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(何だか随分と距離が近くないかしら…?)


行きの馬車ではルフェルニアとアルウィンが隣に並び、向かいにユリウスが座っていた。

しかし、帰りはルフェルニアの隣にユリウスが座ったのだ。ルフェルニアは混乱のあまりどうしてそうなったのか、全く思い出せなかった。


ミネルウァ公爵家の馬車は、隣に人が並んだとしても、十分スペースがある大きな作りだったはずだ。

それなのに、ルフェルニアの脚にはぴったりとユリウスの脚がくっついている。


(ひぇぇぇぇぇぇ~…。)


未だユリウスに緊張しているルフェルニアは、可能な限り馬車の隅に身を寄せているが、その分ユリウスが詰めてくるため、逃げ場がなくなっていた。


「ユリウス様、お姉さまに近づきすぎです。」


(さすが私のアルウィン、もっと言ってやって!)


緊張のあまり自分で言えなかったルフェルニアはアルウィンのひと言にぱっと顔を輝かせる。


「そんな、気のせいじゃないかな?」

「いいえ、近いです。離れてください。」

「そうかな?でも昔、ルフェは友人ならこのくらいの距離に座るって言っていたよ。」


ルフェルニアはユリウスの発言にぎょっとして思わずユリウスの方に顔を向けるが、思ったよりも顔が近くてすぐに顔をそむけた。


確かに、昔、ルフェルニアはそう言った。

まだユリウスから疎ましがられていたころ、ふたり並んでソファに座ると、ユリウスは決まってルフェルニアからできるだけ離れようとするので、「私たちは友達なんだから!」と今のユリウスよりもべったりくっつくように毎回座っていた。

思い返せば、あのときはユリウスを女の子だと思っていたので、上半身もしなだれかけていたかもしれない。


「いや…あのときは…もっと子供だったと言うか…。」


思わず言い訳をしようとすると、アルウィンから「本当に言ったんだ。」と冷たい目を向けられてしまう。


「子供でも、大人でも、友人は友人だろう?気にしないで。」


(私が気にしているのよ!!!)


ユリウスは何も気にしていないような顔で微笑みかけてくるので、ルフェルニアは心の中で悪態をついた。


(私の可愛いお人形さんみたいなユリウスはどこに行ってしまったの!?)


ルフェルニアは馬車の隅で小さくなりながら、できるだけ早く帰れるよう必死に祈ったのだった。

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