルフェルニアを見ると嬉しそうに目を細めた。
「とっても綺麗だね、ルフェ。」
「…アリガトウゴザイマス。」
(いいえ、そういうあなたの方がとっても美しくて目が潰れそうです。)
黒の正装に身を包むユリウスは輝かんばかりの美しさで、ルフェルニアは呼吸が止まりそうになる。
今回は王宮の会場まで、ユリウスがエスコートをしてくれる。ルフェルニアはオットマーが引き受けてくれるとばかり思っていたが、ユリウスの希望らしい。
ルフェルニアはユリウスと並ぶ自分を想像して、「こんなに美しい人と並ぶなんて」と思わずげんなりしてしまったが、ふと自分の衣装とユリウスを見比べて、瞬時に顔を真っ赤にする。
(昨日気づかなかったけど、このドレス、思いっきりユリウスの色だわ!!)
確かに事前に色の好みを聞かれていた。けれどもそれがドレスの色だとは思わないではないか。ルフェルニアは昔からユリウスの髪と瞳が大好きだ。だから、何の気なしに答えただけなのに。
よりにもよって、ユリウスが”黒”の正装を選んでいることもいただけない。
「ルフェが僕の色のドレスを着てくれるから、僕も君の色を纏おうと思って。」
照れたようにはにかむユリウスは、それはもうとっても可愛くて、ルフェルニアの胸をきゅんとさせた。
「私は、そんなつもりじゃ…!」
「知ってるよ、ルフェはただ好きな色を答えただけだもんね。でもルフェは僕の髪と瞳が好きでしょう?」
ルフェルニアは王都に来てから、何だかユリウスの掌で転がされているような気分になる。
「ええ、好きよ!でも、ユリウスだって、私の黒が好きなくせに!」
ルフェルニアが”やられっぱなしは悔しい”と負けじと言い返すが、ユリウスは一瞬目を丸くした後、とっても嬉しそうに笑って「うん」と言うので、ルフェルニアは二の句が告げられない。
(何だかもう、一生ユリウスには勝てない気がしてきたわ…。)
ルフェルニアはユリウスの一挙一動に荒ぶる心を落ち着かせるために、見送りに来てくれていたアルウィンの方を見つめると、アルウィンがにっこりと笑ってくれて心が凪ぐ。
その視線に気づいたユリウスがさりげなく体をルフェルニアとアルウィンの間に滑り込ませると、ルフェルニアに手を差し出した。
出発前からどっと疲れたルフェルニアはユリウスの差し出された手に大人しく捕まり、家族に見守られる中、王宮からの迎えの馬車に乗り込んだ。




