絶望の世界を照らす小さな村
自分の実力は自分で把握している人が多数だろう。
少なくともヒロタカはそうだった…故に…
前の世界より、実力が…身体能力が上がっている…?
ウルガレムを殴り、ブラッディベアーとの一戦を見ればそれは明白だった。
では、何故身体能力が上がったのか…?異世界だからか?
そんな事をヒロタカが考えていると…
「着いたぞヒロタカ、ここが我々の村だ」
木や藁で出来た家が幾つか並び、人々が各々働いている。
「いいところですね」
ヒロタカはそう声を漏らす。
「そう言って貰えて何よりだよ」
ここの人達は今を必死で生きていた。こんな状況でも絶望なんてしてなかった。
彼らは必死に『今』を生きていた。
「俺も頑張らなきゃな、この村のためにも」
「そこまで気負わなくて良い…成すべきことを成してくれ」
「こんな状況で、こんな俺を拾ってくれたんです。俺に出来る事ならなんでもしますよ」
「ふっ、それはありがたいな」
そんな会話をアリステラとしていると…
「あ、お姉ちゃん!帰って来てたんだ。隣にいる人は?」
後ろから声が聞こえた。声の元へ振り返ると、そこにはアリステラと同じ髪色をした、ヒロタカより少し背の低い少女が立っていた。
「お、アリシアか、ちょうど良かった…彼はヒロタカなんかいたから私が連れてきた」
「なんかいたからって…あいも変わらず適当だなぁ…。」
そう言うと、彼女はくるりとこちらを向き…
「アリシア・リースです。よろしくお願いしますね、ヒロタカさん」
「イチg…ヒロタカ・イチガヤだ。よろしく」
「アリシア、ヒロタカの寝床…何処か空いてるか?」
「ちょうど、a-34が空いてたよ。早速案内する?」
「頼んでいいか?」
「ん、もちろん。ヒロタカさん、こっちです」
「分かった。あ…アリステラさん」
「なんだ?」
「ありがとうございました、これからもよろしくお願いします」
「あぁ、こちらこそよろしく」
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アリシアについて行き、部屋に着く。扉を開けるとそこには6つほどのベッドが置いてあった。
「じゃあ、ここのベット使ってくださいね。荷物はそこに置いてください」
「あぁ、ありがとう。」
「それと、怪我したらすぐ私に言ってくださいね?すぐ治しますので」
「治す…?」
「私、治癒魔法使えるんです」
魔法…ヒロタカにとっては正直◯リー◯ッターぐらいでしか聞かない単語だ。
それと同時に、ヒロタカは本当に異世界に来たんだと…改めて思った。
「そういえば、ヒロタカさんはこの村で何するんですか?」
「なんか戦力になるから騎士団に入ってくれってアリステラさんが言ってたぞ?」
「お姉ちゃんがそう言うってことは、かなりお強いんですか?」
「さぁな、どれくらいの実力があるかは理解したがこの世界の平均が分からんからな…」
「ふーん、不思議な人ですねぇ…じゃあ、私はこれで…」
「おう」
そう言って、アリシアは部屋から出ていった。
だが、薄暗いその部屋は1人でいるには大きすぎて、ヒロタカは耐えられず部屋から出るのだった。